Q.10月31日に何が起きるのか?

令和8年10月31日。この日までに「輸出物品販売場における購入記録情報の提供方法等の届出書」を出していない免税店は、同じ日をもって許可の効力を失います(改正令附則2条2項)。臨時販売場を設置しようとする事業者の承認も同じ扱いです(同条6項)。自館の売店で免税販売をしているなら、まずこの1点から確かめてください。

届出書を出して免税販売手続の電子化に対応している販売場なら、手続は要りません。令和8年10月31日に一般型または手続委託型の許可を受けている販売場は、11月1日に新制度の一般型の許可を受けたものとみなされます(改正令附則2条1項)。この経過措置のために、申請書や届出書、添付書類を改めて出す必要はありません。

自館の状態別に見た11月1日

10月31日時点の自館11月1日の扱い期限までにやること
一般型の許可あり・届出書提出済み新制度の一般型の許可を受けたものとみなされる手続は不要。売店の運用とシステムの移行に専念する
手続委託型の許可あり・届出書提出済み新制度の一般型とみなされる。委託関係に変更がなければ現在の承認免税手続事業者への委託を継続できる委託先と、11月以降の手続の役割分担を確認する
許可あり・届出書が未提出10月31日で許可が失効。11月以降に免税販売はできない所轄税務署に相談し、届出書の提出か新様式の許可申請かを決める
これから免税店を始める新様式の許可申請が必要10月1日から受付。10月31日までに許可と識別符号の通知を受けたいなら、事前相談の上すみやかに提出する
臨時販売場の承認あり・届出書が未提出10月31日で承認が失効許可を受けた販売場と同じ手順で所轄税務署に相談する

失効した場合に必要になる手続

許可が失効すると、リファンド方式の開始後に改めて「輸出物品販売場許可申請書」を出し直すことになります。申請先は事業者の納税地の所轄税務署長です。新様式には次の2種類の添付書類が要ります。従来求められていた見取図・会社案内・HP情報・取扱商品リストの提出は不要になりました。

  • 免税店に関する書類 ― 自ら免税販売手続を行うなら免税販売手続マニュアルなど。承認免税手続事業者に委託するなら、その委託に関する契約書の写し
  • 購入記録情報の提供等に関する書類 ― 自ら行うなら端末操作要領など。承認送受信事業者に委託するなら、その委託に関する契約書の写し
注意:審査には一定の期間がかかります。11月1日にリファンド方式の許可を受けたい、つまり10月31日までに許可と識別符号の通知を受けたい場合、国税庁は「事前に所轄税務署に相談の上、令和8年10月1日以降速やかに書類を提出」するよう案内しています。新様式そのものの公表は令和8年9月中を目途とされているため、書類づくりは9月に入ってからになります。

なお、届出書の提出の有無にかかわらず、売店を閉じる場合や免税販売をやめる場合には「輸出物品販売場廃止届出書」の提出が必要です。放置して失効を待つ形にはできません。

Q.売店の流れはどう変わるのか?

11月1日を境に、免税販売の順番が入れ替わります。これまでは購入時にその場で免税価格で売っていました。移行後は税込価格で販売し、出国時の確認を経てから消費税相当額を返金します。売店のレジで完結していた手続が、出国後まで続く一連の流れに変わります。

税関の確認を受ける期限
90
日以内の出国時
購入日の翌日から起算して90日目まで。この期間に税関の確認を受けなければ、自館は免税の適用を受けられず、課税販売のまま確定します。出典: 国税庁Q&A(概要編) 問19

移行後の手順

  1. 購入者本人から旅券等の提示を受け、免税購入対象者であることを確認する
  2. 90日以内の出国時に税関の確認を受けること、確認を受けた物品を遅滞なく輸出しなければ消費税が徴収され罰則の対象になることを説明する
  3. 税込価格で物品を引き渡す
  4. 購入記録情報を遅滞なく国税庁(免税販売管理システム)へ提供する
  5. 税関確認情報を同システムから取得する
  6. 購入記録情報と税関確認情報を保存し、消費税相当額を購入者へ返金する

売店の現場で効いてくる制約

  • 説明は口頭でなくてもよい ― 外国語の説明書類を渡す、または売店内に掲示して二次元コードで読ませる方法が認められています。渡すだけ・貼るだけでは足りず、口頭で一読を促す必要があります。国税庁が英語・中国語・韓国語・日本語と多言語併記のリーフレットを公開しているので、そのまま使えます
  • 手荷物を預けた後では確認を受けられない ― 税関の確認は、空港で手荷物を機内預けした後には受けられません。搭乗手続に間に合うよう、余裕を持って手続する必要がある旨を売店で伝えます
  • 判定は購入記録情報の単位 ― 出国時に、同じ購入記録情報に含まれる物品のうち一つでも所持していなければ、その購入記録情報に含まれるすべての物品について免税を受けられません。会計をどう分けるかが、そのまま返金の可否に効きます
保存期間:購入記録情報と税関確認情報は、譲渡を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、納税地または取引に係る事務所等で保存します。保存がないと、免税購入対象者への販売であっても免税は適用されません。旅券情報の取り扱いは個人情報保護法と宿泊者台帳の考え方とあわせて整理しておくと迷いが減ります。

Q.免税の対象はどこまで広がるのか?

売る側から見ると、対象範囲の見直しは負担が減る方向の改正です。一般物品と消耗品の区分が廃止され、これに伴って消耗品の購入上限額(同一店舗1日あたり50万円)と特殊包装の要件もなくなります。「通常生活の用に供するもの」かどうかの判断も要らなくなりました。

免税対象外になる物品
金・白金の地金等
金及び白金の地金並びに金貨・白金貨、消費税が非課税とされる物品。これ以外は免税対象物品
購入下限額
5,000円(税抜)
同一日・同一販売場・同一購入者の合計で判定。区分がなくなったため合算で見る

宿の側で誤解が起きやすい線引き

免税になるのは物品の譲渡です(消費税法8条1項)。宿泊料金や館内飲食の代金は輸出物品販売場制度の対象になりません。免税店の許可を持っていても、免税で売れるのは売店や併設ショップで扱う物品だけです。フロントで「宿泊代も免税になるのか」と聞かれる場面を想定して、売店とフロントで同じ答えを持っておくと現場が揺れません。

数量にも制限が残ります。出国時に免税対象物品を所持していなければ税関の確認を受けられないため、購入できるのは購入者自身が持ち出せる数量までです。出国前に郵便等で国外へ送る、いわゆる別送は令和7年3月31日で廃止されました。11月1日以降に購入した物品を別送すると、税関確認情報の提供を受けられないため、購入者は返金を受けられません。

直送との違い:売店で運送契約を結び、その場で物品を運送事業者へ引き渡す直送は続けられます。移行後は輸出物品販売場制度ではなく消費税法7条の輸出免税の適用になり、税抜価格での販売が可能です。この場合、免税販売手続と購入記録情報の提供は不要になる代わりに、運送契約書等の保存が必要になります。

Q.返金は自館で行うのか、任せるのか?

移行後の実務で最も判断が要るのがここです。返金手続をどう実施するかについて、消費税法令はルールを定めていません。国税庁は銀行振込、クレジットカード送金、アプリ送金、税関の確認を受けた出国港内での現金といった方法を挙げるにとどめています。自由度が高い代わりに、消費税法の外にある規制を自分で確認しなければなりません。

自ら返金する場合、資金決済に関する法律に基づく資金移動業の登録が必要になることがあります。加えて、10万円以上の現金での為替取引を行うなら犯罪収益移転防止法上の本人確認、経済制裁の対象者への返金でないかを見る外国為替及び外国貿易法に基づく事前確認も要ります。売店の運営体制でこれを抱えるかどうかが、自前と委託の分かれ目になります。

比べる観点自館で返金する承認送受信事業者等に委託する
必要になる準備資金移動業の登録が必要となる場合あり。犯収法の本人確認、外為法の事前確認委託先の選定と契約。委託先は消費税法上の承認事業者である必要はない
購入者との接点返金方法とタイミングを自館で設計できる委託先の提供する返金手段に合わせる
探し方返金に対応予定の承認送受信事業者の一覧が全国免税店協会のサイトに掲載。ただし国による認可や保証を表すものではない
向く規模免税販売の件数が多く、社内に決済まわりの体制がある売店1か所で件数が限られ、体制を新設したくない

事前返金という選択肢と、その代償

税関確認情報を取得する前に返金することもできます。出国前に売店で返金してしまう運用です。ただし購入者が出国時に税関の確認を受けなかったときは免税の適用を受けられず、返金後の販売金額で課税販売をしたことになります。国税庁はこの点を「事業者の責任において行う必要があります」と明記しています。件数の多い売店ほど、確認を待たない運用の損失は積み上がります。

返金しようとして届かなかった場合の扱いも決まっています。税関確認情報を保存していれば免税の適用は受けられます。返金先口座番号の記載誤りなど購入者側の都合でやむを得ず返金できず、当事者間の契約で返金不要となった消費税相当額は、雑益(不課税)として処理します。

Q.会計と申告はどう変わるのか?

販売時は課税売上げとして処理し、税関確認情報を保存した時点で免税売上げへ振り替えます。振替は税関確認情報を取得するたびに行っても、月次などのタイミングでまとめて行っても構いません。件数が読めない段階では、月次一括のほうが売店と経理の負担は軽くなります。

課税期間をまたぐ場合の処理

販売した課税期間と税関確認情報を保存した課税期間がずれることがあります。期末近くの販売はほぼこれに当たります。この場合、販売した期に課税売上げとして処理し、税関確認情報を保存した期に免税売上げとする処理を継続して行っていれば認められます。保存した期では、売上げに係る対価の返還等があったものとして処理するか、その期の課税売上げの合計額から販売時に課税売上げとした金額を控除するか、どちらかの方法によります(消費税法基本通達8-3-4)。対価の返還等として処理した場合でも、返還インボイスの交付は要りません。

インボイスと、システムの改修

  • インボイス ― 免税購入対象者である外国人旅行者等への販売のため、一般にインボイスの交付義務は生じません。他の取引と同様に交付しても差し支えなく、その場合はスタンプ等で「税関確認後は免税となる」旨を表示する運用もできます
  • 購入記録情報のインターフェース ― リファンド方式に対応したver3へ移行します。旅券番号の提供が必須になり、許可書番号の提供は廃止。一般物品と消耗品の区分の廃止、単価100万円以上の物品に係る商品情報詳細の提供の義務化、返品時の取消・訂正方法の洗替方式への統一が加わります
  • 税関確認結果照会インターフェース ― 新たに追加されます。事業者側からのリクエストに基づいてデータを受け取る方式で、「税関確認済」または「免税不可」が返ります
  • 電子証明書と識別符号 ― 自ら購入記録情報の提供等を行うなら、免税販売管理システム専用の電子証明書を機器にインストールしておく必要があります。販売場ごとの識別符号は、許可通知とあわせて所轄税務署長から通知されます
見落としやすい点:購入記録情報に誤りがあると、税関の確認そのものが行えません。購入者は持出しの確認を受けられず、自館は税関確認情報を取得できないため、免税の適用を受けられなくなります。移行前に、旅券情報の読み取りから送信までを一度通しで試しておくのが安全です。パスポートリーダーがなくても手入力で構いませんが、在留資格や上陸年月日は別途の入力作業が生じます。

Q.何をいつまでに済ませるのか?

2026年8月から10月末までの3か月が準備期間です。着手には順番が要ります。届出書の提出状況の確認が最初で、その答えによって9月以降の段取りが変わるためです。ベンダーへの確認と返金方法の決定は並行して進められます。

リファンド方式移行に向けた売店の実務チェックリスト

やること 締切目安 担当
売店が「購入記録情報の提供方法等の届出書」を提出済みかを納税地の所轄税務署に確認 2026年8月中 総務/経理
未提出だった場合の進め方(届出書の提出か新様式の許可申請か)を所轄税務署に相談 2026年9月上旬 総務/経理
POS・免税端末のベンダーに購入記録情報ver3と税関確認結果照会への対応時期・費用を確認 2026年9月中 情シス/売店
返金を自館で行うか委託するかを決定(自館なら資金移動業の登録要否を確認) 2026年9月中 経営/経理
承認送受信事業者・承認免税手続事業者との契約内容を11月以降の役割分担で見直し 2026年9月末 総務/売店
(新規・失効の場合)新様式の許可申請書と添付書類を提出 2026年10月1日以降速やかに 総務
購入者向けの説明資料(外国語)を売店に用意し、掲示位置と口頭での促し方を決める 2026年10月中 売店/フロント
課税売上げから免税売上げへの振替と、期をまたぐ場合の処理を顧問税理士と確認 2026年10月中 経理
売店スタッフの手順研修(税込での受け渡し、90日と機内預け前の案内、返金方法の説明) 2026年10月下旬 売店/総務
相談先:制度の一般的な問い合わせは国税庁の電話相談センター(0570-00-5901)、免税販売管理システムのヘルプデスクは0570-056-620です。許可や届出の個別判断は納税地の所轄税務署が窓口になります。観光庁の消費税免税店サイトには、免税店向けのリーフレットと2026年2月開催の説明会アーカイブ動画が置かれています。

Q.よくある質問

Q1. 自館の売店が届出書を提出済みかどうか、どう確かめればよいですか?

納税地の所轄税務署に問い合わせるのが確実です。免税販売手続の電子化に対応し、購入記録情報を国税庁(免税販売管理システム)に提供していれば、届出書は提出済みです。判断がつかないときは10月1日を待たずに相談してください。令和8年10月31日までに未提出の販売場は、同日でその許可の効力を失います。

Q2. いま持っている免税店の許可は、そのまま新制度に引き継がれますか?

令和8年10月31日に一般型または手続委託型の許可を受けている販売場は、11月1日に新制度の一般型の許可を受けたものとみなされます(改正令附則2条1項)。この経過措置のために申請書や届出書、添付書類を改めて出す必要はありません。手続委託型は委託関係に変更がなければ、現在の承認免税手続事業者への委託を続けられます。

Q3. 宿泊料金や館内レストランの代金も免税の対象になりますか?

対象になりません。輸出物品販売場制度で免税となるのは物品の譲渡です(消費税法8条1項)。売店や併設ショップで売る物品が対象で、宿泊や飲食、入浴といった役務の提供は対象外です。11月の移行後もこの範囲は変わりません。

Q4. 10月に購入して11月に出国する場合は、どちらの手続になりますか?

販売日で決まります。リファンド方式は令和8年11月1日以降に行う免税対象物品の譲渡(販売)から適用されます(改正法附則21条)。10月31日までの販売は現行の手続です。現行制度とリファンド方式を併用できる移行期間は設けられていません。

Q5. 返金の方法に決まりはありますか?

消費税法令に返金手続のルールはありません。国税庁は銀行振込、クレジットカード送金、アプリ送金、税関の確認を受けた出国港内での現金といった方法を挙げています。ただし自ら返金する場合、資金決済法の資金移動業の登録が必要となることがあり、犯罪収益移転防止法の本人確認や外国為替及び外国貿易法に基づく事前確認も必要になります。

Q6. 返金できなかった消費税相当額はどう処理しますか?

税関確認情報を保存していれば免税の適用は受けられます。返金先口座番号の記載誤りなど購入者側の都合でやむを得ず返金できず、当事者間の契約で返金不要となった消費税相当額は、雑益(不課税)で処理します。

Q7. 免税販売手続を承認免税手続事業者に任せられますか?

一般型の販売場でも委託できます(消費税法施行令18条の3第1項)。ただし購入記録情報の提供と税関確認情報の受領は委託の対象から外れ、自館で行います。また免税手続カウンターでの手続は、販売場で物品を引き渡した日と同じ日に行う必要があります。カウンターが遠隔地にあるなどで同じ日に手続できない取引は、免税の適用を受けられません。