Q.6月30日に何が決まったのか?
2026年6月30日、総務省が苫小牧市・北広島市・稚内市・山形市・富士吉田市・富士河口湖町・名護市の7市町について、宿泊税の新設に同意しました。同じ日付で、東京都の宿泊税の変更(定率3%への移行)にも同意しています。翌7月1日には熊本市と宮崎市で1人1泊200円の徴収が始まりました。この2日間で、宿泊税の地図が一気に書き換わっています。
「総務大臣の同意」と、課税が始まる日は別の日です。宿泊税は自治体が条例で新設する法定外目的税のため、市議会の可決だけでは動きません。可決→総務大臣への協議→同意→条例施行(課税開始)の順で進み、同意は国のゲートを通過した段階を指します。宿泊者から税を預かり始める日はその先の施行日で、今回の7市町は2027年2月1日〜10月1日に分散しています。
同意はこの1年、まとめて出るようになりました。2025年7月22日に熊本市・旭川市・函館市・帯広市など10自治体、2026年2月13日に宮崎市・松本市・沖縄県など11自治体、3月27日に盛岡市ほか、そして今回の8件です。自館の市の名前が今回なくても、市議会や観光審議会で宿泊税の検討が始まった段階から、施行日までの逆算は自館の実務になります。
Q.自館の市はいくらで、いつからか?
7市町の税額は3グループに割れます。宿泊料金の3%を預かる定率型が山形市・苫小牧市・北広島市。1人1泊200円の定額型が稚内市・富士吉田市・富士河口湖町。名護市だけが上限付きの定率1.2%です。冒頭の一覧表とあわせて、自館のグループの読み方を押さえてください。
定率3% — 山形市・苫小牧市・北広島市
3市はいずれも宿泊料金の3%で、宿泊料金による免税点(いくら未満は非課税、という下限)がありません。1泊8,000円のビジネス利用で240円、1泊3万円のプランなら900円。定額と違い、料金が上がるほど税額も増えます。東京都が2027年4月から移行する税率と同じ水準で、県庁所在地・地方中核都市の新設が定率3%に寄ってきたのが今回の同意の特徴です。
山形市は山形県内で初めての宿泊税で、平年度の収入見込は約1.7億円。苫小牧市は約1.2億円、北広島市は約0.7億円です。北広島市は税収の使途に「北海道ボールパークFビレッジのある都市として」と明記しており、球場開催日の宿泊需要をそのまま財源設計に組み込みました。課税開始の予定は山形市・苫小牧市が2027年4月1日、北広島市は半年遅れの2027年10月1日です。
定額200円 — 稚内市・富士吉田市・富士河口湖町
1人1泊200円の定額で、税額は泊数×人数×200円の単純計算です。PMSの設定は定率型より軽く済みます。平年度の収入見込は稚内市が約0.7億円、富士吉田市が約1.4億円。富士河口湖町は約6.1億円で、今回の7市町では突出しています。富士山麓に集まる宿泊需要の規模が、そのまま数字に出ています。課税開始の予定は稚内市が2027年3月1日、富士吉田市・富士河口湖町が2027年4月1日です。
上限付き定率1.2% — 名護市
名護市は宿泊料金の1.2%、税額1,200円が上限です。単独では中途半端に見える数字には設計上の理由があります。沖縄県が2027年2月1日に県税(定率2%・上限2,000円)を施行予定で、市町村が独自課税するエリアでは県税が0.8%(上限800円)に下がり、市町村分の1.2%と合わせて2%に収まる配分になっているためです。名護市の課税開始予定も県と同じ2027年2月1日。宿泊者から見れば「沖縄はどこでも合計2%」で揃います。
免除に共通するのは「修学旅行等」
7市町とも宿泊料金による免税点は設けず、人による課税免除だけを置きました。共通するのは修学旅行等の参加者(引率者を含む)です。苫小牧市・北広島市・稚内市は認定こども園・保育所等の行事参加者も、名護市は部活動や日本中学校体育連盟等が主催する大会の参加学生等も免除に加えています。合宿や大会を多く受け入れているなら、免除対象をフロントでどの書類で確認するかを施行前に決めることになります。証明方法は各市の規則・手引きで定まるため、事業者説明会に持ち込みたい質問です。
Q.熊本市・宮崎市では何が始まったのか?
2026年7月1日、熊本市と宮崎市で宿泊税の徴収が始まりました。どちらも1人1泊200円の定額で、旅館・ホテル・簡易宿所に加えて民泊も対象です。年齢による区別はなく、宿泊料金が発生する宿泊者は全員が課税対象になります(料金がかからない添い寝の幼児や無料宿泊は対象外)。
熊本市 — 予約時期を問わず、チェックイン基準で課税
熊本市の課税は2026年7月1日以降のチェックイン分から、予約した時期を問わず適用されます。6月に受けた予約でも、宿泊日が7月1日以降なら200円が発生します。連泊で施行日を跨ぐ場合も同様に、7月1日以降の泊数分が対象です。営業開始前には経営申告書の提出が求められ、徴収した税は毎月分を翌月末日までに申告・納入します。要件を満たして承認を受ければ、3か月分をまとめる年4回の申告納入特例も使えます。
熊本市の総務大臣同意は2025年7月22日でした。同意から徴収開始まで約1年。後述の逆算チェックリストは、おおむねこの1年をどう配分するかの話です。
宮崎市 — 免除規定なし、同意から4か月半で施行
宮崎市には免税点も課税免除の規定もありません。修学旅行も課税対象で、この点は今回同意された7市町(いずれも修学旅行等は免除)と逆です。学校団体を受け入れているなら、市によって扱いが反対になることを覚えておく必要があります。制度の時系列は、条例公布が2025年9月26日、総務大臣同意が2026年2月13日、施行規則が2026年3月6日、徴収開始が2026年7月1日。同意から徴収開始まで4か月半しかなく、説明会・PMS改修・OTA設定がこの短い期間に集中しました。
施行済みの2市から持ち帰る実務
- 既存予約への案内 — 施行日を跨ぐ予約には「宿泊税が別途かかります」の連絡を入れる。OTA経由の予約は税設定の反映が間に合わないことがあり、現地徴収の運用と案内文をセットで用意する
- 領収書の表記 — 宿泊税を宿泊料金と分けて記載する書式へ更新する。区分表示は宿泊者への説明と行き違い防止の基本線になる
- 月次の申告納入 — 毎月分を翌月末までに申告・納入するのが基本線。経理担当が1人なら、熊本市型の「まとめ申告特例」が自館の市にあるかを確認する
Q.道税・県税との併課はどう扱うのか?
苫小牧市・北広島市・稚内市で宿を営むなら、計算がもう1段あります。北海道は2026年4月1日から道税として宿泊税(1人1泊100円〜500円の3階層)を導入済みで、市税の施行日からは、同じ1泊に道税と市税の2本が同時に掛かります。
道内の併課は既に動いています。札幌市・函館市・旭川市は道税と同じ2026年4月1日に市税の課税を開始しました。札幌市では市税200〜500円に道税100〜500円が乗り、合計300〜1,000円です。倶知安町は2019年から町税を課しており、2026年4月からは定率3%と道税の併課になっています(倶知安町(ニセコ)宿泊税)。苫小牧市・北広島市・稚内市は、この列に加わることになります。
定率+定額の混合計算はPMSの正念場
苫小牧市・北広島市の組み合わせは「市税=定率3%、道税=定額3階層」です。1つの宿泊に対して、宿泊料金×3%の計算と、料金帯で決まる定額の算定を同時に行い、税目別に記録・集計することになります。倶知安町(町税3%+道税)で先行している型で、PMSが2税目・2方式の同時計算に対応しているかどうかで実務の重さが決まります。稚内市は定額200円+道税の定額同士なので計算は軽いものの、申告・納入は道と市で別建てになります。納付先・納期限・様式が2本になる点は3市とも同じです。
併課の設計は3型 — 自館の県の構想を読む物差し
広域税(道県税)と市町村税が重なるときの調整は、地域で設計が分かれています。北海道の上乗せ型では道税は減額されず、市町村税がそのまま加算されます。総額に天井を置く沖縄型・県税を減らす長野型とは、宿泊者の負担も説明の仕方も変わります。
| 設計 | 地域の例 | 仕組み | 宿泊者の負担 |
|---|---|---|---|
| 上乗せ型 | 北海道×道内市町村 | 道税(定額100〜500円)に市町村税がそのまま加算 | 札幌市で合計300〜1,000円。苫小牧市では道税+3%になる見込み |
| 枠配分型 | 沖縄県×県内市町村 | 県2%(上限2,000円)の枠を、併課エリアでは県0.8%+市町村1.2%に配分 | 県内どこでも合計2%(上限2,000円)で一定 |
| 減額型 | 長野県×県内市町村 | 県税300円(導入後3年は200円)を、独自課税する市町村では150円(同100円)に減額 | 松本市などで県+市町村の合算額 |
自館の県で「県税として宿泊税を検討」の報道が出たら、最初に確認するのはこの型です。上乗せ型なら市税との単純合算で負担が積み上がり、枠配分型・減額型なら総額に歯止めがあります。フロントの説明も「道と市の2つの税をお預かりします」か「合計で2%です」かで変わります。
Q.施行までに何をどの順で準備するか?
今回の7市町は、同意から課税開始まで7〜15か月あります。名護市が2027年2月1日、稚内市が3月1日、山形市・富士吉田市・富士河口湖町・苫小牧市が4月1日、北広島市が10月1日。一方で宮崎市のように同意から4か月半で徴収が始まった例もあり、「まだ先」と置いておくと説明会・PMS改修・OTA設定が施行直前に重なります。富士吉田市は2026年8〜9月に宿泊事業者向け説明会を予定しており、準備の号砲はもう鳴っています。
| タスク | 時期の目安 | 主担当 |
|---|---|---|
| 市公式サイトで条例本文・施行規則・事業者向け手引きを入手する | 同意発表の直後 | 経営/総務 |
| 事業者説明会に出席し、免除の証明方法・申告様式・特例を質問する | 施行8〜9か月前 | 支配人/経理 |
| PMSベンダーへ税目追加(定率/定額・併課)の可否と費用・納期を確認する | 施行6か月前 | 支配人/システム |
| 自社サイト・館内表示・宿泊約款・領収書の税表記方針を決める | 施行4か月前 | 予約/経理 |
| 特別徴収義務者の届出(経営申告書等)を市へ提出する | 施行3か月前(市の指定に従う) | 経理 |
| OTA管理画面の税設定を更新し、テスト予約で表示を確認する | 施行2か月前 | 予約 |
| 施行日を跨ぐ既存予約へ宿泊税の案内を送る(予約経路別の文面) | 施行1〜2か月前 | 予約/フロント |
| フロント研修(案内の一言・免除書類の確認・外国語の説明文)を実施する | 施行1か月前 | フロント |
| 初回の申告納入(翌月末)をeLTAX等で実行し、まとめ申告特例の要否を判断する | 施行翌月 | 経理 |
特別徴収義務者の届出様式やeLTAXの設定手順は自治体ごとに違います。届出から月次の申告納入までの共通フローは宿泊税 届出・eLTAX申告ガイドにあります。
Q.東京都の変更と、この先の見通しは?
同じ6月30日、東京都の宿泊税の変更にも同意が出ました。2027年4月1日から定額(100円/200円)を廃止して定率3%へ移行し、免税点は1人1泊1.3万円未満、民泊も課税対象に加わります。改正条例は2026年7月1日に公布済みです。総務省資料の平年度収入見込は約190億円で、2024年度の税収81億円の2倍を超える規模になります。都内施設の価格帯別シミュレーションと準備は東京都宿泊税 2027改定で扱っています。
2026年上半期の宿泊税の同意は、新設19件・変更2件になりました。2月13日に宮崎市・松本市・野沢温泉村・小清水町・洞爺湖町と、沖縄県+県内5市町村(石垣市・宮古島市・本部町・恩納村・北谷町)の11件。3月27日に盛岡市の新設とニセコ町の変更。6月30日に7市町の新設と東京都の変更です。2025年7月22日の10自治体(熊本市・旭川市・帯広市・函館市・富良野市・音更町・占冠村・弘前市・岐阜市・鳥羽市)を含めると、同意済みの自治体が全国に積み上がっています。このうち旭川市・函館市などは2026年4月に、熊本市・宮崎市は7月に課税が始まっており、残る自治体の施行が2026年後半から2027年にかけて順次続きます。
自館の市がこのリストにない場合の追い方は2つです。市議会・観光審議会の議事録で宿泊税の検討状況を追うこと。そして総務省の報道資料(法定外税の同意)を月次で確認することです。全国の税率・施行日は宿泊税 全国一覧 2026で一覧できます。
