Q.2026年7月の第1次速報、何が起きていた?
2026年7月の延べ宿泊者数は5,467万人泊、前年同月比3.5%減でした(観光庁『宿泊旅行統計調査』第1次速報、2026年8月31日公表)。6月の-8.4%から下げ幅が5ポイント近く小さくなっています。日本人4,110万人泊(-3.1%)、外国人1,358万人泊(-4.6%)で、6月に二桁減だった外国人が-4.6%まで持ち直しました。前年の2025年7月は5,665万人泊でしたので、今年はそこから198万人泊減った計算になります。
6月から7月にかけて変わったこと
- 3つの数字がそろって持ち直した: 全体は-8.4%から-3.5%、日本人は-6.3%から-3.1%、外国人は-14.0%から-4.6%。6月の落ち込みが7月まで続く形にはならなかった
- 稼働率は前年の水準に近づいた: 全タイプ平均60.8%で前年同月差-0.4ポイント。6月の-1.6ポイントから差が小さくなった
- 前年を上回ったのは3タイプ: 旅館+3.4ポイント、リゾートホテル+2.7ポイント、シティホテル+0.3ポイント。6月時点では旅館とリゾートの2タイプで、そこにシティが加わった
- 外国人比率は24.8%: 6月確定の26.7%から1.9ポイント下がった。延べ宿泊全体が6月の4,582万人泊から885万人泊増える一方、外国人は136万人泊の増にとどまった
- 訪日外客数とは向きが違う: 7月の訪日外客数は344万2,100人で前年同月比0.1%増、7月として過去最高(JNTO)。人数は過去最高、泊数は前年割れという2つの数字が並んだ
Q.施設タイプ別の客室稼働率は?
タイプ別に並べると、ビジネスホテル74.2%・シティホテル71.9%と、旅館40.6%・簡易宿所30.9%のあいだに40ポイント以上の開きがあります。自館がビジネスホテルなら、比べる相手は全体平均60.8%ではなく74.2%です。7月は前年同月差の向きが6月から変わり、旅館・リゾートホテル・シティホテルの3タイプが前年を上回りました。
| 施設タイプ | 2026年7月 | 2026年6月(第2次速報) | 前年同月差 | 7月稼働率の視覚比較 |
|---|---|---|---|---|
| ビジネスホテル | 74.2% | 71.5% | -0.5pt | |
| シティホテル | 71.9% | 69.2% | +0.3pt | |
| 全タイプ平均 | 60.8% | 57.2% | -0.4pt | |
| リゾートホテル | 59.6% | 50.8% | +2.7pt | |
| 旅館 | 40.6% | 36.7% | +3.4pt | |
| 簡易宿所 | 30.9% | 26.1% | -1.9pt |
タイプ別に読むときの手がかり
- 旅館 40.6%(+3.4ポイント): 前年同月差は全タイプで最大。6月の36.7%からも3.9ポイント上がった
- リゾートホテル 59.6%(+2.7ポイント): 6月の+0.2ポイントから伸びを広げた。6月の50.8%からは8.8ポイント上がり、月をまたぐ動きが全タイプで最も大きい
- シティホテル 71.9%(+0.3ポイント): 6月は-3.3ポイントだった。前年割れから前年超えへ向きが変わった
- ビジネスホテル 74.2%(-0.5ポイント): 稼働率そのものは全タイプで最も高い。前年割れは続くが、6月の-1.3ポイントからは差が小さくなった
- 簡易宿所 30.9%(-1.9ポイント): 稼働率は全タイプで最も低い。前年割れが続く2タイプのうちの1つで、下げ幅はビジネスホテルより大きい
Q.訪日は過去最高なのに、外国人の泊数が減ったのはなぜ?
7月の訪日外客数は344万2,100人で前年同月比0.1%増、7月として過去最高でした(JNTO、2026年8月19日公表)。一方で外国人延べ宿泊者数は1,358万人泊の-4.6%です。人数は過去最高、泊数は前年割れという、向きの違う2つの数字が並びました。
公表資料からは、この差を1つの理由に絞れません。確かめられるのは2点です。1点目は、訪日外客数には駐在員やその家族、留学生等の入国者・再入国者が含まれる点(JNTOの定義)。人数の増加が宿泊施設の泊数にそのまま結びつくとは限りません。2点目は、7月分が有効回収率32.9%の第1次速報である点。6月分は第1次の-11.9%から第2次で-14.0%へ動きました。1人あたりの宿泊数がどう変わったかは、今回の公表資料に対応する数字がないため、9月30日の第2次速報を待って確かめます。
市場別に見た7月の訪日外客数
| 市場 | 2026年7月 | 前年同月比 | JNTOの説明 |
|---|---|---|---|
| 韓国 | 894,700人 | +31.9% | 7月として過去最高。訪日旅行人気が続く |
| 台湾 | 763,800人 | +26.4% | 単月として過去最高。初めて70万人を超えた |
| 中国 | 428,200人 | -56.1% | 中国政府が日本への渡航を避けるよう呼びかけた影響 |
| 米国 | 286,200人 | +3.3% | 7月として過去最高 |
| 香港 | 272,500人 | +54.8% | 前年は地震発生の情報が広まり訪日を控える動きがあった |
国籍別の内訳(2026年6月・第2次速報)
| 順位 | 国・地域 | 延べ宿泊者数 | シェア | 前年同月比 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 台湾 | 1,857,580人泊 | 17.1% | +14.7% |
| 2 | 米国 | 1,827,880人泊 | 16.8% | +0.5% |
| 3 | 韓国 | 1,312,780人泊 | 12.1% | -8.1% |
| 4 | 中国 | 1,307,940人泊 | 12.0% | -50.9% |
| 5 | 香港 | 494,030人泊 | 4.5% | +20.7% |
上位5つの国・地域で全体の62.6%を占めます。合計は1,086万3,490人泊(-11.8%)で、客室数20室以上の施設に対する調査から作成した数字です。伸びが大きいのはロシア+44.9%、インド+34.6%、ベトナム+30.0%。中国が-50.9%と半減する一方、台湾が首位に立って+14.7%と伸びており、市場の入れ替わりが6月時点で起きています。
Q.同時公表の6月確定値はどう動いた?
6月分の第2次速報が、7月分の第1次速報と同じ8月31日に出ました。修正の向きが指標で分かれています。延べ宿泊者数は下方、客室稼働率は上方に動きました。
第1次速報から動いた数字
- 延べ宿泊者数: 4,678万人泊 → 4,582万人泊。前年同月比は-6.5%から-8.4%へ
- 日本人: 3,426万人泊 → 3,360万人泊。前年同月比は-4.4%から-6.3%へ
- 外国人: 1,251万人泊 → 1,222万人泊。前年同月比は-11.9%から-14.0%へ
- 客室稼働率: 56.2% → 57.2%。前年同月差は-2.6ポイントから-1.6ポイントへ小さくなった
- 有効回収率: 第1次36.1%、第2次44.6%。第2次では客室数20室未満の施設も含む全数ベースになる
Q.自館は何を決めるか?
7月の数字は、6月の落ち込みが続かなかったことを示しています。ただし全体は前年割れのままで、タイプ別の向きは分かれました。自館が決めるのは、旅館とリゾートで起きた前年超えが自館でも起きているか、そして秋から冬の販売をどの前提で組むかの2点です。
- 比較相手を全体平均から同タイプの数字に置き換える。ビジネスホテルなら74.2%、シティホテルなら71.9%、旅館なら40.6%が起点になる
- 7月に前年を超えた3タイプに自館が入るかを確かめる。同タイプ平均を上回ったか下回ったかで、秋の販売の前提が変わる
- 外国人比率24.8%を自館の実績と比べる。全国平均より高い施設は、中国-50.9%・台湾+14.7%という市場の入れ替わりが直接効く
- 秋から冬の料金を、全体が前年割れのままである前提で組む。7月の1か月だけで潮目が変わったと決めつけない
- 経営会議の資料に、第1次速報は9月30日の第2次速報で動く旨を定型の注記として入れる
7月分第2次速報・8月分速報(ともに9月30日)までにやること
| やること | 締切 | 担当 |
|---|---|---|
| 自館の7月実績(稼働率・ADR・市場別の構成)を施設タイプ別平均と突合 | 2026年9月12日 | 予約/レベニュー |
| 年末年始の料金設計。全体-3.5%を織り込み、国内客の単価と販売経路を組み直す | 2026年9月19日 | レベニュー/マーケ |
| JNTO訪日外客数8月分(9月中旬予定)で夏の実績を確認 | 2026年9月下旬 | マーケ |
| 中国-50.9%・台湾+14.7%の入れ替わりを踏まえ、繁体字の販売経路と館内表示を点検 | 2026年9月中 | マーケ/フロント |
| 7月分 第2次速報(9月30日公表)で稼働率の確定を確認し、経営会議資料に反映 | 2026年10月上旬 | 経営企画/予約 |
Q.公表スケジュールと第1次・第2次速報の使い分けは?
宿泊旅行統計は、1回の公表で新しい月の第1次速報と、1つ前の月の第2次速報が同時に出ます。今回は7月分の第1次速報と6月分の第2次速報が同じ8月31日に並びました。自社の料金改定サイクルや経営会議のタイミングに合わせて使います。
| 対象月 | 第1次速報 | 第2次速報 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月分 | 7月6日(公表済) | 7月31日(公表済) | 初夏・夏商戦前の動向 |
| 2026年6月分 | 7月31日(公表済) | 8月31日(今回) | 梅雨・夏の入口 |
| 2026年7月分 | 8月31日(今回) | 9月30日(予定) | 夏休み前半の実績 |
| 2026年8月分 | 9月30日(予定) | 10月下旬(予定) | お盆・夏の山 |
第1次速報と第2次速報の違い
- 第1次速報: 客室数20室以上の施設を中心に集計。速報性を優先して先に公表(具体日は上表)
- 第2次速報: 20室未満の小規模施設も含む全数ベース。第1次速報の約1か月後に公表され、確定に近づく
- 使い分け: 月次の料金・販売経路の調整には第1次速報、年間まとめや大型投資の判断には第2次速報以降の値
- 修正の向き: 6月分は延べ宿泊が下方、客室稼働率が上方に動いた。指標によっても向きが変わるため、年単位は確定値で締める
Q.よくある質問
Q1. 7月の5,467万人泊はどこまで信頼できますか?
第1次速報の推計値です。有効回収率32.9%の調査票から推計しており、確定に近い第2次速報は2026年9月30日に出ます。月次の料金調整や販売判断には使えますが、年間まとめや大型投資の判断材料には第2次速報を待ってください。同時公表の6月分は第1次速報の4,678万人泊(-6.5%)から第2次速報で4,582万人泊(-8.4%)へ下方修正されました。修正の向きは月によって変わりますので、速報は上下どちらにも動く前提で読んでください。
Q2. 6月と7月で何が変わりましたか?
下げ幅が小さくなりました。全体は6月-8.4%から7月-3.5%へ、日本人は-6.3%から-3.1%へ、外国人は-14.0%から-4.6%へ動いています。客室稼働率も全タイプ平均60.8%で、前年同月差は6月の-1.6ポイントから-0.4ポイントまで小さくなりました。ただし6月は第2次速報、7月は第1次速報で、集計の段階が違います。同じ土俵で比べるのは、7月分の第2次速報が出る9月30日以降になります。
Q3. 前年を上回った施設タイプはどれですか?
旅館・リゾートホテル・シティホテルの3タイプです。旅館の客室稼働率は40.6%で前年同月差+3.4ポイント、リゾートホテル59.6%(+2.7ポイント)、シティホテル71.9%(+0.3ポイント)。ビジネスホテル74.2%(-0.5ポイント)と簡易宿所30.9%(-1.9ポイント)は前年割れが続いています。6月時点で前年を上回っていたのは旅館とリゾートホテルの2タイプで、そこにシティホテルが加わりました。
Q4. 訪日外客数は7月として過去最高なのに、外国人延べ宿泊が減ったのはなぜですか?
公表資料からは1つの理由に絞れません。確かめられるのは2点です。1点目は、訪日外客数には駐在員やその家族、留学生等の入国者・再入国者が含まれる点(JNTOの定義)。人数の増加が宿泊施設の泊数にそのまま結びつくとは限りません。2点目は、7月分が有効回収率32.9%の第1次速報である点。6月分は第1次の-11.9%から第2次で-14.0%へ動きました。1人あたりの宿泊数がどう変わったかは、今回の公表資料に対応する数字がありません。
Q5. 全タイプ平均60.8%を自館ビジネスホテルの目標にしてよいですか?
目標にはしないでください。ビジネスホテルは74.2%が同タイプの平均値です。全体60.8%と比べると立地や商品力の課題を見誤ります。さらに全国のビジネスホテル平均には都市部の高稼働が含まれます。6月確定の都道府県別で東京都のビジネスホテルは81.6%と全国で最も高い値でした。地方都市では規模と立地の近い水準で読んでください。
Q6. 中国の減りは自館にどこまで効きますか?
外国人比率と市場構成で決まります。6月確定の国籍別で中国は130万7,940人泊(-50.9%)と半減し、台湾185万7,580人泊(+14.7%)が首位に立ちました。全体の外国人比率は7月で24.8%です。自館の外国人比率がこれを大きく上回り、かつ中国からの団体・個人が主力だった施設ほど影響が出ます。台湾・韓国・香港が伸びているため、繁体字とハングルの販売経路と館内表示を点検する順番が先になります。
