Q.2026年5月の訪日外客数、どんな結果?

日本政府観光局(JNTO)は2026年6月17日、2026年5月の訪日外客数(推計値)を公表しました。総数は355万9,900人。前年同月比で3.6%減と、4月(-5.5%)に続く2か月連続の前年割れです。ただし前年5月が369万人台と高かったための反動で、高水準を保っています。1〜5月の累計は1,793万6,000人で、前年同期比-1.1%とほぼ前年並みです。

2026年5月 訪日外客数(推計値・全国)
355.9万人
前年同月比 -3.6%
総数355万9,900人。1〜5月累計1,793万6,000人(前年同期比-1.1%)。2026年の月別は1月359.8万・2月346.7万・3月361.9万・4月369.2万・5月355.9万人。出典: JNTO「2026年5月推計値」(2026年6月17日公表)
読み方:総数のマイナスは中国1市場の6割減がほぼ説明します。中国を除いた訪日外客数は前年同月比+11.8%で、韓国・台湾・米国など19市場は5月として過去最高でした。「前年割れ」と「多くの市場で過去最高」は矛盾しません。中国一極の反動と、それ以外の市場の広がりが同時に起きています。

2026年5月の数字をどう読むか

  • 前年割れでも需要減ではない: 前年5月は369万人台。中国の反動を除けば、他市場は前年から二桁で伸びている
  • 中国の6割減が主因: 中国は31万3,000人で前年から60.4%減。この1市場だけで総数を前年割れに引き込む規模
  • 19市場が5月として過去最高: 韓国・台湾・米国・マレーシアなど。中東地域とインドは単月過去最高
  • 累計はほぼ前年並み: 1〜5月累計-1.1%。中国の落ち込みを、それ以外の市場の伸びが埋めている

Q.国籍別(市場別)の動向は?

JNTOは毎月主要国・地域の推計値を公表します。2026年5月は、中国を除くほぼ全域で前年を上回りました。東アジアは韓国・台湾が二桁増、東南アジアはマレーシア・シンガポールが伸び、欧米・オセアニアも米国・ドイツを中心に増加。前年割れは中国・タイ・ベトナムなど少数にとどまりました。

市場2026年5月前年同月比動向
韓国951,300人+15.2%最大市場。二桁増で全体を下支え、5月過去最高
台湾616,800人+14.6%二桁増。東アジアの主力、5月過去最高
米国333,700人+7.0%桜シーズン後も堅調、5月過去最高
中国313,000人-60.4%6割減。団体・航空便の回復が途上で全体を押し下げ
香港207,900人+7.7%前年割れから増加に転じる
タイ98,800人-8.6%前年の高水準からの反動減
フィリピン85,000人+2.8%小幅増で5月過去最高
豪州82,300人+4.3%増加
シンガポール76,600人+21.1%二桁増で5月過去最高
マレーシア72,200人+39.6%高い伸び。5月過去最高
カナダ69,400人+4.6%5月過去最高
ベトナム58,000人-2.1%おおむね横ばい
インドネシア56,800人+8.6%5月過去最高
インド56,500人+31.3%単月過去最高
英国55,200人+6.0%5月過去最高
ドイツ50,200人+18.8%二桁増で5月過去最高
フランス48,500人+5.3%5月過去最高
中東地域39,000人+67.8%単月過去最高
イタリア28,100人+12.6%二桁増で5月過去最高
ロシア24,600人+28.4%5月過去最高
スペイン21,900人+5.3%5月過去最高
メキシコ19,700人+30.6%5月過去最高
北欧地域17,400人+11.9%二桁増で5月過去最高
5月として過去最高の19市場:韓国・台湾・米国・シンガポール・マレーシア・インドネシア・フィリピン・インド・豪州・カナダ・メキシコ・英国・フランス・ドイツ・イタリア・スペイン・ロシア・北欧地域・中東地域。うち中東地域とインドは全期間を通じての単月過去最高です。出典: JNTO「2026年5月推計値」。

宿泊業側から見るべき視点

  • 国籍構成比の変化: 自館の主要市場が全体のどこに位置するかを毎月確認する
  • 伸び率と実数の両輪: 韓国・台湾は実数で厚く、マレーシア・インド・中東地域は伸び率で客数を積み増している
  • 滞在日数の差: 欧米は滞在が長く1予約あたりの人泊数が積み上がるため、短期滞在中心の東アジアよりRevPARに効きやすい
  • 消費単価: 1人あたり旅行支出は滞在の長い欧米豪が東アジアを上回る(観光庁 訪日外国人消費動向調査)

Q.中国6割減の裏で何が起きているのか?

2026年5月の総数は前年を3.6%下回りました。ところが、下がったのは中国だけと言ってよい状態です。中国は前年5月の79万人から31万3,000人へ47万7,000人減りました。総数の減少幅は約13万人ですから、中国の減少分のほうが総数の減少分より大きい。中国を差し引くと、残りの市場は前年から積み上がっています。

中国を除く訪日外客数(2026年5月)
324.7万人
前年同月比+11.8%。2025年5月290万3,498人→2026年5月324万6,900人。総数のマイナスは中国一極の反動
中国(最大の減少要因)
313,000
前年同月比-60.4%。1〜5月累計でも-56.2%と前年の半分以下で推移
高い伸び率の市場(2026年5月)
4市場
中東地域+67.8%・マレーシア+39.6%・インド+31.3%・メキシコ+30.6%。小さな実数から客数を積み増す
実数で厚い3市場(2026年5月)
190.2万人
韓国+台湾+米国の合計。総数の半分以上を占め、いずれも前年から増加

この構図は、宿泊事業者の販路設計に直接効きます。中国の団体客に稼働を預けてきた施設は、その分がそのまま欠けます。一方で、行き先が特定の1か国に寄らず複数市場に散っているため、間口を広げていた施設は総数の前年割れの中でも客数を保てます。中国の回復時期を待つより、いま伸びている市場をどう自館に引き込むかが、今期の稼働を左右します。

注意:「中国を除く+11.8%」はJNTO公表の実数から算出した参考値です(2026年5月は総数355万9,900人-中国31万3,000人=324万6,900人。前年5月の中国を除く290万3,498人と比べて+11.8%)。自館の中国比率は施設ごとに大きく異なるため、全国の構図をそのまま当てはめず、自館の実績で確かめてください。

Q.観光庁「宿泊旅行統計調査」との連動性は?

JNTOの訪日外客数と観光庁の宿泊旅行統計調査は、目的が異なります。訪日外客数は入国した人数、宿泊統計は国内での延べ宿泊者数です。両方を並べて読むと、入国の増減が自館の宿泊にどこまで及んでいるかが見えます。

項目JNTO 訪日外客数観光庁 宿泊旅行統計
対象入国した外国人総数国内の延べ宿泊者数(日本人+外国人)
単位人(推計値)人泊(延べ)
公表時期翌月中旬(速報)約2か月遅れ(速報値)
地域粒度全国のみ(空港別もあり)都道府県別
用途入国総量・市場別動向稼働率・RevPAR計算の基礎
直近で使える宿泊統計:本稿の公表時点(2026年6月17日)で最新の宿泊統計は、2026年4月分の第1次速報(2026年5月29日公表)です。延べ宿泊者数5,063万人泊(前年同月比-4.6%)・外国人延べ宿泊-9.0%・客室稼働率59.7%。入国者数の減少はそのまま人泊数を細らせるため、訪日で中国が減った局面は外国人延べ宿泊のマイナスとして宿泊側にも表れています。5月分の宿泊統計は7月下旬に出る予定です。月ごとの並びは2026年 宿泊・訪日 月次推移で追えます。

2つを組み合わせた活用例

  • JNTO訪日外客数の市場別成長率と、宿泊統計の外国人延べ宿泊の成長率を比較 → 滞在日数の変化が読める
  • 地域別の外国人宿泊比率の推移を追う → 地方分散の効果を測る
  • 自館のRevPAR推移を全国平均・同タイプ平均と照合 → 料金設計の妥当性を確かめる

Q.中国依存の自館は、販路をどこへ張り替えるか?

中国からの予約が細り始めた自館が、今期どの市場に間口を広げるか。ここは「実数で厚い市場」と「伸び率が高い市場」の2軸で決めると迷いません。前者は稼働の土台を作り、後者は伸びしろを取りにいく役割です。自館の平均単価と客室タイプ、既存の言語対応に合う市場から順に、販路と料金を振り向けていきます。

  • 実数で稼働を埋める: 韓国(95万人)・台湾(62万人)・米国(33万人)。ボリュームが大きく、OTA・言語対応の投資対効果が高い
  • 伸び率で客数を積む: マレーシア+39.6%・インド+31.3%・シンガポール+21.1%・中東地域+67.8%。まだ実数は小さいが増勢が続く
  • 単価の高い市場を選ぶ: 欧米(米国・ドイツ・英国)は滞在が長くRevPARに効きやすい。客室タイプと料金帯を合わせる
  • 中国比率を数字で把握: 自館の外国人予約に占める中国のシェアを国籍別実績で出し、欠ける分を代替市場の目標に置き換える
  • 自施設の言語・決済を再点検: 張り替える市場に合わせて多言語表示・決済手段・食事対応を先に整える

次回(6月分)速報公表(7月中旬)までにやること

やること 締切 担当
5月実績(自館の稼働・ADR・国籍構成)をJNTO速報と突合 2026年6月25日 予約/レベニュー
中国比率の高い施設は、韓国・台湾・米国と高成長市場(マレーシア・インド・シンガポール・中東)へOTA配分と多言語対応を振り向ける 2026年6月末 マーケ/予約
夏(7-8月)料金・最低宿泊日数を市場ミックスの前提で最終調整 2026年6月30日 レベニュー/マーケ
4月分宿泊統計の第2次速報(6月下旬公表)で都道府県別の外国人宿泊を確認 2026年6月末 経営企画/予約
月次経営会議資料に「中国を除く訪日+11.8%」の分散論点を反映 月次定例会議 経営企画

Q.JNTO速報値の読み解きガイド

公表スケジュール

JNTO訪日外客数(推計値)は、翌月中旬(おおむね15〜20日)に公表されます。2026年の主な公表実績・予定は以下の通りです。

  • 3月分 → 4月15日(公表済)
  • 4月分 → 5月20日(公表済)
  • 5月分 → 6月17日(今回)
  • 6月分 → 7月中旬(予定)

公表資料の構成

JNTOの月次報道発表資料は、例年以下の構成です。実務では最低限 (1)(2)(4) を押さえておくと足ります。

  1. 全体数(推計値)と前年同月比・2019年同月比
  2. 主要市場別の推計値
  3. 市場別のトピック解説(短文)
  4. 年累計と月次推移グラフ
  5. 参考統計(出国日本人数など)

速報後に追うべき追加情報

  • 観光庁 宿泊旅行統計調査: 約2か月遅れで公表(5月分は7月下旬予定)
  • 観光庁 訪日外国人消費動向調査: 四半期公表、単価と費目構成がわかる
  • 法務省 出入国管理統計: 確定値。推計値との差を把握したい場合に参照
推計の仕組み:訪日外客数は法務省の出入国管理統計を元にした推計値です。推計値と確定値の差がなぜ生まれるかはJNTO訪日外客数の推計方式を読み解くで整理しています。

Q.よくある質問

Q1. 5月は前年割れなのに「19市場で過去最高」とはどういう意味ですか?

総数の前年同月比-3.6%は、市場ごとの増減を合算した結果です。中国が31万3,000人(-60.4%)と6割減で総数を押し下げた一方、韓国・台湾・米国など19市場は5月として過去最高でした。中国を除くと訪日外客数は前年同月比+11.8%です。総数のマイナスは中国一極の反動で、他の多くの市場はむしろ伸びています。

Q2. 中国市場の回復時期は公表データから読めますか?

JNTOの推計値からは回復時期までは読み取れません。1〜5月累計で中国は-56.2%、団体旅行と航空便の回復が途上にあります。時期の予測に頼るより、自館の国籍構成に占める中国比率を点検し、二桁増が続く代替市場への配分を先に決めるほうが実務では有効です。

Q3. 中国依存度の高い施設は、まずどの市場に販路を張り替えるべきですか?

2つの軸で選びます。1つは実数で厚みのある韓国(95万人)・台湾(62万人)・米国(33万人)で、いずれも二桁前後の伸び。もう1つは高い伸び率で客数を積み増している市場で、マレーシア(+39.6%)・インド(+31.3%)・シンガポール(+21.1%)・中東地域(+67.8%)が該当します。自館の平均単価と滞在日数に合う市場を選び、OTA配分と多言語対応を振り向けます。

Q4. 過去最高の市場が多いのに、宿泊が伸びていないのはなぜですか?

訪日外客数は入国した人数で、宿泊数ではありません。滞在日数や訪問地域の分散、日帰り・個人旅行の増加によって、入国増がそのまま自館の宿泊数に直結しないことがあります。入国動向は観光庁の宿泊旅行統計と併せて読み、自館の実績と照合してください。

Q5. この速報値はどこまで信頼できますか?

JNTOの訪日外客数は法務省の出入国管理統計を元にした推計値です。後日の確定値で小幅に修正されることがあります。月次の料金・販売判断には速報値で十分ですが、大型投資など大きな意思決定には確定値を確認してください。

Q6. 次の公表はいつですか?

6月分の訪日外客数(推計値)は7月中旬に公表される見込みです。観光庁の宿泊旅行統計は約2か月遅れで、5月分の第1次速報は7月下旬に公表される予定です。