Q.2026年4月の第1次速報、何が起きていた?

2026年4月の延べ宿泊者数は5,063万人泊で、前年同月比は4.6%減でした(観光庁『宿泊旅行統計調査』第1次速報、2026年5月29日公表)。うち外国人は1,573万人泊(-9.0%)、日本人は3,490万人泊(-2.4%)。前年4月は訪日が記録的な高水準だった反動で、外国人の減りが全体の下げを大きくしています。

2026年4月 延べ宿泊者数(全国・第1次速報)
5,063
万人泊
前年同月比-4.6%。うち外国人1,573万人泊(-9.0%)/ 日本人3,490万人泊(-2.4%)。出典: 観光庁 第1次速報(2026年5月29日公表)

4月が前年を下回った理由

  • 前年4月の反動: 前年4月は訪日が390万人台と記録的な高水準。その反動で外国人宿泊(-9.0%)が全体を押し下げた
  • 中国の半減: 確定した3月の国籍別で中国は前年比-52.6%。4月もこの傾向が続き、外国人の伸びを抑えた
  • イースターの時期ずれ: 復活祭が早く、欧州の宿泊需要が4月から3月に前倒しした
  • 日本人は底堅い: 日本人宿泊は-2.4%にとどまり、外国人より落ち込みが浅い
  • 稼働率は前月から微増: 全国59.7%は3月の59.4%から0.3ポイント上昇。需要が崩れたわけではない

Q.施設タイプ別の客室稼働率は?

施設タイプ別の客室稼働率を並べると、ビジネス74.3%・シティ72.5%と、旅館40.3%・簡易宿所23.3%のあいだに30ポイント以上の開きがあります。同じ宿泊業でも、タイプが違えば収益の構造は大きく異なります。4月はリゾートが54.5%へ季節的に下がった点が、3月との大きな違いです。

施設タイプ2026年4月2026年3月(参考)4月稼働率の視覚比較
ビジネスホテル74.3%73.1%
シティホテル72.5%72.1%
全タイプ平均59.7%59.4%
リゾートホテル54.5%58.8%
旅館40.3%39.7%
簡易宿所23.3%23.9%

タイプ別に何が起きているか

  • ビジネスホテル(74.3%): 出張とGW前後の移動で高水準。前月とほぼ同じで稼働の天井に近く、単価を引き上げる余地がある
  • シティホテル(72.5%): 都市部のインバウンドとイベント需要が支える。ビジネスホテルに次ぐ水準
  • リゾートホテル(54.5%): スキー終了と夏前の端境期で、3月の58.8%から下がった。地域差が大きい
  • 旅館(40.3%): 1泊2食・高単価の形態が稼働率の天井を下げる。GWを除くと4月は弱い月になりやすい
  • 簡易宿所(23.3%): ゲストハウスやカプセルが中心。インバウンド利用は多いが、供給に対して全体の稼働は低い
読み方の注意:「全タイプ平均59.7%」を自施設と比べると判断を誤ります。ビジネスなら74.3%、旅館なら40.3%が同タイプの平均値です。タイプ別の読み方は宿泊旅行統計の読み方 ― 用語・計算式・施設タイプ・三大都市圏を整理で整理しています。

Q.外国人延べ宿泊の国籍別構成は?(3月確定値)

国籍別の内訳は第1次速報には含まれません。同時に確定した3月分(第2次速報)で見ると、台湾192.8万人泊(+27.2%)が首位で、米国・韓国が続きます。一方、中国は99.7万人泊(-52.6%)へ半減しました。訪日外客数と同じく、中国の落ち込みが宿泊面にもはっきり出ています。

国籍/地域延べ宿泊者数(3月確定)構成比前年同月比
台湾1,928,190人泊15.4%+27.2%
米国1,689,280人泊13.5%-5.4%
韓国1,448,570人泊11.6%+8.6%
中国997,320人泊8.0%-52.6%
香港572,660人泊4.6%+2.1%
豪州555,370人泊4.4%+1.0%
タイ499,890人泊4.0%+3.9%
都市集中から地方分散へ:3月の外国人延べ宿泊者数は、三大都市圏が前年同月比-6.8%、地方部が+3.2%でした。都市部が前年を下回り、地方が伸びた月です。三大都市圏は埼玉・千葉・東京・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫の8都府県を指します。

JNTO訪日外客数との対比で見えること

JNTOの訪日外客数と本統計の外国人延べ宿泊者数を対比すると、市場ごとの平均滞在日数の動きが読めます。4月の訪日動向は2026年4月 訪日外客数 速報解説、推計方式はJNTO訪日外客数の推計方式を読み解くで扱っています。4月分の国籍別宿泊は第2次速報(6月下旬)で確定します。

Q.2026年1月分からの調査設計変更とは?

観光庁は層化基準の変更について(PDF)を公表し、2026年1月分から宿泊施設の層化変数を「従業者数」から「客室数」に変更しました。無人フロントや省力化施設が増え、従業者数では宿泊供給の実態を捉えきれなくなったことが背景です。

旧基準(2025年12月分まで)
従業者数
10人以上/10人未満で層化。1990年代から継続した設計
新基準(2026年1月分から)
客室数
客室規模で層化。無人化・省力化施設に対応

実務への影響

  • 前年同月比は参考値: 2026年1〜12月分は新旧基準が混在する。観光庁のQ&A(PDF)でも参考値扱いが推奨されている
  • 小規模施設の捕捉精度が向上: 簡易宿所・小規模旅館の実態が反映されやすくなった。簡易宿所の稼働率23.3%という数字も実態に近い可能性がある
  • 時系列分析は2027年以降: 新基準で12か月分が揃うまでは、月次の方向感をつかむ程度にとどめる
  • 社内レポートに注記を入れる: 経営会議資料やKPIダッシュボードで宿泊統計を引用する際は「新層化基準」の注記を添える
重要:2026年1〜12月分の前年同月比を「成長率」として扱うと意思決定を誤る可能性があります。観光庁の接続係数公表を待つか、当面は方向感(伸びている/横ばい)の把握に留めるのが安全です。

Q.宿泊事業者にとっての示唆は?

  • 同タイプ平均との照合: ビジネスは74.3%、シティは72.5%、リゾートは54.5%、旅館は40.3%、簡易宿所は23.3%。同タイプ平均と10ポイント以上の乖離があれば、立地・商品力・販売経路のいずれかに構造的な課題がある
  • 中国依存度の点検: 確定した3月の国籍別で中国は-52.6%。中国の構成比が高い施設は、台湾・韓国・東南アジアなど伸びている市場へ販売を振り向ける
  • リゾートの季節性を織り込む: リゾートは3月58.8%から4月54.5%へ低下。夏に向けた回復を前提に、端境期の料金と人員を調整する
  • 夏季料金の確定: 夏季(7-8月)の料金を6月中に固め、5月分速報と4月分第2次速報を最終調整に使う
  • 調査設計変更の社内周知: 経営会議資料に「新層化基準により前年同月比は参考値」の注記を定型化する
補助金活用:稼働率改善のためのDX投資・多言語化・客室リニューアルは観光庁・経産省の補助金対象になることがあります。令和8年度の概観は観光DX補助金 令和8年度まとめで整理しています。

5月分速報・4月分第2次速報(ともに6月下旬)までにやること

やること 締切 担当
4月実績(自施設の稼働率・ADR・市場別ミックス)を施設タイプ別平均と突合 2026年6月10日 予約/レベニュー
夏季(7-8月)料金の最終確定。台湾・韓国・米国を主軸に、中国減を前提に再設計 2026年6月20日 レベニュー/マーケ
前年同月比は参考値として扱う旨を経営会議資料の定型注記に追加 2026年6月中 経営企画
4月分 第2次速報(6月下旬公表)で都道府県別を確認、地方分散度合いをチェック 2026年6月末 経営企画/予約
5月分 第1次速報(6月下旬予定)を24時間以内に経営会議資料に反映 2026年6月末 経営企画

Q.公表スケジュールと第1次・第2次速報の使い分けは?

宿泊旅行統計は、第1次速報が翌月下旬、第2次速報がさらにその翌月下旬に出ます。自社の料金改定サイクルや経営会議のタイミングに合わせて使うのが実務的です。

対象月第1次速報第2次速報主な用途
2026年2月分4月下旬(公表済)5月下旬(公表済)春節月の確定値
2026年3月分4月30日(公表済)5月29日(確定)桜シーズン+地方分散の確定
2026年4月分5月29日(今回)6月下旬(予定)GW・夏前の動向
2026年5月分6月下旬(予定)7月下旬(予定)夏季料金の最終調整

第1次速報と第2次速報の違い

  • 第1次速報: 客室数20室以上の施設を集計。翌々月下旬公表で速報性を優先
  • 第2次速報: 20室未満の小規模施設も含む全数ベース。さらにその翌月下旬に公表
  • 使い分け: 月次の料金・販売経路の調整には第1次速報、年間まとめや大型投資の判断には第2次速報
  • 修正の頻度: 第2次速報後にも年次確定値で小幅な修正が入ることがある。年単位の比較には確定値を使う
関連記事:速報値と確定値の修正幅については月別速報vs確報の修正幅と意思決定タイミングで解説しています。速報値がどの程度ぶれるかの感覚を持っておくと、月次の判断がしやすくなります。

Q.よくある質問

Q1. 第1次速報の5,063万人泊はどこまで信頼できますか?

速報推計値です。確定値は第2次速報(6月下旬)で出ます。月次の料金調整や販売判断には十分使えますが、年間まとめや大型投資の判断材料には第2次速報を待ってください。なお3月分は5月29日に第2次速報で5,441万人泊に確定しています。

Q2. 中国の宿泊が前年比52.6%減と半減したのはなぜですか?

確定した3月の国籍別で中国は99万7,320人泊(-52.6%)でした。団体旅行と航空便の回復が途上にあり、前年の高水準からの反動も重なっています。ただし台湾192.8万・香港57.3万を含む東アジア全体では引き続き大きな市場で、4月の訪日でも韓国・台湾が二桁増で全体を支えています。

Q3. 全タイプ平均59.7%を自施設の目標にしてよいですか?

目標にはしないでください。ビジネス74.3%、シティ72.5%、リゾート54.5%、旅館40.3%、簡易宿所23.3%とタイプごとに大きく異なります。比べるべきは同タイプの平均値であり、全体平均との比較では立地や商品力の課題を見誤ります。

Q4. 民泊(住宅宿泊事業)はこの統計に含まれますか?

含まれません。民泊は別途、観光庁民泊制度ポータルで「住宅宿泊事業の宿泊実績」として公表されます。民泊と宿泊業法上の施設の枠組みの違いは旅館業法と民泊新法の違い住宅宿泊事業法 年間180日上限の実務運用で整理しています。

Q5. 層化基準が変わった後、前年同月比はどこまで使えますか?

厳密な時系列比較には使えません。観光庁の接続係数や注記を確認しつつ、当面は「伸びている/横ばい」程度の方向感にとどめてください。新基準で12か月分が揃う2027年以降、信頼できる前年同月比が利用可能になります。

Q6. 旅館の稼働率40.3%は構造的な天井ですか?

構造的な要因が大きいです。1泊2食・高単価のモデルはビジネスホテルのような連泊・出張需要を取り込みにくく、稼働率の天井が低くなります。一方、温泉地では桜・紅葉・年末年始に需要が偏り、月ごとの振れ幅はビジネスホテルより大きくなります。年間40%台でもADRが高ければ収益性は成り立つ構造です。