Q.2026年5月の第1次速報、何が起きていた?
2026年5月の延べ宿泊者数は5,339万人泊、前年同月比4.8%減でした(観光庁『宿泊旅行統計調査』第1次速報、2026年7月6日公表)。自館の5月実績を隣に置く前に、全体の下げが何で起きたかを分けておきます。日本人は3,957万人泊(-1.4%)と底堅く、下げの大半は外国人1,382万人泊(-13.4%)によるものです。客室稼働率は全タイプ平均60.6%と前月から上がっており、前年割れの主因は外国人客に絞られます。
外国人だけが二桁で減った理由
- 中国の半減: 訪日の中国は5月-60.4%(JNTO)。宿泊面でも4月確定で中国は-55.0%と、訪日・宿泊の両方で同じ落ち込みが出た
- 前年5月の反動: 前年5月は訪日が過去最高圏の水準。その高い前年と比べるため、外国人宿泊(-13.4%)の下げ幅が大きく見える
- 日本人は底堅い: 日本人宿泊は-1.4%にとどまり、外国人より落ち込みが浅い。国内需要が全体を下支えしている
- 稼働率は前月から上昇: 全タイプ平均60.6%は4月確定の59.1%から1.5ポイント上がった。客足が引いたわけではない
- 外国人比率は25.9%: 4月確定の31.3%から下がった。5月は日本人の比重が戻る季節でもある
Q.施設タイプ別の客室稼働率は?
タイプ別に並べると、ビジネスホテル74.1%・シティホテル72.6%と、旅館41.7%・簡易宿所28.9%のあいだに30ポイント以上の開きがあります。自館がビジネスホテルなら、比べる相手は全体平均60.6%ではなく74.1%です。5月で目を引くのは前年同月差の向きで、ビジネス・シティが前年割れの一方、リゾートと旅館は前年を上回りました。
| 施設タイプ | 2026年5月 | 2026年4月(確定) | 前年同月差 | 5月稼働率の視覚比較 |
|---|---|---|---|---|
| ビジネスホテル | 74.1% | 74.1% | -1.6pt | |
| シティホテル | 72.6% | 71.7% | -2.4pt | |
| 全タイプ平均 | 60.6% | 59.1% | -1.1pt | |
| リゾートホテル | 59.3% | 53.7% | +5.0pt | |
| 旅館 | 41.7% | 37.7% | +3.2pt | |
| 簡易宿所 | 28.9% | 24.6% | -0.8pt |
タイプ別に何が起きているか
- ビジネスホテル(74.1%): 出張と個人旅行で高水準を保つが、前年同月差は-1.6ポイント。稼働の天井に近く、稼働を追うより単価を引き上げる局面
- シティホテル(72.6%): 都市部のイベントと外国人に支えられる。前年同月差-2.4ポイントは、都市部インバウンドの息切れを映す
- リゾートホテル(59.3%): 前年同月差+5.0ポイントと最も伸びた。国内レジャーと初夏の旅行が押し上げた
- 旅館(41.7%): 前年同月差+3.2ポイント。1泊2食の高単価型は稼働の天井が低いが、5月は前年を上回った
- 簡易宿所(28.9%): ゲストハウスやカプセルが中心。外国人利用が多く、都市部インバウンドの減少を受けやすい
Q.外国人-13.4%の中身と、地方と都市の差は?
外国人の増減は、いまは中国次第です。JNTOの5月推計値で中国は313,000人(前年同月比-60.4%)、4月の-56.8%からさらに下振れしました。一方で韓国+15.2%・台湾+14.6%・米国+7.0%と伸び、19市場が5月として過去最高です。全体の訪日は356万人(-3.6%)で、中国以外が下支えする構図がはっきり出ています。
| 主要市場 | 訪日外客数(2026年5月) | 前年同月比 | メモ |
|---|---|---|---|
| 韓国 | 951,300人 | +15.2% | 5月として過去最高 |
| 台湾 | 616,800人 | +14.6% | 5月として過去最高 |
| 米国 | 333,700人 | +7.0% | 5月として過去最高 |
| 中国 | 313,000人 | -60.4% | 4月(-56.8%)からさらに下振れ |
| 香港 | 207,900人 | +7.7% | 東アジアでは堅調 |
宿泊の国籍別でも中国が抜ける(4月確定)
国籍別の内訳は第1次速報には載らず、同時公表の4月確定(客室数20室以上の集計)で見ます。上位は米国177.5万人泊(-6.1%)・台湾176.4万人泊(+11.1%)・韓国143.1万人泊(+11.2%)で、中国は107.2万人泊(-55.0%)。訪日でも宿泊でも中国が抜け、韓国・台湾が埋める同じ動きです。ベトナム(+44.2%)・ロシア(+37.4%)・インド(+16.5%)のような遠距離市場が二桁で伸びており、団体依存の低い市場の底上げが進んでいます。4月の訪日動向は2026年4月 訪日外客数 速報解説で扱っています。
Q.同時に出た4月確定値・2025年確定値は?
7月6日は3つが同時に公表されました。5月分 第1次速報のほか、4月分が第2次速報で確定し、2025年(暦年)も年間確定値になりました。速報がどこまで動くかを、この2つで確かめておきます。
4月は第1次速報から下方修正
4月の延べ宿泊者数は、5月29日の第1次速報5,063万人泊から、今回の第2次速報で4,911万人泊(-7.2%)へ下がりました。外国人も1,573万人泊から1,536万人泊(-10.8%)、客室稼働率は59.7%から59.1%へ、いずれも下方修正です。第1次速報は客室数20室以上を集計し、第2次速報で小規模施設を含む全数に広げて再集計するため、この幅の修正が入ります。
一方、2025年の年間確定値は逆に上振れしました。延べ6億6,111万人泊(前年比+0.3%)、外国人1億7,992万人泊(+9.4%)、客室稼働率61.6%で確定し、2月公表の速報値(延べ6億5,348万人泊)から上方修正されています。外国人延べは2019年比で+55.6%、外国人比率は27.2%です。速報は下にも上にも動くという前提で、月次と年次を使い分けます。
Q.地方都市のビジネスホテルは、いま何を決めるか?
- 同タイプ・同立地で照合: 全国のビジネスホテルは74.1%。ただし都市部の高稼働を含む全国値なので、規模と立地の近い水準で見る。自館が同タイプ平均から10ポイント以上低ければ、販売経路か商品力に課題がある
- 外国人依存度で読み分ける: 外国人減は三大都市圏(-14.6%)に集中し、地方部は-2.3%と浅い。中国団体の薄い地方都市は影響が限られ、日本人延べ(-1.4%)が下支えする
- 中国の回復を前提に置かない: 訪日の中国は5月-60.4%。戻りを織り込まず、韓国・台湾・米国の個人客と国内出張・レジャーで7〜8月を組む
- 稼働より単価を動かす: ビジネスホテルは74%前後で稼働の天井に近い。夏は稼働を追うより、曜日別・イベント日の単価(ADR)を引き上げる余地を探る
- 資料に注記を定型化: 経営会議資料やKPIに宿泊統計を引く際、「2026年は層化基準変更で前年同月比は参考値」の一文を定型で添える
6月分速報・5月分第2次速報(ともに7月末)までにやること
| やること | 締切 | 担当 |
|---|---|---|
| 自館の5月実績(稼働率・ADR・市場別ミックス)を施設タイプ別平均と突合 | 2026年7月15日 | 予約/レベニュー |
| 夏季(7-8月)料金の最終確定。韓国・台湾・国内を主軸に、中国減を前提に再設計 | 2026年7月20日 | レベニュー/マーケ |
| 前年同月比は参考値として扱う旨を経営会議資料の定型注記に追加 | 2026年7月中 | 経営企画 |
| 5月分 第2次速報(7月31日公表)で稼働率の確定を確認 | 2026年7月末 | 経営企画/予約 |
| 6月分 第1次速報(7月31日予定)を24時間以内に経営会議資料に反映 | 2026年8月上旬 | 経営企画 |
Q.公表スケジュールと第1次・第2次速報の使い分けは?
宿泊旅行統計は、1回の公表で新しい月の第1次速報と、1つ前の月の第2次速報が同時に出ます。今回は5月分の第1次速報と4月分の第2次速報が同じ7月6日に並びました。自社の料金改定サイクルや経営会議のタイミングに合わせて使います。
| 対象月 | 第1次速報 | 第2次速報 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月分 | 4月30日(公表済) | 5月29日(確定) | 桜シーズンの確定 |
| 2026年4月分 | 5月29日(公表済) | 7月6日(確定) | GW・春の確定 |
| 2026年5月分 | 7月6日(今回) | 7月31日(予定) | 初夏・夏商戦前の動向 |
| 2026年6月分 | 7月31日(予定) | 8月下旬(予定) | 梅雨・夏の入口 |
第1次速報と第2次速報の違い
- 第1次速報: 客室数20室以上の施設を集計。速報性を優先して先に公表(具体日は上表)
- 第2次速報: 20室未満の小規模施設も含む全数ベース。第1次速報の数週間後に公表され、確定に近づく
- 使い分け: 月次の料金・販売経路の調整には第1次速報、年間まとめや大型投資の判断には確定値
- 修正の向き: 直近では4月が下方、2025年通年は上方に動いた。向きは一定でないため、確定値で年単位を締める
Q.よくある質問
Q1. 5月の5,339万人泊はどこまで信頼できますか?
第1次速報の推計値です。確定に近い第2次速報は2026年7月31日に出ます。月次の料金調整や販売判断には十分使えますが、年間まとめや大型投資の判断材料には第2次速報を待ってください。今回、4月分は第1次速報の5,063万人泊から第2次速報で4,911万人泊(-7.2%)へ下方修正されました。速報値がこの程度動く前提で読んでください。
Q2. 外国人が-13.4%なのに、地方の宿でそこまで実感がないのはなぜですか?
外国人の減りが都市部に偏っているためです。同時公表の4月確定では、外国人延べ宿泊者数は三大都市圏が前年同月比-14.6%、地方部が-2.3%でした。中国の団体客に支えられていた都市部ほど落ち込みが大きく、地方は浅くなります。5月の日本人延べ宿泊は-1.4%と底堅く、国内需要が地方の稼働を下支えしています。
Q3. 全タイプ平均60.6%を自館ビジネスホテルの目標にしてよいですか?
目標にはしないでください。ビジネスホテルは74.1%が同タイプの平均値です。全体60.6%と比べると立地や商品力の課題を見誤ります。さらに全国のビジネスホテル平均には都市部の高稼働(4月確定で東京のビジネスホテルは85.8%)が含まれるため、地方都市では規模と立地の近い水準で読んでください。
Q4. 中国の訪日が-60.4%ですが、いつ戻りますか?
時期は読み切れません。JNTOの2026年5月推計値で中国は313,000人(前年同月比-60.4%)、4月の-56.8%からさらに下振れしています。回復を前提に置かず、韓国(+15.2%)・台湾(+14.6%)・米国(+7.0%)の個人客と国内出張・レジャーで夏を組むのが安全です。19市場が5月として過去最高で、中国以外が全体を下支えしています。
Q5. 4月が5,063万から4,911万に下方修正されたのはなぜですか?
第1次速報(客室数20室以上を集計)から第2次速報(20室未満を含む全数ベース)へ切り替わり、回収した調査票が増えて再集計されたためです。速報値は上下どちらにも動きます。今回同時に出た2025年の年間値は逆に、速報の6億5,348万人泊から確定値6億6,111万人泊へ上方修正されました。
Q6. 同時に出た2025年の年間確定値は何が確定しましたか?
延べ宿泊者数6億6,111万人泊(前年比+0.3%)、外国人延べ1億7,992万人泊(+9.4%)、客室稼働率61.6%で確定しました。外国人延べは2019年比で+55.6%です。2026年2月公表の速報値から延べ・外国人とも上方修正され、外国人比率は27.2%になりました。年間の実力値として、自館の2025年実績と突き合わせる基準に使えます。
