Q.旅行・観光消費動向調査とは?
観光庁『旅行・観光消費動向調査』は、日本国内に居住する人の旅行支出を四半期ごとに推計する国の基幹統計です。2026年1-3月期の第1次速報は2026年5月20日に公表されました。本記事で扱うのはこのうち日本人の国内旅行で、宿泊旅行と日帰り旅行に分けて、消費額・延べ旅行者数・1人1回当たり単価を集計します。
調査の基本設計
- 対象: 日本国内に居住する人の国内旅行(宿泊旅行・日帰り旅行)
- 集計区分: 消費額・延べ旅行者数・1人1回当たり旅行単価
- 公表単位: 四半期ごとに第1次速報→第2次速報→確報の順で更新
- 対象外: 訪日外国人の消費(別調査の訪日外国人消費動向調査で集計)
訪日消費動向調査との違い
同じ観光庁の四半期統計でも、訪日外国人消費動向調査は空港で出国する外国人へのサンプリングで訪日客の支出を測る別の調査です。インバウンドの数字を追うときはそちらを、日本人の国内需要を追うときは本調査を使い分けます。国内の宿泊需要は外国人の増減と独立して動くため、自館の客層が国内中心なら本調査の単価動向が直接効きます。
Q.消費額5兆9,136億円の中身は?
2026年1-3月期の国内旅行消費額は5兆9,136億円(前年同期比+4.8%)です。内訳は宿泊旅行が4兆8,210億円(+5.4%)、日帰り旅行が1兆926億円(+2.5%)で、総額の8割を宿泊旅行が占めます。伸び率も宿泊旅行が日帰りを上回り、宿泊側が市場の伸びを引っ張りました。
消費額の宿泊・日帰り内訳
読み方:バーの長さは消費額の比率で、宿泊旅行を100とした相対値です。宿泊旅行が総額の約8割を占め、宿泊事業者は国内旅行消費の主受け皿に位置します。
消費額が伸びた要因
消費額の前年同期比+4.8%に対し、延べ旅行者数は+0.4%にとどまります。つまり人数の伸びはわずかで、消費額を押し上げたのは1人1回当たり単価の上昇です。単価の前年比は全体で+4.4%、宿泊で+3.9%。物価上昇局面で宿泊料金・交通費・飲食費が上がり、1回の旅行で使う金額が増えた構図が読み取れます。
Q.1人1回当たり旅行単価はどう見る?
1人1回当たり旅行単価は、全体で49,133円(前年同期比+4.4%)。宿泊旅行は71,414円(+3.9%)、日帰り旅行は20,672円(+3.5%)です。宿泊と日帰りで単価が3.5倍ほど開くため、宿泊客1人の取り込みが消費額に効きます。
| 区分 | 1人1回当たり単価 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 全体 | 49,133円 | +4.4% |
| 宿泊旅行 | 71,414円 | +3.9% |
| 日帰り旅行 | 20,672円 | +3.5% |
単価に含まれるもの
観光庁の注記は、単価の中身を次のように定義しています。宿泊費だけでなく、移動・飲食・買物・娯楽までを含む「1回の旅行で使う総額」である点を押さえると、自館の客単価との比較がぶれません。
1人1回当たり旅行支出(旅行単価)には、参加費、交通費、宿泊費、飲食費、買物代、娯楽等サービス費等が含まれる。 観光庁 旅行・観光消費動向調査 2026年1-3月期 第1次速報 注記より
宿泊単価71,414円の使い方
この71,414円は宿泊費だけでなく交通費・飲食費・買物代まで含む1回の旅行総額です。自館の宿泊単価(室料+館内消費)と直接は比べられませんが、旅行者が1回の宿泊旅行に充てる予算の上限として読めます。室料を上げた分だけ旅行全体の予算が圧迫されれば他の費目が削られるため、館内の飲食・物販まで含めて旅行者の財布をどう取りに行くかの設計指標になります。
Q.延べ旅行者数と日帰りの前年割れは?
延べ旅行者数は全体で1億2,036万人(前年同期比+0.4%)。宿泊旅行は6,751万人(+1.4%)と伸びた一方、日帰り旅行は5,285万人(-0.9%)で前年を下回りました。人数の伸びは宿泊が支え、日帰りは数を減らしています。
日帰りの数が減って宿泊の数が増えた動きは、宿泊事業者には追い風です。日帰りで済ませていた旅行者の一部が宿泊を選び、1回の旅行に使う金額が大きい層へ移っている可能性があります。ただし第1次速報の段階で確定はせず、第2次速報・確報での修正幅を見て判断します。
Q.第1次速報という数字の性格は?
今回の数字は第1次速報で、回収サンプルの一部から推計した暫定値です。観光庁は同じ四半期について第1次速報→第2次速報→確報の順に数字を更新するため、速報値は後続の公表で修正されることがあります。
更新スケジュール
- 2026年1-3月期 第1次速報: 2026年5月20日 公表(今回)
- 2026年1-3月期 第2次速報: 2026年7月31日 公表予定
- 2026年4-6月期 第1次速報: 2026年8月19日 公表予定
速報を使うときの前提
- 推計値である: サンプル調査からの推計で、母集団推計の幅がある
- 修正が入る: 第2次速報・確報で消費額・人数・単価が小幅に動くことがある
- 対象は日本人の国内旅行: 訪日外国人の消費は含まない別集計
Q.宿泊事業者への示唆は?
- 単価主導の市場を前提に値付けする: 人数+0.4%・単価+4.4%。客数を増やすより1回当たりの支出を取りに行くほうが消費額に効く局面
- 宿泊単価71,414円を予算上限として読む: 室料を上げるほど他費目が圧迫される。館内飲食・物販まで含めて旅行者の財布を取りに行く
- 日帰り→宿泊の流れを取り込む: 日帰りの数が減り宿泊が増えた。日帰り圏の客に宿泊を選ばせる近場連泊・夕食付きプランを設計
- 付帯売上で単価を底上げ: 単価には飲食費・買物代・娯楽等が含まれる。館内消費を伸ばせば全国平均との差を詰められる
- 確報待ちの場面を見極める: 傾向把握は速報で十分。予算・IRは第2次速報(7月31日)・確報の確定値を待つ
次の第2次速報(2026年7月31日)までにやること
| やること | 締切 | 担当 |
|---|---|---|
| 自館の宿泊客単価(室料+館内消費)を全国平均71,414円と突合し、付帯売上の取りこぼしを点検 | 2026年6月中旬 | レベニュー/経営企画 |
| 日帰り圏の客向けに近場連泊・夕食付き宿泊プランを設計し、日帰り→宿泊の転換導線を整備 | 2026年6月末 | マーケ/予約 |
| 館内飲食・物販・体験の単価表を見直し、宿泊単価に積み増す付帯メニューを追加 | 2026年7月中旬 | F&B/フロント |
| 第2次速報(7月31日)公表後に自館実績と再突合し、4-6月期 第1次速報(8月19日)の備えを更新 | 2026年8月上旬 | 経営企画 |
次回公表までに揃えておく内部データ
- 自館の宿泊客1人当たり単価(室料+館内消費、過去4四半期)
- 宿泊客と日帰り客(立ち寄り・日帰り利用)の構成比
- 飲食・物販・体験の付帯売上単価
- 前四半期までの観光庁単価と自館単価のギャップ
これらを揃えておくと、次の速報が出た瞬間に自館の位置づけと値付けの余地が見えます。
Q.よくある質問
Q1. この調査は訪日外国人の消費も含みますか?
含みません。本記事が扱う旅行・観光消費動向調査は日本人の国内旅行の消費を集計したものです。訪日外国人の消費は別の訪日外国人消費動向調査で集計され、2026年1-3月期の訪日分は訪日消費動向 2026年Q1速報で扱っています。
Q2. 消費額が+4.8%なのに延べ旅行者数が+0.4%なのはなぜですか?
1人1回当たり旅行単価が+4.4%上がったためです。消費額は「延べ旅行者数×単価」で決まるため、人数がほぼ横ばいでも単価が上がれば消費額は伸びます。2026年1-3月期は人数でなく単価が市場を押し上げた四半期でした。
Q3. 日帰り旅行が前年割れしたのは悪い兆候ですか?
単純な悪化とは言えません。日帰りの延べ旅行者数は-0.9%でしたが、日帰り単価は+3.5%、消費額は+2.5%で増えています。同時に宿泊旅行の延べ旅行者数が+1.4%伸びており、日帰りで済ませていた層の一部が宿泊へ移った可能性があります。宿泊事業者にはむしろ追い風と読めます。
Q4. 宿泊旅行の単価71,414円は自館の宿泊単価と比べられますか?
直接の比較はできません。この71,414円は宿泊費だけでなく交通費・飲食費・買物代・娯楽等サービス費まで含む「1回の宿泊旅行で使う総額」です。自館の室料単価とは範囲が違うため、館内飲食・物販まで含めた1回の宿泊あたり消費額と並べると近い比較になります。
Q5. 引用するときの注意点は?
「2026年1-3月期 第1次速報」であることを明記してください。第1次速報は第2次速報・確報で修正されることがあります。出典は「観光庁 旅行・観光消費動向調査 2026年1-3月期(第1次速報)」のように期と版を添えるのが標準形式です。
