白書

令和7年版観光白書 統計編の読み方 ― 訪日6,000万人時代に向けた基礎データ整理

公開日: 2026-04-10 最終更新: 2026-04-20 読了目安: 約13分 著者: BB宿泊ラボ 編集部
結論(3行)
結論
令和7年版観光白書(2025年6月公表)は、2024年実績で訪日3,687万人・消費8.1兆円(いずれも過去最高)を確定。2030年目標(訪日6,000万人・消費15兆円)に対し訪日61%・消費54%の進捗で「順調」。
経営インパクト
宿泊費は1人1回あたり7.6万円(構成比33.5%、2019年比+3pt)。ホテルADR上昇で収益性向上の機会だが、「高くなった」との顧客評価も併存 — 価格戦略と満足度の両立が2026年度の論点。
意思決定タイミング
令和8年版白書は2026年6月中旬に第5次計画初年度進捗として公表予定。令和8年度事業計画は本統計編(令和7年版)を基礎データとして2026年Q1中に策定を推奨。
要点サマリー(稟議書に貼れる数値)
2024年 訪日外国人
3,687万人(過去最高)
※1 JNTO / 観光白書(2030年目標6,000万人)
2024年 訪日消費額
8.1兆円(過去最高)
※2 観光庁 消費動向調査(2030年目標15兆円)
1人1回旅行支出
22.7万円(2019年比+46%)
※2 観光庁 消費動向調査
地方部 外国人延べ宿泊
5,727万人泊(2019年比+33%)
※3 観光庁 宿泊旅行統計
※1 JNTO訪日外客統計 / 観光白書 令和7年版(取得日 2026-04-20) ※2 観光庁 訪日外国人消費動向調査(取得日 2026-04-20) ※3 観光庁 宿泊旅行統計調査(取得日 2026-04-20)
要約(5行)
目次
  1. 観光白書とは ― 法定根拠と統計編の位置づけ
  2. 令和7年版の章構成 ― 統計編4本柱
  3. 訪日外国人統計 ― 3,687万人と6,000万人目標までの距離
  4. 宿泊旅行統計 ― 地域別構成と地方分散の進捗
  5. 消費動向 ― 市場別単価と費目別構成
  6. 基本計画KPIとの照応 ― 2024年実績で見える進捗と課題
  7. 事業者・自治体での白書活用法
  8. FAQ ― 白書活用で迷う5つの論点

観光白書とは ― 法定根拠と統計編の位置づけ

「観光白書」は、観光立国推進基本法 第8条に基づき、政府が毎年国会に提出する年次報告書です。正式名称は「観光の状況及び政府が観光立国の実現に関して講じた施策に関する年次報告」(通称「観光白書」)。

観光白書は通常、以下2部構成で公表されます。

令和7年版は2025年6月13日に閣議決定・国会提出されました。データの基準時点は基本的に2024年(令和6年)実績で、2025年第1四半期の主要動向にも触れられています。

白書統計編の独自性 ― なぜ各統計を直接見るだけでは不十分か

JNTO訪日外客統計・観光庁宿泊旅行統計・訪日外国人消費動向調査は、それぞれ単体でも公表されています。それでも観光白書統計編を読む価値があるのは、以下の理由からです。

2024年 訪日外国人
3,687
万人(過去最高)
2024年 訪日消費額
8.1
兆円(過去最高)
2030年目標まで
62
% 進捗(訪日)

令和7年版の章構成 ― 統計編4本柱

第1章
第1章 観光の動向

2024年の観光業全体の動きを俯瞰。訪日外国人旅行者数の過去最高更新、国内旅行の本格回復、宿泊業の人手不足等の主要トピックを集約。

読みどころ: 全体像をつかむ目次として最初に通読。

第2章
第2章 国際観光の動向

JNTO訪日外客統計を中心に、市場別(国・地域別)の訪日動向を詳細に分析。LCC路線・クルーズ船寄港・査証制度緩和等の政策的論点も含む。

読みどころ: 市場別の特徴比較表(国別シェア・前年比・季節性)が一覧化されている。

第3章
第3章 国内観光の動向

日本人国内旅行統計(観光庁)に基づき、宿泊旅行・日帰り旅行の動向を整理。リバウンド需要・ワーケーション・教育旅行の回復状況等。

読みどころ: 国内旅行は訪日に比べデータ可視化が薄い領域だが、本章で年次トレンドを追える。

第4章
第4章 観光産業の動向

宿泊業・旅行業・運輸業の事業者ベースの統計。宿泊旅行統計調査、旅行業取扱状況、貸切バス事業統計等を集約。

読みどころ: 宿泊事業者にとって最も実務直結する章。客室稼働率の地域別・タイプ別データが充実。

訪日外国人統計 ― 3,687万人と6,000万人目標までの距離

令和7年版観光白書 第2章で確定された主要数値を整理します。

指標 2024年実績 2019年(コロナ前)比 2030年目標 進捗率
訪日外国人旅行者数 3,687万人 +15.6% 6,000万人 61.4%
訪日外国人旅行消費額 8兆1,257億円 +68.7% 15兆円 54.2%
1人1回あたり旅行支出 22.7万円 +45.9% 25万円 90.8%
地方部延べ宿泊者数(外国人) 5,727万人泊 +33.4% 8,500万人泊 67.4%

市場別の特徴 ― 上位市場の構成変化

2024年の上位市場は、前年(2023年)から構成順位が一部入れ替わりました。

順位 市場 2024年訪日数 シェア 備考
1位 韓国 881万人 23.9% 近距離・LCC・週末訪日が主体
2位 中国本土 698万人 18.9% 2019年比でほぼ回復、団体ツアー復活
3位 台湾 604万人 16.4% 過去最高更新
4位 香港 268万人 7.3% 地方分散先行(北海道・東北)
5位 米国 272万人 7.4% 長期滞在・高単価市場
📌 2025年以降の市場別動向

2025年第1四半期(令和7年版白書の追加データ)では、中国本土が引き続き急回復し、米国・豪州・欧州主要市場の長期滞在客が増加傾向。短距離4市場(韓中台港)合計シェアは66.5%とやや低下し、市場ポートフォリオが多様化しつつあります。

宿泊旅行統計 ― 地域別構成と地方分散の進捗

令和7年版観光白書 第4章で公表された2024年の延べ宿泊者数は約5億9,400万人泊(過去最高)。うち外国人延べ宿泊者数は1億5,899万人泊で、これも過去最高を更新しました。

地域別構成 ― 三大都市圏 vs 地方部

地域区分 2024年延べ宿泊者数 うち外国人 外国人比率 2019年比(外国人)
三大都市圏(東京・大阪・京都・名古屋・福岡等) 3億5,200万人泊 1億172万人泊 28.9% +18.7%
地方部 2億4,200万人泊 5,727万人泊 23.7% +33.4%
全国合計 5億9,400万人泊 1億5,899万人泊 26.8% +23.4%

注目すべきは外国人延べ宿泊者数の伸び率が地方部(+33.4%)で都市部(+18.7%)を上回ったこと。地方分散政策(オーバーツーリズム対応)が定量的に進捗していることを示します。

客室稼働率 ― 施設タイプ別の格差

施設タイプ 2024年 客室稼働率 2019年比 備考
シティホテル 79.5% +5.7pt 都市部の高稼働継続
ビジネスホテル 75.8% +3.2pt 出張需要の本格回復
リゾートホテル 59.7% +3.5pt 季節性が大きい
旅館 42.3% +1.8pt 1人1泊単価重視で稼働率は低め
簡易宿所 37.6% +5.1pt 外国人比率が高く、市場依存

宿泊旅行統計の用語と推計式の基本については、宿泊旅行統計の読み方 ― 用語・計算式・施設タイプ・三大都市圏を整理で詳述しています。速報・確報の違いは宿泊統計 速報・第2次速報・確報・修正の違い ― 4段階リリースの読み方を参照してください。

消費動向 ― 市場別単価と費目別構成

令和7年版観光白書 第2章および第4章で公表された2024年の訪日外国人消費動向。1人1回あたり旅行支出の市場別ランキングを整理します。

順位 市場 1人1回支出 2019年比 主な特徴
1位 豪州 35.4万円 +38.2% 長期滞在(平均13.7泊)、スキーシーズン集中
2位 スペイン 32.7万円 +42.1% 長距離フライト・長期滞在・周遊型
3位 イタリア 31.2万円 +45.7% 長期滞在・FIT中心
4位 米国 29.5万円 +30.4% 大型市場・ビジネス含む
5位 中国本土 25.6万円 +12.8% 買物単価が高い、団体回復

費目別構成 ― 宿泊費の割合

2024年の訪日外国人1人1回あたり支出の費目別内訳(全市場平均22.7万円ベース):

📌 宿泊費の割合上昇は何を意味するか

2019年に比べて宿泊費の構成比が約3pt上昇しています。これはホテルの平均客室単価(ADR)上昇が主因で、宿泊事業者にとっては収益性向上の機会。一方、消費者からは「日本の宿が高くなった」との声も増えており、価格戦略と顧客満足度のバランスが今後の論点です。

第5次観光立国推進基本計画(2026-2030年度)の主要KPIと、令和7年版白書での2024年実績の対比を整理します。

KPI 2024年実績 2030年目標 進捗 達成見通し
訪日外国人旅行者数 3,687万人 6,000万人 61.4% 順調
訪日外国人消費額 8.1兆円 15兆円 54.2% 順調
1人1回旅行支出 22.7万円 25万円 90.8% 到達射程
地方部延べ宿泊(外国人) 5,727万人泊 8,500万人泊 67.4% 順調
日本人国内旅行消費額 25.1兆円 35兆円 71.7% 順調

第5次基本計画の柱別解説については、第5次観光立国推進基本計画 ― 2026-2030年度の方向性と数値目標、地方分散戦略の実装論点については第5次観光立国推進基本計画 柱2 ― 地方分散とオーバーツーリズム対策の具体施策で詳述しています。

事業者・自治体での白書活用法

1. 宿泊事業者: 経営計画策定時の市場前提

2. 自治体: 観光振興計画の数値根拠

3. OTA・旅行業者: 商品設計の市場根拠

実務チェックリスト(期限・担当付き)
やること期限担当
令和7年版観光白書 PDFを観光庁公式からダウンロードし、経営企画で共有保管 2026年Q1中 経営企画 / 総務
第4章(観光産業の動向)から自社施設タイプの全国稼働率を抽出、自社実績と比較 2026年Q1中 経営企画 / 支配人
第2章 市場別1人1回支出を参照し、自社のターゲット市場別ADR/1泊単価の目標を再設定 2026年Q2 レベニューマネジメント
地方部の外国人延べ宿泊+33.4%を踏まえ、地方拠点マーケティング予算の配分見直し 2026年Q2 マーケティング / 営業
補助金申請書・稟議書の現状分析に白書統計(出典明記)を引用する雛形を整備 2026年Q2 経営企画 / 申請担当
令和8年版白書(2026年6月公表予定)の取得・読み込み段取り 2026年6月末 経営企画

FAQ ― 白書活用で迷う5つの論点

観光白書はどこで入手できますか?

観光庁公式サイトの「観光白書」ページでPDFが無料公開されています。冊子版は政府刊行物センターで購入可能(税込3,300円程度)。多くの図書館にも所蔵されています。

白書はExcel・CSV形式での生データ提供は行っていません。元統計(JNTO・宿泊統計・消費動向調査)からダウンロードする必要があります。

令和7年版と過去の白書を比較するときに注意すべき点は?

3点あります。①集計対象の宿泊統計が2018年に対象施設拡大されたため、それ以前の統計と直接比較できない場合がある。②訪日外国人消費動向調査は2018年に調査票を改訂しており、それ以前の費目別データとは比較に注意が必要。③コロナ期(2020-2022年)のデータは特殊事象として扱い、トレンド分析からは外すか別系列とするのが推奨。

白書の数値と他の観光関連レポート(JTB総研・日本政策投資銀行等)の数値が異なるのはなぜですか?

調査対象・推計手法・調査時期が異なることが主因です。観光白書の数値は政府統計(JNTO・観光庁)の確報に基づきますが、民間レポートは独自調査やサンプル調査を含むため数値が乖離します。

政策議論・補助金申請等の公式文書には観光白書の数値、市場分析・レポート作成には民間調査も併用、と使い分けるのが一般的です。

白書統計編は英語版もありますか?

はい、観光庁が「White Paper on Tourism in Japan」として英語要約版(60-80ページ程度の縮約版)を毎年公表しています。数値・グラフは日本版と同じですが、本文解説は要約された英訳になっています。インバウンド向けセールス資料・海外プレゼンに活用可能です。

来年(令和8年版)の白書はいつ頃公表されますか?

例年、観光白書は6月中旬に閣議決定・国会提出されます。令和8年版は2026年6月中旬の公表が見込まれます。データの基準時点は2025年実績となります。第5次観光立国推進基本計画(2026年度開始)初年度の進捗が初めて公表される白書として、特に注目されます。

出典(2026-04-20 取得)
※ 本記事の数値は令和7年版観光白書(2025年6月公表)の確定値に基づきます。2025年以降の数値は速報・暫定値が含まれる場合があるため、各統計の最新公表を併せてご確認ください。市場別単価のランキングは1人1回旅行支出ベースで、サンプル数の少ない市場(順位下位)は変動幅が大きい点にご留意ください。
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