Q.この計画はどんな位置付け?

観光立国推進基本計画は、観光立国推進基本法(平成18年法律第117号)第10条に基づき、政府が観光立国の実現に関する基本的な計画を定めるものです。計画期間は概ね3〜5年で、閣議決定により正式に成立します。

政府は、観光立国の実現に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、観光立国の実現に関する基本的な計画(以下「観光立国推進基本計画」という。)を定めなければならない。 — 出典: 観光立国推進基本法 第10条第1項

第5次計画は、第4次計画(2023年3月31日閣議決定、対象期間 2023-2025年度)の次期計画にあたります。2025年度までの目標期間が満了することを受け、2026年度以降の政策フレームを定めるものです。

計画の階層

  • 上位: 観光立国推進基本法(法律)
  • 本計画: 観光立国推進基本計画(閣議決定)
  • 下位: 観光白書(年次報告)、各省庁の単年度予算・補助金制度

Q.第4次計画の到達点と積み残しは?

第4次計画(2023年3月31日閣議決定)は、コロナ後の回復期を対象として策定されました。主要な目標と実績(観光庁・JNTO公表値ベース)は以下の通りです。

指標第4次 目標2024年実績評価
訪日外国人旅行者数2025年 4,000万人超、
2030年 6,000万人
約3,687万人(JNTO速報)
訪日消費額2030年 15兆円約8.1兆円(観光庁推計)
国内旅行消費額2030年 22兆円継続推計中
地方部の外国人宿泊者数2030年 3,200万人泊拡大傾向

訪日数・消費額は回復が早く、第4次計画の中間段階で既に想定を上回るペースで推移しています。一方、地方分散・持続可能性・人手不足の3領域は課題が残ったまま第5次計画に引き継がれる形となっています。

Q.政府が掲げる数値目標は?

第5次計画では、第4次で示された2030年目標を基軸にしつつ、インバウンドの成長を踏まえた数値見直しが行われています。以下は公表資料に基づく主要KPIです。

訪日外国人旅行者数
6,000万人
目標年度: 2030年 / 2024年実績: 約3,687万人
訪日消費額
15兆円
目標年度: 2030年 / 2024年実績: 約8.1兆円
訪日リピーター数
2,400万人
目標年度: 2030年
日本人国内旅行消費額
22兆円
目標年度: 2030年
数値の扱い:上記は2026年4月19日時点の公表ベース。最終的な確定数値・補助指標は観光庁公式ページのPDFで確認してください。

Q.計画の5つの柱は?

第4次計画から継承される基本的な政策の軸は以下の5本です。第5次計画では各柱の具体施策が更新される想定です。

01
高付加価値化
消費単価の向上、上質な観光地づくり、富裕層誘致
02
地方分散
オーバーツーリズム対策、地方誘客、交通アクセス整備
03
人手不足対策
省力化投資、人材育成、賃上げ、外国人材受入
04
持続可能性
環境・文化・地域社会の保全、住民との共生
05
観光DX
データ連携、CRM、マーケティング高度化、業務自動化

Q.章構成と読み解き方は?

観光立国推進基本計画は通例、以下の3部構成で記述されます。

I
観光を取り巻く現状と課題
訪日需要の回復状況、オーバーツーリズム、人手不足の現状分析と国際比較
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II
基本方針と目標
2030年に向けた方向性と数値目標(KPI)、5本柱の位置付け
詳細 →
III
施策と実施体制
省庁横断の実施体制、補助金・税制・規制緩和、自治体連携
詳細 →

事業者が読むときの視点

計画書全体を読み込む必要はなく、宿泊事業者であれば第III部の施策一覧を起点にすると実務に直結します。補助金や人材支援、DX推進の具体施策は第III部に集約されているため、ここを自社の3年計画と突き合わせて優先順位を付けるのが実用的です。

Q.宿泊事業者への影響は?

領域影響度具体的な内容
料金戦略★★★高付加価値化の政策的後押し。単価向上を外部環境として合理化しやすい
DX投資★★★観光DX関連補助金、データ連携基盤への参画機会が継続的に発生
人材確保★★人手不足対策として外国人材受入拡大、人材開発支援助成金の対象拡充が想定
地方立地★★地方分散施策で地方立地ホテル・旅館に追い風。地域DMOとの連携余地拡大
持続可能性サステナビリティ認証・環境配慮の投資判断材料。宿泊税の新設・増税議論の根拠にも
オーバーツーリズム対応★★分散型観光・特別徴収の自治体広がり。混雑対応の負担は事業者にも波及
関連記事:宿泊税・オーバーツーリズム対応の詳細はBB宿泊ラボ / 宿泊税カテゴリ、旅館業法・民泊新法の区分は旅館業法と民泊新法の違い 2026年版を参照してください。

Q.事業者が今取るべき対応は?

政府KPIと5本柱を、自社の中期経営計画にどう落とし込むかが問われる局面です。以下の7項目を、担当部署・期限とあわせて点検してください。

実務層への行動リスト
第5次計画を経営計画に落とし込むための7つの点検項目
やることいつまでに担当
自社の3年計画と第5次計画の5本柱を突き合わせ、優先投資領域を整理次期経営計画策定時経営企画
自社の料金戦略を「高付加価値化」方針で棚卸し(ADR・RevPAR・単価3万円帯)翌四半期中レベニュー
観光DX関連の補助金公募予定を確認(観光庁・経産省・自治体の公募ページ)公募開始2か月前経営企画
人材開発支援助成金(厚労省)の対象メニューを棚卸し、賃上げ・省力化投資と連動年度内人事
地方自治体の観光振興計画との整合を取り、DMO連携の窓口を確認次期経営計画策定時経営企画
サステナビリティ認証(Green Key等)の取得計画を検討年度内経営企画
宿泊税・オーバーツーリズム対応情報をウォッチし、料金戦略に織り込む自治体動向公表時レベニュー+経営企画

Q.よくある質問

第5次計画の対象期間は?
観光立国推進基本計画の対象期間は慣例的に3〜5年程度。第4次計画は2023-2025年度の3年間だったため、第5次計画も2026年度から同様の期間で運用される見込みです。確定した対象期間は観光庁公式ページで確認してください。
計画本文はどこで入手できますか?
観光庁「観光立国推進基本計画」ページからPDFで入手できます。計画本文のほか、参考資料・概要版・英訳版が順次公開されます。
観光白書との違いは?
観光白書は年次報告書で、前年度の観光動向と施策実績を振り返るもの。観光立国推進基本計画は将来に向けた政府の方針書で、対象期間を通じて参照される戦略文書です。基本法第10条(計画)と第8条(年次報告=白書)でそれぞれ位置付けられています。
事業者が計画策定に関与する方法は?
観光庁の審議会・パブリックコメント・業界団体を通じた意見提出が主なチャネルです。次期計画の策定プロセスは通例、対象期間終了の1年前から準備が始まります。業界団体の動向をウォッチすると意見反映の機会を逃しません。
KPI未達の場合、事業者にペナルティはありますか?
事業者個別へのペナルティはありません。ただしKPI未達の場合、次期計画で施策・補助金の重点領域が変わる可能性があります。自社の中期計画は、政府KPIを参考指標として追従するのが実務的です。
中小規模施設でも計画の恩恵は受けられますか?
観光DX補助金・持続化補助金・人材開発支援助成金は中小規模こそ活用価値が高い制度です。単独申請が難しい場合、DMO経由の広域事業に参画する選択肢もあります。