Q.2026年2月の第1次速報、どう捉えるべき?
観光庁は『宿泊旅行統計調査』において、毎月下旬に前々月分の第1次速報を公表しています。2026年2月分は2026年4月下旬の公表スケジュールです。2月は例年、春節の曜日配置によって訪日客の動きが大きく変わり、ドメスティック需要も1月の年末年始反動で調整局面に入るため、「単月の絶対値」よりも「前年同月比と2月特有の構造要因」を見る月になります。
2026年2月が注目される構造要因
- 春節の配置: 2026年の春節は2月17日。2月中旬〜下旬にかけて中国系訪日客の需要がピーク化
- うるう年なし: 2026年は平年で28日。うるう年(2024年)との直接比較では営業日数が1日少ない
- 国内閑散期: 日本人ドメスティックは1-2月は閑散期。外国人比率が相対的に上昇しやすい
- ウィンターシーズン終盤: スキー・雪まつり関連の地方需要が残る月
Q.主要3指標は何をどう測っている?
『宿泊旅行統計調査』の中核指標は、延べ宿泊者数・客室稼働率・外国人延べ宿泊者数の3つです。それぞれの粒度と用途を押さえておくと、速報を読む時間が半分になります。
施設タイプ別の読み方
観光庁の施設タイプ区分は、ビジネスホテル・シティホテル・リゾートホテル・旅館・簡易宿所・その他の6区分です。稼働率は施設タイプ別で10〜20ポイントの差が出るため、自施設の比較対象は必ず同タイプで取る必要があります。
- ビジネスホテル: 平日中心、都市部は通年で高水準。出張・インバウンドの両需要が支える
- シティホテル: MICE・宴会需要の影響を受けやすい。2月は閑散期
- リゾートホテル: 地域・季節性が強く、2月は北海道・長野・新潟の雪国リゾートが繁忙期
- 旅館: 地方の温泉地が中心。2月は温泉シーズンで好調な地域あり
- 簡易宿所: ゲストハウス・カプセル等。インバウンド比率が高い
Q.三大都市圏と地方の差はどう見る?
観光庁の宿泊統計では、三大都市圏(東京・大阪・京都・愛知・千葉・神奈川・兵庫)と地方(それ以外)のブロック区分が公表されています。国の観光政策が「地方分散」を掲げる中、このギャップの縮小度合いは政策効果を測る最重要指標の一つです。
| ブロック | 観光庁の区分 | 事業者が見るべき観点 |
|---|---|---|
| 三大都市圏 | 東京・神奈川・千葉・愛知・京都・大阪・兵庫 | MICE・ゴールデンルート需要。稼働率の天井感 |
| 地方 | 上記以外の40道府県 | 外国人比率の上昇速度。地方空港便との連動 |
| 北海道 | 単独ブロック(統計では地方) | 冬季繁忙期(2月)・ニセコエリア単価 |
| 沖縄県 | 単独ブロック(統計では地方) | 冬季避寒需要と夏季の繁忙反動 |
| 中部・近畿 | 各県の詳細粒度も公表 | 京都・奈良・金沢など文化観光地の個別動向 |
地方分散指標の読み方
「地方分散が進んでいるか」を数値で検証する場合、以下3つの指標を組み合わせるのが実務的です。
- 三大都市圏シェア推移: 延べ宿泊者数に占める三大都市圏の比率が下がっているか
- 地方の客室稼働率推移: 地方ブロックの稼働率が上がっているか(全国平均との差が縮んでいるか)
- 外国人地方シェア: 外国人延べ宿泊者数のうち地方が占める比率。三大都市圏よりも地方のほうが伸び率が高ければ、分散が機能しているサイン
Q.外国人延べ宿泊者数をどう読む?
外国人延べ宿泊者数は、JNTOの訪日外客数(入国ベース)とは別の指標です。訪日外客数が「国境をまたいだ入国人数」なのに対し、延べ宿泊者数は「日本国内でホテル・旅館に泊まった延べ人泊数」を測ります。1人が3泊すれば3人泊としてカウントされるため、滞在日数の変化が読める指標です。
JNTO訪日外客数との対比
- JNTO訪日外客数の伸び率 > 延べ外国人宿泊者数の伸び率 → 滞在日数が短縮化
- JNTO訪日外客数の伸び率 < 延べ外国人宿泊者数の伸び率 → 滞在日数が長期化、またはリピーター比率上昇
- 両者が同率で伸び → 平均滞在日数は横ばい、入国ベースでの成長と宿泊需要が比例
国籍別の上位トレンド
外国人延べ宿泊者数の都道府県別公表では、国籍別の内訳も併せて公開されます。主要10市場(中国・韓国・台湾・香港・米国・タイ・豪州など)それぞれが、どの都道府県で延べ泊数を稼いでいるかが分かる貴重なデータです。自施設の主要市場が、全国レベルでどの地域に集中しているかを把握すると、エリア×国籍のプロモーション設計に活用できます。
Q.2026年1月分からの調査設計変更とは?
2026年1月分の調査から、観光庁は宿泊旅行統計調査の層化基準を「従業者数」から「客室数」に変更しました。これは2021年以来の大きな設計変更で、速報値の前年同月比を解釈する際に考慮が必要です。
変更点の要点
変更の背景と実務への影響
- 背景: 無人フロント・省力化施設の増加で「従業者数」による層化が実態と乖離してきたため
- 標本設計の改善: 客室数ベースの層化は、宿泊供給量との連動性が高く、推計精度が向上
- 小規模施設の捕捉: 簡易宿所・小規模旅館の実態がより正確に反映されやすい
- 時系列の断絶: 新旧で厳密な比較ができない期間が発生。観光庁の補正値公表を待つ
Q.宿泊事業者にとっての示唆は?
- 自施設との照合: 全国・ブロック別・施設タイプ別の稼働率と、自施設の同期間実績を並べて、ギャップの有無を毎月検証
- 需要予測の精度向上: 第1次速報(2か月遅れ)と第2次速報(3か月遅れ)を組み合わせ、3か月先の需要予測に反映
- 料金戦略の検証: ブロック平均ADR相当値と自施設ADRを比較。乖離の原因が立地・設備・商品力のどこにあるかを分析
- 地方×外国人の機会把握: 地方の外国人延べ宿泊者数の成長率が高い地域は、インバウンド強化の商機
- 調査設計変更への対応: 2026年1月分以降の前年同月比は参考値として扱い、2027年以降の時系列化を待つ
2026年3月分 第1次速報公表(5月下旬)までにやること
| やること | 締切 | 担当 |
|---|---|---|
| 2月実績(稼働率・ADR・外国人比率)を観光庁速報の全国・施設タイプ別平均と突合 | 2026年4月末 | 予約/レベニュー |
| GW・初夏料金の最終確定(前年比・春節ピーク反動を織り込む) | 2026年4月25日 | レベニュー/マーケ |
| 調査設計変更(層化基準客室数化)の注記を社内レポート定型文に追加 | 2026年5月上旬 | 経営企画 |
| 5月下旬公表の2月分第2次速報・3月分第1次速報をフォローし、RevPAR先行指標として反映 | 2026年6月上旬 | 経営企画/予約 |
| 月次経営会議資料に宿泊統計コメント(自施設 vs ブロック平均)を反映 | 月次定例会議 | 経営企画 |
Q.宿泊旅行統計 速報の読み解きガイド
公表スケジュール(年間カレンダー)
宿泊旅行統計調査は、第1次速報が翌々月下旬、第2次速報がその翌月下旬に公表されます。2026年前半の想定公表タイミングは以下の通りです。
- 2026年1月分 → 第1次速報 2026年3月下旬 / 第2次速報 2026年4月下旬
- 2026年2月分 → 第1次速報 2026年4月下旬(本記事が取り上げる回) / 第2次速報 2026年5月下旬
- 2026年3月分 → 第1次速報 2026年5月下旬 / 第2次速報 2026年6月下旬
- 2026年4月分 → 第1次速報 2026年6月下旬 / 第2次速報 2026年7月下旬
公表資料の構成
観光庁の月次公表資料は、例年以下のパートで構成されます。事業者は最低限 (1)(2)(4) を押さえておくと実務判断に十分です。
- 全国の延べ宿泊者数(日本人・外国人別)の月次サマリー
- 都道府県別・施設タイプ別の客室稼働率
- 外国人延べ宿泊者数の都道府県別・国籍別内訳
- 三大都市圏と地方の対比(定員稼働率、延べ宿泊者シェア)
- 参考統計(宿泊数階級別、利用目的別など)
第1次速報と第2次速報の違い
- 第1次速報: 従業者数10人以上の施設の集計値。翌々月下旬公表。迅速性重視
- 第2次速報: 従業者数10人未満の施設も含む全数ベース。翌々々月下旬公表。網羅性重視
- 多くの事業者判断は第1次速報で行われ、年間サマリーや政策立案は第2次速報を使う
Q.よくある質問
Q1. 宿泊旅行統計とJNTO訪日外客数は何が違いますか?
JNTO訪日外客数は法務省出入国管理統計を基に「入国した外国人」を推計した値(人ベース)で、観光庁宿泊旅行統計は「日本国内で宿泊した人泊数」を測るもの(人泊ベース)です。用途が異なるため、両者を対比することで滞在日数の変化や宿泊需要の質的な動きが読めます。入国ベースの解説は2026年3月 訪日外客数 速報解説を参照してください。
Q2. 客室稼働率と定員稼働率の違いは?
客室稼働率は「販売可能な客室のうち何室が売れたか」、定員稼働率は「提供可能な収容力のうち何人分が埋まったか」を測ります。ツインをシングルユースで売ると客室稼働率は上がりますが、定員稼働率は上がりません。両者の差分からは、1室あたりの利用人数トレンドが読めます。
Q3. 民泊(住宅宿泊事業)は含まれますか?
含まれません。民泊は別途、観光庁民泊制度ポータルで「住宅宿泊事業の宿泊実績」として公表されます。民泊と宿泊業法上の施設では法的枠組みも異なるため、あわせて旅館業法と民泊新法の違い ― 2026年版 施設区分・営業許可・届出の実務ガイドをご覧ください。
Q4. 第1次速報と第2次速報、どちらを見るべき?
迅速な意思決定(4〜6週間後のプロモーション・料金調整)には第1次速報を、通年の目標設定・重要投資判断には第2次速報をおすすめします。なお、第2次速報でも後日の年次確定値で小幅な修正が入ることがあります。
Q5. 調査設計変更後の前年同月比はどこまで信頼できますか?
2026年1月分以降は層化基準が変わっているため、厳密な時系列比較ができない期間が続きます。観光庁が公表する「接続係数」や参考値の注記を確認しつつ、当面は「方向感の把握」に留め、絶対値の比較は避けるのが安全です。2027年以降、新系列で12か月分のデータが揃った段階で、信頼できる前年同月比が得られます。
