Q.2016年のふっこう割はどんな日程で動いたか?

2016年7月1日の午前10時、じゃらん・楽天・近ツー・日本旅行・東武トップ・HIS・名鉄観光・JALPAK・ANA旅作・西鉄旅行・JR九州旅行のネット系11社が、九州7県の割引クーポンを一斉に配り始めました。じゃらんは10時10分、楽天は10時ちょうどでした。その日の16時30分には、楽天の福岡県分が終わっています。

この日に至るまでの動きは次のとおりです。4月14日に前震M6.5、16日に本震M7.3。5月のじゃらんnetの人泊数は熊本県で約7割減、大分県と九州全体で約3割減まで落ちました。5月17日に補正予算7,780億円が成立し、うち熊本地震復旧等予備費が約7,000億円。5月31日に政府が「九州の観光復興に向けての総合支援プログラム」を取りまとめ、ふっこう割の財源は予備費180億円と決まりました。制度そのものの発表は6月23日、九州観光推進機構からで、目標は150万人泊でした。

販売側の準備は発表より早く始まっていました。リクルート側では5月中旬に事業へ着手し、販売開始を7月1日に置いて、体制構築に1カ月半をかけています。制度発表の6月23日から数えれば、商品がWebに並ぶまでは8日しかありません。

図1

地震から実績発表まで — 2016年ふっこう割の時系列

4/14・16 前震 M6.5、本震 M7.3 5/17 補正予算 7,780億円が成立 5/31 総合支援プログラム、ふっこう割は予備費180億円 6/23 制度発表、目標150万人泊 6/27 じゃらん・日本旅行が商品を発表 7/1 10:00 ネット系11社が一斉に配布開始 7/13 JTB系・Yahoo!トラベルが開始 7/19〜21 大分・熊本・福岡の県宿泊券が発売 9/9 第2期の配布開始 12/28 第2期終了、第3期なし 2017/3/2 実績 271.9万人泊(目標の181.3%) 制度発表から販売開始まで8日
日付出来事
2016/4/14・16前震 M6.5、本震 M7.3
2016/5/17補正予算 7,780億円が成立(うち熊本地震復旧等予備費 約7,000億円)
2016/5/31政府が総合支援プログラムを取りまとめ、ふっこう割の財源は予備費180億円
2016/6/23九州観光推進機構が制度を発表、目標150万人泊
2016/6/27じゃらん・日本旅行が商品を発表
2016/7/1 10:00ネット系11社が一斉に配布開始(じゃらん10:10、楽天10:00)
2016/7/13るるぶトラベル・JAPANiCAN・Yahoo!トラベルが開始
2016/7/19〜21大分県・熊本県・福岡県のプレミアム付き宿泊券が発売
2016/9/9 10:00第2期の配布開始(ネット10社一斉、JTB店頭11時、JR九州13時)
2016/12/28第2期終了、第3期なし
2017/3/2実績発表 延べ271.9万人泊、目標150万人泊の181.3%

出典: 記事末の出典1・2・3・5〜9。「制度発表から販売開始まで8日」は、6月23日と7月1日の日付から本記事で算出した値です。

Q.どの県に何枚配られ、初日にどう売れたか?

制度の正式名称は「九州観光支援のための割引付旅行プラン助成制度」です。国が九州7県に交付し、各県が旅行会社やOTAに割引商品の販売を依頼して、販売実績に応じて割引分が助成金として旅行会社に支払われる建て付けでした。ゲストが割引を受け取る経路は3つで、OTAのクーポン、旅行会社の店頭、県のプレミアム付き宿泊券(コンビニ・専用WEB)に分かれます。割引の上限額は、宿泊のみが2万円、交通付1泊2日が2万円、2泊3日が3万円、周遊型が3.5万円でした。

枚数は県ごとに配分されました。じゃらんが7月1日に配った初回分は、額面2万円券・1.4万円券・7,000円券・4,000円券・交通付3万円券に分かれています。熊本県と大分県は1万枚単位、佐賀県は300枚から500枚という規模です。楽天の第1期で枚数が確認できるのは熊本県と大分県で、熊本県が4,000円券6,992枚・7,000円券7,400枚・1.4万円券8,588枚・2万円券9,000枚(ほかにパッケージ用50枚・140枚・50枚)、大分県が10,000枚・10,000枚・12,000枚・10,000枚でした。発行期間は7月1日10時から9月27日9時59分まで、宿泊の対象は9月28日チェックアウト分までです。

図2

じゃらん 7月1日の初回配布枚数(額面別・県別)

2万円券 1.4万円券 7,000円券 4,000円券 交通付3万円券 熊本県 大分県 福岡県 佐賀県 長崎県 宮崎県 鹿児島県 0 10,000 20,000 30,000 配布枚数(枚)
2万円券1.4万円券7,000円券4,000円券交通付3万円券
熊本県10,00010,0005,0004,000760
大分県10,00012,0006,0004,000464
福岡県500800900500
佐賀県300500350301
長崎県3,0003,0002,5001,000
宮崎県1,3001,5001,300900
鹿児島県1,9001,9001,700900

出典: 記事末の出典1。「—」は元資料に記載がない区分です。

初日の売れ方は経路と県で分かれました。16時30分の時点で、楽天の福岡県分は終了、熊本県と大分県の宿泊クーポンは比較的余裕があり、航空券付きはほぼ完売しています。一番人気は3万円以上の旅行に2万円引きとなる区分でした。追加の配布は7月8日にJR九州旅行の店頭とANAの4,000枚、7月25日に楽天の第2弾 約11,000枚、8月2日にじゃらんの10,734枚と続きます。

JTB系とYahoo!トラベルは12日遅れて始まりました。るるぶトラベルとJAPANiCANの開始は7月13日で、6月のJTBの不正アクセス問題への対応が理由です。同じ13日に始まったYahoo!トラベルは10時40分にクーポンページが表示されにくくなり、配布枚数は熊本県12,609枚・大分県8,716枚・福岡県987枚・長崎県428枚などで、売り切れ次第終了でした。

もっとも速かったのは県のプレミアム付き宿泊券です。7月19日に発売された大分県分(額面5,000円を2,500円、10万枚の予定)はアクセス集中でその日のうちに終了し、翌20日から抽選受付に切り替わりました。7月20日10時発売の熊本県分(額面5,000円を1,500円、21万枚、専用WEB)は40時間で完売し、サーバーが停止しています。7月21日14時発売の福岡県分はコンビニ4社で扱われ、当日17時に3社で完売しました。

図3

初日で完売多数 経路別の状況まとめ

6/23 7/1 7/8 7/13 7/19〜21 7/25 8/2 制度発表 ネット系11社(7月1日 10時開始) 楽天トラベル じゃらん 日本旅行 JR九州旅行・ANA 16時30分 福岡県分が終了、熊本・大分は在庫あり 第2弾 約11,000枚 県別に配布(内訳は図2) 10,734枚を追加 Webのみで開始、店頭は後日 店頭とANAで4,000枚を追加 開始が遅れた経路(7月13日) るるぶ・JAPANiCAN Yahoo!トラベル JTBの不正アクセス問題の対応で開始が遅れた 10時40分に表示されにくくなる。熊本12,609枚など 県のプレミアム付き宿泊券(7月19〜21日) 大分県 7/19 熊本県 7/20 10時 福岡県 7/21 14時 アクセス集中で当日に終了、翌日抽選 40時間で21万枚が完売 3時間でコンビニ3社分が完売 配布開始 売り切れ・終了 追加配布 販売期間
日付経路出来事
7/1 10:00ネット系11社一斉に配布開始。楽天は16時30分に福岡県分が終了、熊本県・大分県の宿泊クーポンは在庫あり、航空券付きはほぼ完売
7/1日本旅行Webのみで開始、店頭は後日
7/8JR九州旅行の店頭・ANA4,000枚を追加
7/13るるぶトラベル・JAPANiCANJTBの不正アクセス問題の対応で遅れて開始
7/13Yahoo!トラベル10時40分にページが表示されにくくなる。配布枚数は熊本県12,609枚・大分県8,716枚・福岡県987枚・長崎県428枚など
7/19大分県の宿泊券額面5,000円を2,500円で10万枚の予定。アクセス集中でその日のうちに販売終了、翌20日から抽選
7/20 10:00熊本県の宿泊券額面5,000円を1,500円で21万枚。40時間で完売、サーバーが停止
7/21 14:00福岡県の宿泊券コンビニ4社で発売、17時に3社分が完売
7/25楽天トラベル第2弾 約11,000枚を追加
8/2じゃらん10,734枚を追加

出典: 記事末の出典5〜11。「40時間」「3時間」は各出典の発売時刻と完売時刻から本記事で算出した値です。終了・完売の印は開始の印の右隣に置いたもので、横の距離は時間の長さを表しません。

OTA側は途中で配分を組み替えています。じゃらんは宿泊単品クーポンの原資を交通付きの「じゃらんパック」へ振り向けました。参画は約2,800軒で、7月から12月までに約26.7万人泊・約78.8億円を扱っています。日本旅行は宿泊単品で熊本県・大分県の6,000円以上に4,000円引き、他の5県に3,000円引き、交通付は2万円以上に1.4万円引きと1万円引きを設定し、7月1日はWeb限定、その後に店頭という順でした。

Q.第2期で何が変わったか?

第2期は9月9日10時に始まりました。ネット10社が一斉、JTBの店頭が11時、JR九州が13時という順です。第1期との一番の違いは割引率で、熊本県・大分県は平均50%・最大70%から平均25%・最大50%へ、他の5県は平均20%・最大50%から平均10%・最大40%へ下がりました。

図4

平均割引率は第2期で半分に — 第1期と第2期の比較

平均 最大 熊本県・大分県 第1期 7〜9月 平均50% 最大70% 第2期 10〜12月 平均25% 最大50% 他の5県 第1期 7〜9月 平均20% 最大50% 第2期 10〜12月 平均10% 最大40% 0% 20% 40% 60%
対象期間平均最大
熊本県・大分県第1期(7〜9月)50%70%
熊本県・大分県第2期(10〜12月)25%50%
他の5県第1期(7〜9月)20%50%
他の5県第2期(10〜12月)10%40%

出典: 記事末の出典1。割引の上限額は宿泊のみ2万円、交通付1泊2日2万円、2泊3日3万円、周遊型3.5万円です。

売り方の条件も変わりました。宿泊単品は土曜と祝前日が除外され、この除外は11月17日に解除されています。航空券付きのダイナミックパッケージに除外日はありませんでした。配布そのものも分割され、9月9日に約50%、10月6日に約40%、11月2日に約10%と調整分という計画で、追加の配布は10月5日・11月1日・11月17日・12月8日・12月22日に行われました。第1期のように初日で在庫が尽きるのを避ける組み方です。

県のプレミアム付き宿泊券は先着から抽選に切り替わり、引き換えのときに身分証の提示が求められました。熊本県は申込が9月9日から14日、1人6枚まで、1泊に使えるのは4枚まで、当落の発表が9月21日。大分県は額面5,000円を3,000円で販売し、申込は9月9日から16日、1人8枚までです。

宿泊施設の側でも対応が発生しました。金券が付いたプランは販売停止が必須になり、1回に使える枚数の上限も設定されています。自館のプラン表を作り直す作業が、第2期の開始日に間に合うかどうかが問われました。第2期は12月28日に終わり、第3期はありません。

Q.宿泊施設側に何が残ったか?

実績は目標を大きく超えました。2017年3月2日の発表で延べ271.9万人泊、目標150万人泊の181.3%です。内訳は7〜9月が約149万人泊、10〜12月が約122万人泊。県別では大分県が約95.3万人泊、熊本県が約81.4万人泊で、この2県だけで全体の3分の2を占めました。

ただし、宿泊施設の側から見た評価は数字ほど単純ではありません。JTB総合研究所が2016年8月から9月に行ったヒアリングでは、次の指摘が出ています。

「『掛け売り』方式であるため、一部の宿泊施設は財政的に苦しくなる。」
「旅行会社との取引を行っていない宿泊施設の場合、効果を享受できない。」
「割引率が高いため、制度終了後の跳ね返りが心配である。」
「『九州ふっこう割』を利用するため、その直前(6月)の宿泊者の戻りが遅れた可能性がある。」 JTB総合研究所の調査(2016年8〜9月のヒアリング)より

4つの指摘は、それぞれ準備するものが違います。掛け売りは、割引分の入金までの期間を自館が立て替えるという意味です。旅行会社と取引のない施設が対象外になるのは、販売経路がOTAと旅行会社に限られていたためで、直販中心の施設ほど恩恵が届きませんでした。終了後の跳ね返りと、開始直前の月の予約が止まる動きは、制度の期間そのものが需要を前後に移す形で起きています。

現場の負担は問い合わせの形でも出ました。2016年7月20日時点の記録では、県のプレミアム付き宿泊券を「県内のすべての施設で使える」と思い込んだ電話、OTAで取った予約にコンビニで買った宿泊券を重ねて使おうとするゲストへの対応があり、断ると口コミで低い評価を付けられるリスクが指摘されています。問い合わせは忙しい時間帯にも入りました。

効果の出方も県で分かれました。大分県は震災前と比べて約15%増と明確に伸びた一方、熊本県は熊本城や阿蘇大橋などの直接の被害が残り、伸びは鈍いままです。他の5県では宿泊のトレンドに変化が見られず、割引率と予算が足りなかったと分析されています。制度が終わったあとの2017年1〜3月には熊本県・大分県で反動減が出て、4月に平年並みへ戻りました。

ふっこう割の周りでは別の施策も動いています。九州観光ドライブパスは7月15日から12月18日までで約21.8万件。県ごとには、宮崎県が1億円分のクーポン8,600枚、鹿児島県が1億円で最大5割引き、佐賀県が平日3,000円引き、大分県がテレビCM779本を打ちました。ふっこう割の数字だけを見ると、実際に自館へ人が動いた理由を取り違えます。

Q.2026年に向けて前例から何を確認するか?

2016年と2026年は別の制度です。配分の方法、参画の経路、期間の段階の有無は、所在県の発表で確認する項目です。制度そのものの確定事項は2026年の記事で確認してください。

2016年の前例自館で先に決めること
制度発表から販売開始まで8日。販売側は5月中旬に着手し、体制構築に1カ月半かけた 予約開始日が決まってから商品を出すまでの作業を、いま書き出して担当を決める。プラン登録・料金表・OTAへの反映のうち、どれに何時間かかるかを測っておく
7月1日10時に一斉配布、16時30分に楽天の福岡県分が終了 初日の午前に電話とネット予約が重なる前提で、フロントの人員配置を決める。当日に答えられない質問の戻し先も決めておく
じゃらんの初回配布は1.4万円券で大分県12,000枚に対し佐賀県500枚。他の5県では宿泊トレンドに変化が見られなかった 自県の配分が小さかった場合に何で埋めるかを、割引に頼らない販売手段の側で用意する。2026年の配分方法は所在県の発表で確認する
第2期で割引率が平均50%から25%へ低下。宿泊単品は土曜・祝前日を除外(11月17日に解除) 期間が分かれる場合に備え、条件が変わる日をまたぐ予約の扱いを決めておく。2026年に段階があるかどうかは各県の発表で確認する
割引分は販売実績に応じて旅行会社が受け取る掛け売り 割引分の入金がいつになるかを経路ごとに確認し、立て替えの期間の資金繰りを見ておく
旅行会社と取引のない宿泊施設は効果を享受できないという指摘 自館の販売経路が制度の経路に入るかを、所在県の発表が出た日に確認する
制度終了後の2017年1〜3月に熊本県・大分県で反動減。4月に平年並み 終了直後の月の販売計画を、割引期間の計画と同時に作る
開始直前の6月に宿泊者の戻りが遅れた可能性という指摘 開始前の月の予約が止まらないよう、割引を待たないゲスト向けの条件を先に用意する
注意ここに並べた数字と日付はすべて2016年の制度のものです。2026年の九州ふっこう応援割の割引率・上限・期間・登録方法は、各県の実施要領が正本になります。

よくある質問

2016年の九州ふっこう割はいつからいつまででしたか?

販売は2016年7月1日に始まり、第2期が12月28日に終わりました。第3期はありません。正式名称は「九州観光支援のための割引付旅行プラン助成制度」で、国が九州7県に交付し、各県が旅行会社やOTAに割引商品の販売を依頼する建て付けでした。実績は2017年3月2日に発表され、延べ271.9万人泊、目標150万人泊の181.3%でした。

初日はどのくらいの速さで売り切れましたか?

7月1日午前10時にネット系11社が一斉に配布を始め、同じ日の16時30分に楽天の福岡県分が終了しました。同じ時点で熊本県と大分県の宿泊クーポンは比較的余裕があり、航空券付きはほぼ完売、一番人気は3万円以上で2万円引きの区分でした。県のプレミアム付き宿泊券はさらに速く、7月19日発売の大分県分はアクセス集中で即日終了し、7月20日発売の熊本県分21万枚は40時間で完売してサーバーが停止しました。

県によって配布枚数はどれくらい違いましたか?

じゃらんの7月1日の初回配布では、額面1.4万円のクーポンが大分県12,000枚・熊本県10,000枚に対し、佐賀県は500枚、福岡県は800枚でした。楽天の第1期で枚数が確認できるのは熊本県と大分県で、大分県は4,000円券・7,000円券・1.4万円券・2万円券をそれぞれ10,000枚・10,000枚・12,000枚・10,000枚配布しています。被災2県に配分が集中し、他の5県は数百枚から3,000枚の規模でした。

第2期では何が変わりましたか?

割引率が下がり、熊本県・大分県は平均50%・最大70%から平均25%・最大50%に、他の5県は平均20%・最大50%から平均10%・最大40%になりました。宿泊単品は土曜と祝前日が除外され、11月17日に解除されています。航空券付きのダイナミックパッケージに除外日はありません。配布は9月9日に約50%、10月6日に約40%、11月2日に約10%と調整分へ分割され、県のプレミアム付き宿泊券は先着から抽選と身分証提示に変わりました。宿泊施設側では金券付きプランの販売停止が必須になり、利用枚数の上限が設定されました。

宿泊施設側にはどんな負担がありましたか?

割引分は販売実績に応じて旅行会社が助成金を受け取る掛け売りで、JTB総合研究所のヒアリングでは「『掛け売り』方式であるため、一部の宿泊施設は財政的に苦しくなる。」「旅行会社との取引を行っていない宿泊施設の場合、効果を享受できない。」という指摘が出ています。現場では、県の宿泊券を県内のすべての施設で使えると思い込んだ問い合わせや、OTAの予約にコンビニで買った宿泊券を重ねようとするゲストへの対応が発生しました。