Q.何に使える制度か ― 「共同設備」の範囲

観光庁は2026年7月8日、「地域一体となった観光産業の効率化支援事業」の二次公募を始めました。令和7年度補正予算「地域における受入環境整備促進事業補助金」の一事業で、複数の宿泊施設等が利用する共同設備の導入・改修等を支援し、「観光地全体のサービス水準や労働生産性の向上を図る」ことを目的に掲げています(公募要領P.1)。1軒ごとに寮や送迎バスを抱えるのでなく、地域で共有して人手と経費の負担を軽くする、という設計です。

公募要領が例示する取組は次のとおりです。いずれも「複数の事業者で共同利用する」ことが前提になります。

取組の例(公募要領P.5)対象になる中身
共同社員寮複数施設の従業員が入居する寮の導入・改修
温泉引湯管温泉組合等が管理し複数施設が使う引湯管の改修
共同循環バス複数施設で共同運行する送迎・周遊バスの導入
共同キッチン調理部門を集約する共同厨房の導入・改修
コミュニティーガス事業・地域共同倉庫エネルギー供給や在庫保管を共同化する設備の導入・改修
運営システムの構築上記の設備導入・改修後の運営に係るシステム構築

これらは一例で、「同様の目的及び効果が認められる事業についても補助対象となり得ます」と公募要領に明記されています(P.5)。自館の困りごとが例示にない場合も、複数の事業者の効率化・省人化につながる設備なら、事務局に相談する余地があります。

実施主体と連携先の組み方(公募要領の例)

申請内容実施主体連携先財産の管理・所有
温泉引湯管の改修温泉組合宿泊施設A温泉組合
共同社員寮の改修宿泊施設A観光関係事業者A・B宿泊施設A
補足:本事業で取得した財産の所有者は、実施主体・連携先のいずれでもよいとされています(公募要領P.5)。自館が所有して近隣施設に使ってもらう形も、組合や観光協会が所有して自館が使う形も組めます。

Q.誰が申請できるか。1者単独では出せない

この制度は1軒だけでは申請できません。地域の宿泊事業者の参加を必須とし、実施主体を含め計2者以上の連携で申請します(公募要領P.3)。GビズIDがあれば単独で出せる中小企業庁系の補助金と性格が違うため、まず自館が申請できる体制かをここで確かめてください。

実施主体になれる事業者

  • 観光関係事業者: 宿泊事業者・飲食事業者・交通事業者・観光施設・観光協会・登録DMO等(民間事業者に限る)
  • 宿泊事業者は旅館業法第3条第1項の許可を受けた者(店舗型性風俗特殊営業を営む者を除く)
  • 登録DMOは公募申請時点で登録済みであること。事業期間中に登録抹消となった場合は交付決定が取り消される

連携の要件

  • 実施主体もしくは連携先に宿泊事業者1者以上を含める。自館が実施主体でも、観光協会が実施主体で自館が連携先でも要件を満たす
  • 連携先は「補助対象となる取組を共同で利用する事業者」を指し、経費の負担は必須ではない(公募要領P.3)
  • 連携先の業態に制限はない(特設サイトFAQ)

連携先が決まっていなくても申請はできる

申請時に連携先が確定していない場合は、連携先候補を申請書類(様式3)に記載すれば申請できます。しかし交付決定日から3か月以内に連携同意書を提出できなければ、交付決定は取り消されます(公募要領P.3)。声かけだけの相手を「候補」と書くのは簡単でも、同意書の期限は動きません。候補には申請前に、共同で使う設備の中身と費用分担の有無まで話を通しておくのが安全です。

体制の例可否理由
資本関係のない旅館2軒で共同社員寮を改修宿泊事業者を含む2者以上の連携
観光協会が実施主体、旅館が連携先実施主体もしくは連携先に宿泊事業者1者以上で可
飲食店と土産物店の2者だけ(宿泊なし)×体制に宿泊事業者がいない
同一グループのホテル2軒だけ×同一会計・同一グループのみの申請は対象外(公募要領P.3)
1事業者が2件を申請×同一事業者からの2件以上の申請は不可。1件に複数取組はまとめられる
同一の事業内容で国の補助金等を受給済み・受給確定×重複する場合は申請不可。国費が財源の自治体補助金も含む(公募要領P.4)
自治体が所有する公共施設の改修×地方公共団体が支出する経費・自治体所有施設は対象外(特設サイトFAQ)
注意:実施主体・連携先に関わらず、補助経費を支出する事業者と工事を請け負う工事業者の代表者が同一、または企業会計が同一の場合は利益等排除の対象になります(公募要領P.4)。グループ内の建設会社に発注する計画は、金額の扱いが変わるため事務局に事前確認してください。

Q.いくら出るか ― 補助率1/2・上限5,000万円と対象外経費

補助率は1/2、補助上限額は5,000万円です(公募要領P.4)。総事業費ベースでは1億円規模の共同設備投資まで、半分を国費で賄える計算になります。下限額の定めは公募要領にありません。工事を伴わない備品購入のみの申請も認められています(特設サイトFAQ。単価50万円(税抜)超の備品は所有権の詳細記載が必要)。

補助対象外の経費(公募要領P.5)

  • 本事業に直接関係のない経費
  • 交付決定前に発生した経費
  • 経常的な経費(光熱水費・通信料・仲介手数料・保証金・リース料等)
  • 躯体の新設工事
  • 資金調達に必要となった利子
  • 法令・条例等で義務化されている設備等の新規導入に係る工事費
  • 恒久的な施設の設置、用地取得等
  • 設備導入・改修後に実施する運用等に係る経費
  • 振込手数料

新築(躯体の新設)や取り壊し後の再建は対象外のため、既存建物の改修と設備・備品の導入が中心になります。対象は共同設備の導入・改修と、その運営に係るシステム構築まで。導入後の運用等にかかる経費は対象外です。

支払いは事業完了後の精算

補助金は原則、事業完了後に完了検査を経て精算されます(特設サイトFAQ)。つまり工事費や購入費は、いったん実施主体側が全額立て替えます。上限に近い事業なら数千万円の立替です。金融機関へのつなぎ融資の相談は、採択を待たずに始めておくと交付決定後の着工が速くなります。

最重要:交付決定前の発注・契約は補助対象外です。締切前に済ませるのは見積の取得まで。発注書・契約書の日付が交付決定日より前だと、その経費は対象から外れます。

Q.いつまでに何をするか。交付決定から完了まで約5か月

申請の締切より先に、事業の終わりから確かめます。事業の実施期間は交付決定日から2027年2月19日(金)17:00までで、この期間内に完了実績報告書を含む全ての精算書類の提出まで求められます(公募要領P.6)。交付決定が9月中旬〜下旬のため、実際に使える期間は約5か月です。

申請受付(二次公募)
特設サイトで申請者マイページを作成し、必要書類を全て揃えてシステム上で提出。締切厳守。
2026年7月8日(水)10:00〜8月18日(火)12:00
1次審査(書面)
提出書類を「審査の観点」(次セクション)に沿って審査。通過者にはメール・マイページで通知。
結果通知は9月初旬頃
2次審査(オンラインのプレゼンテーション)
経営状況の確認や取組への意欲など定性面も含めた審査。欠席は申請取下とみなされる。日時は通過者に個別調整。
9月7日(月)・8日(火)・9日(水)のいずれか(予備日9月10日(木))
交付申請書の提出 → 交付決定
選定通知を受けた事業者が交付申請書を提出し、交付決定の通知を受けてから事業を開始できる。
交付決定は9月中旬〜下旬頃
事業実施(発注・工事・検収)
交付決定日以降に発注・契約・着工。設計〜検収までをこの期間に収める。
交付決定日〜2027年2月19日(金)
完了実績報告・精算書類の提出
事業完了日から原則1か月以内、または2027年2月19日のいずれか早い方まで。
〜2027年2月19日(金)17:00
精算(補助金の受け取り)
完了検査を経て精算書類提出後、随時。
書類提出後 随時
工期の確認が先:交付決定から2027年2月19日(金)までに完了実績報告・精算書類の提出まで終える必要があります。期間内に完了できなかった場合、補助金の交付を受けられない場合があります(公募要領P.6)。工事を伴う取組は、設計・見積・施工・検収が約5か月に収まるかを申請前に施工業者と詰めておいてください。冬季の温泉地は工事適期の制約も重なります。

Q.審査で何を見られるか ― 定量指標と連携の実効性

審査は書面(1次審査)とオンラインのプレゼンテーション(2次審査)の2段階です。公募要領は審査の観点として5項目と加点2項目を挙げています(P.6)。事業計画申請書(様式1)がこの観点に沿って書けているかで、書面審査の通り方が変わります。

審査の観点問われること(公募要領P.6の要約)
(1) 生産性向上・効率化複数の宿泊施設等の共通課題を解決し、地域全体の効率化につながるか。作業時間の削減数や稼働率向上等、定量的指標で説明できるか
(2) 地域内連携の実効性取組の運営ルールが設計され、持続的な運用が可能か。連携先(候補)との連携方法が明記されているか
(3) 具体性・実現可能性設備仕様・数量・導入場所・手順が具体的か。役割分担・作業工程・スケジュールが揃い、課題と設備の効果が論理的に結びついているか。リスクと対策が示されているか
(4) 新たな価値・需要創出取組の独自性・独創性に基づき、地域として新たなサービス・体験価値が生まれるか
(5) 効果検証の体制事業終了後の効果検証について、KPI等の指標・検証方法・実施主体・実施時期が具体的か
(6) 地域社会課題への貢献(加点)サステナビリティ(SDGs)、アクセシビリティ(ユニバーサルデザイン・多様性への対応)に当てはまるか
(7) 他地域の参考になるか(加点)取組内容や運営の仕組みが、他地域の参考となるか

(1)の定量説明は書き方の分かれ目です。公募要領は社員寮を例に、評価の付き方までこう書いています。

例えば社員寮であれば、連携する事業者の数やその利用人数の割合が多いこと、各事業者の施設からのアクセスが良い場合、より評価が高くなります。 ― 「地域一体となった観光産業の効率化支援事業」公募要領(二次公募)P.6

「人手不足で寮が要る」で止めず、共同化で何時間・何人分の作業が減るか、連携する事業者の数と利用人数まで数字にします。選定の必須要件として、連携先と合意した取組内容と、補助事業で取得する財産の所有者が申請書類に明記されていること、事業内容が複数の観光関係事業者の効率化・省人化に資することも挙げられています(公募要領P.9)。

2次審査は経営状況の確認を含みます(公募要領P.9)。任意提出の財務諸表(直近3年分)を出すなら、数字の説明は先に組み立てておくと当日が楽になります。

「作業時間の削減数」を数字にできず手が止まったら

審査の観点(1)は作業時間の削減数や稼働率向上といった定量的指標での説明を求めています。ビジネスブレーンのPMS・予約管理・清掃管理SaaSを使う施設では、稼働率・清掃時間などの実測データが日次で残るため、共同化で減る工数の試算に使えます。事業計画(様式1)の数値根拠づくりは、自館の現状データの棚卸しからご相談いただけます。

事業計画の数値づくりを相談する →

Q.申請の実務 提出書類とマイページ登録

申請は特設Webサイトの電子申請システムから行います。jGrantsを使わないため、GビズIDは要りません。かわりに申請者マイページの新規登録が必要で、一次公募で登録した事業者も二次公募では新たな登録が求められます(特設サイト)。様式1〜4と様式1-別紙1〜3は特設サイトからダウンロードします。

提出書類の一覧(公募要領P.7-8)

書類中身備考
様式1事業計画申請書必須。審査の観点に沿って作成
様式1-別紙1連携先詳細必須。補助対象経費を負担する連携先分を提出
様式1-別紙2整備箇所写真車両導入等、写真確認が不要な場合は提出不要
様式1-別紙3図面車両・機械設備・備品等で図面作成を要しない場合は提出不要
様式2費用積算書必須
様式3事業概要必須。連携先未確定の場合は連携先候補を記載
様式4連携同意書連携先確定次第提出。交付決定日から3か月以内が期限
見積書・相見積書任意様式必須。相見積の取得が難しい場合は選定理由書を提出
旅館業法営業許可証の写し任意様式体制に含まれる宿泊施設は必須提出
定款・出資者一覧・組織体制図任意様式実施主体が任意団体の場合は必須
カタログ・財務諸表(直近3年分)任意提出導入設備の仕様明示、経営状況の説明材料に

締切(8月18日正午)から逆算した段取り

やること 目安 担当
連携先(候補)に声をかけ、共同で使う設備・費用分担の有無・財産の所有者を仮決め 締切35日前 経営者
特設サイトでマイページ登録・様式一式をダウンロード 締切30日前 総務/経理
設備・工事の見積を複数社から取得(相見積。難しければ選定理由書) 締切21日前 総務/施設管理
様式1・2・3を作成(定量指標・運営ルール・工程表・リスクと対策) 締切14日前 経営者/経営企画
連携同意書(様式4)の取り交わし。間に合わなければ様式3に候補を記載 締切7日前 経営者
電子申請システムで提出し、控えを保存。締切当日の駆け込みを避ける 締切前日まで 総務/経理
問い合わせ先:地域一体となった観光産業の効率化支援事業事務局(株式会社JTB霞が関事業部)。TEL 03-6737-9359(平日10:00〜17:00)、メール kouritsukashien-r8@jtb.com。二次公募の説明会(Zoom)は2026年7月13日(月)13:00〜14:00に開催。開催後に浮かんだ疑問は、電話・メールで事務局に直接確かめてください。

現場でよく出る質問(FAQ)

Q. 1軒だけで申請できますか?

できません。実施主体を含め計2者以上の連携が要件で、実施主体もしくは連携先に宿泊事業者1者以上が必要です。ただし申請時に連携先が未確定でも、連携先候補を申請書類に記載すれば申請できます。その場合、交付決定日から3か月以内の連携同意書提出が条件で、出せなければ交付決定は取り消されます(公募要領P.3)。

Q. 連携先は費用を負担する必要がありますか?

必須ではありません。連携先は「補助対象となる取組を共同で利用する事業者」を指し、経費を負担しなくても連携先になれます(公募要領P.3)。連携先の業態に制限はないため、飲食・交通・観光施設など宿泊以外の事業者とも組めます(特設サイトFAQ)。

Q. 備品の購入だけでも申請できますか?

できます。工事を伴わない備品購入のみの申請も認められています。単価50万円(税抜)を超える備品は、所有権の詳細を申請書類に記載する必要があります(特設サイトFAQ)。

Q. グループ会社同士の連携で申請できますか?

できません。代表者が同一、または企業会計が同一(親会社・子会社)の事業者のみでの申請は対象外です(公募要領P.3-4)。資本関係のない地域の事業者との連携が前提です。同一事業者からの2件以上の申請もできません(1件の申請に複数の取組をまとめることは可能です)。

Q. 三次公募はありますか?

未定です。事務局は一次・二次の2回の公募を想定しており、三次公募は申請状況次第としています(特設サイトFAQ)。二次公募を逃すと次の機会があるか分からないため、締切2026年8月18日(火)12:00を前提に段取りするのが安全です。

Q. 補助金はいつ受け取れますか?

原則、事業完了後です。完了実績報告と精算書類の提出、事務局の完了検査を経て精算されます(特設サイトFAQ)。事業期間中の支払いは実施主体側の立替になるため、資金繰りの計画も申請前に立てておく必要があります。

Q. 2次審査に出られない場合はどうなりますか?

申請取下とみなされます(特設サイトFAQ)。2次審査は2026年9月7日(月)・8日(火)・9日(水)のいずれか(予備日9月10日(木))にオンラインで開かれ、日時は1次審査通過者に個別に連絡・調整されます(公募要領P.9)。この3日間は経営層の予定を空けておいてください。