結論 宿泊管理システム(PMS)の費用は、主に初期・月額・連携・保守・カスタマイズ・移行の6区分に分かれます。客室数・連携先・固有運用の有無で総額が大きく変わるため、一律の「相場」は出せません。
根拠 クラウド型(インターネット経由で利用する方式)は初期費用を抑えて月々払い、オンプレミス型(サーバー機器を自館に設置する方式)は導入時に機器の購入費を一括払い。さらにOTA(楽天トラベル、じゃらん、Booking.com等)連携数・決済端末の種類・帳票のカスタマイズが施設ごとに違うため、同じ客室数でも見積額に差が出ます。
まずやること 自館の客室数・連携先(OTA・決済端末・自動精算機)・カスタマイズの有無・移行するデータの4点をリストにします。見積もりを頼む時は、候補2〜3社にこのリストを伝え、6区分の内訳で出してもらいます。
位置付け 費用の次に比べるのは、会社の継続力とサポートです。会社の選び方は、別の記事『ホテルシステムは「会社」で選ぶ』にあります。
費用の区分 何に支払うか 金額が変わる要因
初期費用 ライセンス購入・サーバー構築・初期設定 クラウド/オンプレミス・客室数
月額費用 利用料・クラウド基盤・標準サポート 客室数・契約プラン
連携費用 OTA・決済端末・自動精算機との接続 連携先の数と種類
保守費用 法改正対応・セキュリティ更新・障害対応 サポートの範囲(電話/リモート/駆けつけ)
カスタマイズ費用 自館固有の帳票・運用フローの個別開発 標準設定で済むか、個別開発が要るか
移行費用 旧システムからのデータ移行・切り替え期間の立ち会い支援 移行するデータの種類と年数

各社の見積書で費目の呼び方は異なるため、上記6区分に読み替えて比べます

初期費用と月額、桁の違う金額が並ぶ理由

宿泊管理システムの費用を調べると、会社ごとに料金の示し方が違います。仮に、ある会社の案内が初期費用200万円、別の会社の案内が月額3万円からだったとします。金額の桁が合わず、自館に当てはまるのはどちらか分かりません。

桁が違う原因は、費用の構造の違い。初期費用200万円は、オンプレミス型(サーバー機器を自館に設置する方式)で機器の購入・設定・ライセンスを導入時に一括で払う額です。月額3万円は、クラウド型(インターネット経由で利用する方式)で初期費用を抑え、月々払う利用料です。

つまり、同じ「宿泊管理システムの費用」でも、払い方が違います。初期を安くして月額で払うか、初期にまとめて月額を抑えるか。この構造の違いを知らずに金額だけ比べると、安い方が得に見えて判断を誤ります。

「初期費用0円」を掲げるクラウド型でも、OTAや自動精算機との連携費用が別途かかる場合があります。初期費用だけでは、安いか高いかは決まりません。

費用は6区分で分解する

見積書の費目は各社で呼び名が違い、「導入費」「セットアップ費」「基本料金」「サポート料」などの名前だけでは、何が含まれるのか分かりません。

各社の見積書を横に並べるなら、冒頭の表に挙げた6区分に読み替えます。どの区分に入るか分からない費目(ハード更新費・研修費など)は、別の行に書き出して総額に足します。

初期費用

オンプレミス型はサーバー機器の購入、OS・データベースのライセンス、設置工事、初期設定が入ります。クラウド型は機器購入がないため、初期設定・アカウント開設・導入支援の費用だけになります。

月額費用

クラウド型は毎月の利用料です。金額は契約プランごとに違い、客室数で段階が変わるプランもあります。オンプレミス型は、月額利用料が発生しない会社と、保守契約の一部として月額を設定する会社があります。

連携費用

OTA(楽天トラベル、じゃらん、Booking.com等)、サイトコントローラー(複数のOTA・自社サイトの在庫と料金をまとめて管理するシステム)、自動精算機、クレジットカード端末との接続に個別の費用がかかります。接続ごとに初期と月額が両方かかる場合があるため、どちらも確認します。

保守費用

含まれるのは、法改正への対応(インボイス制度・電子帳簿保存法など)、セキュリティ更新の配布、障害時の問い合わせ対応。オンプレミス型は年間保守料が別途かかり、クラウド型は月額に含まれる場合と、別途サポート契約を結ぶ場合があります。見積書では、法改正への対応が月額(オンプレミス型は年間保守料)に入っているかと、障害時の対応が電話・リモート操作・現地駆けつけのどこまでかを確かめます。

カスタマイズ費用

標準機能の設定変更で済む範囲なら、追加費用がかからない場合や、定額で済む場合があります。自館固有の帳票(例: 団体の後払い代金(売掛)を代理店ごとに締める請求書)や、運用に合わせた画面の追加は個別開発になります。個別開発の費用は内容次第で幅が大きく、一律の目安は出せません。「この運用は標準設定でできるか、個別開発か」を先に聞きます。

移行費用

旧システムから顧客台帳・宿泊履歴・売掛残を移すデータ移行と、切り替え日の前後に新旧のシステムが両方動く期間(並行稼働)の立ち会い支援です。移行するデータの種類と年数が多いほど作業量が増えます。旧データを新システムに取り込むか、旧システムを読み取り専用で残すか。取り込む方が移すデータは多くなり、そのぶん移行費用も上がります。

クラウドとオンプレミスで費用のかかり方が変わる

どちらの方式を選ぶかで、費用が「いつ・いくら」かかるかが変わります。

クラウド型 オンプレミス型
初期費用 低い(機器購入なし) 高い(サーバー・ライセンス購入)
月額費用 かかり続ける なし、または保守契約に含む
法改正対応 月額に含まれる場合と、別途サポート契約の場合あり 保守契約の範囲で対応(別途費用の場合あり)
インターネット回線の障害時 利用できなくなる場合がある 館内のサーバーで動き続ける
サーバー機器の更新 提供元が負担 自館で入れ替え(周期は見積もり時に確認)

初期費用の安さだけで選ぶと、使う年数によっては総額が逆転する場合があります。総額は5年と10年の両方で出して比べます。

どちらが安いかを左右するのは、客室数と利用年数。客室数に応じて月額が段階的に変わるクラウド型のプランでは、客室数が多く、使う年数が長いほど、積み上がる額が大きくなります。そのため客室数が少なければクラウド型が合い、多ければ月額の負担が軽いオンプレミス型の総額がクラウド型を下回ることもあります。

「クラウド型は安い」と一括りにはできません。クラウド型は初期費用+月額×12か月×利用年数+連携費用(サポートが別契約ならその費用も)、オンプレミス型は初期費用+年間保守料×利用年数+サーバー機器の更新費+連携費用を出し、移行とカスタマイズの費用も両方に足して比べます。

見積書は「含まれるもの」と「別途」で読む

見積書が届いたら、各行の金額より先に「何が含まれていて、何が別途か」を確認します。月額費用が安くても、OTA連携・保守・法改正対応が別料金なら、実際に払う額は上がります。

見積書で確認する項目

見積書を2〜3社分並べるときは、各社で違う費目名を冒頭の6区分に読み替えます。各区分の金額をExcelの1行に並べると、差が見えます。

「パッケージ一式 ○○万円」という見積書は、そのままでは他社の見積書と比べられません。6区分のどこに何円入っているか、内訳を出してもらいます。

客室数・連携先・カスタマイズ・移行データで金額は動く

同じシステム会社の同じプランでも、自館の構成で見積額は変わります。金額が変わる要因は4つです。

変動要因 金額への影響 自館で確認すること
客室数 月額料金が客室数に応じて段階的に変わるプランがある 現在の客室数と、増室の計画があるか
連携先の数と種類 OTA・決済端末・自動精算機それぞれに連携費用がかかる。連携先が多いほど合計が増える 現在利用しているOTAの名前、決済端末の機種、自動精算機の有無
カスタマイズの有無 宴会・団体・売掛の固有運用や自館固有の帳票があると個別開発費が加わる 現在のシステムで標準外の運用をしている部分はあるか
移行するデータ 移すデータの種類と年数が多いほど作業量が増え、移行費用が上がる 移したいデータの種類(顧客台帳・宿泊履歴・売掛残)と年数

見積もりの精度は、自館側から伝える情報で変わります。曖昧な見積もりを避けるには、この4点を正確に伝えます

特に連携費用は見落としやすい部分です。「OTA連携費用が月額に含まれる」と思って契約した後に、接続先ごとの初期費用と月額が別だった、という行き違いが起きることがあります。連携したいOTAの名前を1つずつ挙げて、それぞれに初期費用と月額がいくらかかるかを聞きます。

カスタマイズの有無は、商談の前に自館で洗い出しておく項目です。現行システムで「この帳票は当社用に作ってもらった」「この画面の流れは標準と違う」という部分をリストにしておくと、見積もりの精度が上がります。リストがないまま「カスタマイズできますか」とだけ聞いても、「できます」という回答だけが返ってきて、費用の話が後回しになることがあります。

見積もり依頼で伝えること

以下の項目を電話またはメールで伝え、最後に6区分の内訳を依頼します。

見積もり依頼で伝える項目

台本
「宿泊管理システムの見積もりをお願いしたいのですが、うちは客室が○室で、今は○○(現行システム名)を使っています。OTAは楽天トラベルとじゃらん、Booking.comに繋いでいます。決済端末は○○で、自動精算機はありません。宴会と売掛の管理もしているので、そこが標準機能で動くかも含めて見積もりを出してもらえますか。旧システムのデータは顧客台帳と直近3年分の宿泊履歴を移したいです。費用は初期・月額・連携・保守・カスタマイズ・移行の6つに分けて出してもらえますか」

伝える情報の一覧

台本の最後で6区分の内訳を頼むのは、一式いくらだけの見積もりを避け、他社と並べて比べられる見積書を出してもらうためです。

見積書が届いたら、まず冒頭の表の6区分に読み替えて、区分ごとの金額を並べます。「A社は月額が安い代わりに連携費用が高い」「B社は初期費用が高いが保守込みで月額の負担が軽い」といった差が見えたら、その差を、自館の客室数と連携先で計算した5年と10年の総額で比べます。

よくある質問

宿泊管理システム(PMS)の初期費用はどのくらいですか?
一律の金額は出せません。クラウド型には初期費用を抑えたプランがあり、オンプレミス型はサーバー機器の購入と設定の費用がかかるため、初期費用はクラウド型より高くなります。どちらも客室数と連携先の数で変わるため、自館の構成を伝えた上で見積もりを取ります。
月額費用に含まれる範囲は、各社で違いますか?
違います。月額にサポート・アップデート・OTA連携の利用料がすべて含まれる会社もあれば、それぞれ別料金の会社もあるため、月額だけの比較では、実際に払う総額は分かりません。見積書で「月額に含まれるもの」と「別途かかるもの」を一覧にしてもらうと、各社の月額に含まれる範囲を同じ条件で比べられます。
クラウド型とオンプレミス型、費用はどちらが安いですか?
初期費用はクラウド型が安くなります。ただし月額がかかり続けるため、比べるのは5年と10年の総額。客室数に応じて月額が段階的に変わるクラウド型のプランなら、客室数が少なければクラウド型の総額が抑えられ、多ければ月額の負担が軽いオンプレミス型の総額がクラウド型を下回ることもあります。固有の帳票や連携が要る場合は、その費用も各社の見積もりで出してもらい、両方式の総額に足して比べます。
カスタマイズ費用の目安は事前に分かりますか?
標準機能の設定で済む範囲なら、追加費用がかからない場合や、定額で済む場合があります。個別開発になると要件次第で費用の幅が大きく変わるため、一律の目安は出せません。「この運用は標準設定でできるか、個別開発になるか」を先に聞き、個別開発の場合は過去の類似案件でかかった費用を尋ねます。
見積もりを依頼するとき、何を伝えれば正確な費用が出ますか?
客室数、連携したいOTAと決済端末の名前、現行システムから移行するデータの種類と年数、自館固有の帳票や運用(宴会・売掛・団体管理など)を伝えます。この情報が揃えば、月額・連携・カスタマイズ・移行の見積もりの精度が上がります。
保守費用は何に使われていますか?
法改正への対応(インボイス制度・電子帳簿保存法など)、セキュリティ更新の配布、障害時の問い合わせ対応が主な内訳です。保守を切ると法改正への対応が止まり、帳票が法令に合わなくなるリスクを自館が負います。

出典

  1. ビジネスブレーン 導入フロー
    https://miyako.com/services/flow/ (取得日: 2026-08-10)
  2. ビジネスブレーン 会社概要
    https://miyako.com/company/ (取得日: 2026-08-10)
  3. ビジネスブレーン フロントクルーBE 製品情報
    https://miyako.com/services/frontcrew-be/ (取得日: 2026-08-10)

費用の具体額は各社の見積もりでご確認ください。2026-08-10時点の情報です。