「シフト1本」の重さを数字で知る

施設の経営会議で「シフトを1本減らせないか」という話題が出ることがあります。しかし、その「1本」が年間でいくらに相当するかを即答できる人は多くありません。

結論から言えば、フロントのシフト1本(8時間/日)を365日分削減すると、年間で約438万円のコスト効果があります。この数字の内訳と、どのシフトなら削減可能かを本記事で解説します。

シフト1本の年間コスト内訳

まず、シフト1本分のコストを分解します。

直接人件費

時給1,200円 × 8時間 × 365日 = 350万4,000円

社会保険料(事業主負担)

直接人件費の約15% = 52万5,600円

福利厚生・通勤手当

月額約3万円 × 12か月 = 36万円

438万円
シフト1本の年間実質コスト
36.5万円
月額換算
1.2万円
日額換算

この試算は東京近郊の最低賃金水準に近い時給1,200円を前提としています。地方では時給は下がりますが、人材確保の難しさを考えると、実質コストは大きく変わりません。

※ 時給は厚生労働省「令和7年度地域別最低賃金」を参考。社会保険料率は健保・厚年・雇用保険の事業主負担合計の概算値。

どのシフトが削減候補になるか

「シフトを減らす」と言っても、すべてのシフトが同じ条件ではありません。削減可能性を判断する基準は、「そのシフトの業務内容のうち、何%がチェックイン・チェックアウト対応か」です。

深夜シフト(22:00〜翌6:00)

深夜帯のチェックインは全体の5〜10%程度。それでも「万が一の到着」に備えてスタッフを配置している施設が多いのが実態です。事前チェックイン + スマートロック or 暗証番号式の鍵受け取りを導入すれば、深夜帯の有人対応は不要になります。

438万円
深夜シフト削減の年間効果
実現可能性

深夜帯は深夜手当(25%増)が加算されるため、実際のコスト効果は上記よりさらに大きくなります。

早朝シフト(6:00〜10:00の一部)

チェックアウトが集中する時間帯です。事前精算 + ルームキー返却ボックスを設置すれば、チェックアウト対応の大部分は自動化できます。ただし、朝食対応や清掃部門との連携があるため、完全な無人化は難しいケースが多いです。

日中シフト(10:00〜14:00)

チェックアウト後〜チェックイン前の谷間の時間帯です。この時間帯は予約管理、電話対応、事務作業が中心。業務量が少ない施設では、隣接シフトとの統合で1名分を減らせる場合があります。

注意:シフト削減は「今日から1人減らす」ではなく、業務フローの再設計が前提です。チェックイン自動化や事前精算の仕組みを先に導入してから、シフトの見直しに入ってください。順序を間違えると、残ったスタッフに負荷が集中します。

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シフト削減 vs. シフト再配分

シフトを「削減」する以外に、「再配分」するという選択肢もあります。

アプローチ 内容 効果
シフト削減 深夜帯など特定シフトを廃止 直接的なコスト削減(年間438万円/本)
シフト再配分 チェックイン対応をなくし、同じ人数で別業務を担当 間接的な収益向上(アップセル・口コミ改善)

小規模施設では直接的なコスト削減のインパクトが大きく、大規模施設ではスタッフの役割転換による収益向上効果が大きい傾向があります。自施設の規模と課題に合わせて、どちらのアプローチを取るかを判断してください。

年間438万円の使い道

シフト1本分の438万円が浮いたとき、何に使えるかを考えます。

438万円は「何かを我慢して捻出する」金額ではなく、業務設計を見直すだけで生まれるリソースです。その使い方次第で、施設の収益構造が変わります。

自施設での計算方法

シフト1本の年間コスト計算式

(時給 × 1.25 × 勤務時間 × 年間日数)+(月額福利厚生 × 12)= 年間シフトコスト

深夜帯の場合は時給の1.25倍をさらに1.25倍(深夜手当)してください。パート・アルバイトの場合、社会保険の適用条件によって事業主負担が変わりますので、実際の雇用形態に合わせて調整してください。

まとめ:1本のシフトが、年間438万円の経営判断

シフト1本は、日々の運営の中では「1人分の配置」にすぎません。しかし年間で見ると、438万円という無視できない経費です。

このコストが「必要な投資」なのか「見直し可能な支出」なのか。その判断は、フロント業務の中身を分解し、何が自動化できて何が人の対応を必要とするかを見極めることから始まります。