チェックインの手が止まるたびに、電話が鳴っている

フロントスタッフがチェックイン対応をしている最中に電話が鳴る。「すみません、少々お待ちください」とゲストに断って受話器を取る。「駐車場はありますか?」── 公式サイトに書いてある情報だ。30秒で回答して電話を切り、チェックインを再開する。しかし、PMSのどこまで入力したかを思い出すのに数秒かかる。

100室規模のビジネスホテルで、フロントにかかってくる電話は1日平均40〜60件。1件あたり2〜3分として、電話対応だけで1日2〜3時間を費やしています。しかも、電話は予測不能なタイミングで入るため、他の業務を断片化させる効果があります。

40〜60件
1日の電話件数(100室)
2〜3時間
電話対応の合計時間
60%
情報提供で完結する割合

電話を4つに分類する

まず、フロントにかかってくる電話の内容を分類してみましょう。1週間分の電話を記録し、内容ごとに仕分けると、以下の4カテゴリに分かれます。

カテゴリA:情報提供で完結する電話(全体の約40%)

「チェックイン時間は何時ですか」「駐車場はありますか」「最寄り駅からの道順を教えてください」「朝食は何時からですか」。これらは、公式サイトやOTAの施設ページ、予約確認メールに記載されていれば、そもそも電話が発生しない問い合わせです。

カテゴリB:予約の変更・キャンセル(全体の約20%)

「日程を1日ずらしたい」「部屋のタイプを変更したい」「キャンセルしたい」。OTA経由の予約であれば、ゲスト自身がOTAの管理画面で変更できるケースがほとんどです。自社予約の場合も、オンラインで変更できる導線があれば電話は不要になります。

カテゴリC:宿泊中のゲストからの内線(全体の約25%)

「タオルをもう1枚ほしい」「Wi-Fiのパスワードがわからない」「近くにコンビニはありますか」。宿泊中のゲストからの問い合わせは、客室内のインフォメーション(紙、タブレット、QRコード)で多くをカバーできます。

カテゴリD:対面・個別対応が必要な電話(全体の約15%)

「体調が悪いので病院を教えてほしい」「団体の予約について相談したい」「クレーム」。これらは定型的な回答では対応できず、個別のヒアリングと判断が必要です。

「減らせる電話」を減らす── カテゴリ別の対策

カテゴリA対策:情報を「見つけやすい場所」に置く

公式サイトに情報が載っていても、「見つけにくい」ために電話をかけてくるケースが大半です。チェックイン時間、駐車場の有無、アクセス情報は、公式サイトのトップページに大きく掲載する。予約確認メールにもアクセスマップと基本情報を記載する。これだけで、カテゴリAの電話の半数以上は削減できます。

カテゴリB対策:オンラインでの変更導線を整備する

予約確認メールに「予約の変更・キャンセルはこちら」のリンクを記載し、ゲスト自身が操作できるようにします。OTA経由の予約についても、「変更はご予約されたサイトからお願いいたします」と案内する文言を確認メールに入れておくと、電話での問い合わせが減ります。

カテゴリC対策:客室内の情報を充実させる

Wi-Fiのパスワード、館内設備の案内、周辺のコンビニ・飲食店の地図。これらを客室内のインフォメーションカードやQRコードで提供します。QRコードからスマートフォンで閲覧できるデジタル館内ガイドを用意すると、紙の更新コストも削減できます。

フロント業務、もっとシンプルにできます

電話が減れば、フロントの仕事が変わります

資料を請求する

「減らせない電話」に集中する

カテゴリDの電話── 体調不良、クレーム、団体予約の相談── は、対面・個別対応が不可欠です。これらの電話は「減らす」対象ではなく、「丁寧に対応する」対象です。

カテゴリA〜Cの電話を仕組みで減らすことの本質は、カテゴリDの電話に十分な時間と注意を割けるようにすることにあります。1日60件の電話のうち50件が定型的な問い合わせであれば、その50件を仕組みに任せることで、残りの10件にしっかり向き合えるようになります。

電話を「なくす」ことが目的ではありません。
電話予約を好むゲストや、高齢のゲスト、緊急時の連絡手段として、電話は引き続き重要です。目的は、「情報不足が原因の電話」を減らすことであり、電話そのものを廃止することではありません。

まず1週間、電話の内容を記録してみる

電話対応の改善は、まず現状を把握することから始まります。1週間、フロントにかかってきた電話の内容を記録し、A〜Dに分類してみてください。

この記録をもとに、「どこに情報を追加すれば、この電話は発生しなかったか」を1件ずつ検討していくと、改善ポイントが具体的に見えてきます。電話を減らす第一歩は、電話の中身を知ることです。