リネン庫への往復が1日3回。それだけで15分のロス
清掃スタッフが1日の中で「清掃以外」に最も時間を使っているのは何か。多くの施設で、その答えはリネン庫との往復です。カートに積んだタオルが途中で足りなくなり、リネン庫まで取りに行く。シーツの予備がなくなったから、1階まで降りる。1回の往復に3〜5分。1日3回なら15分。8名体制なら、チーム全体で2時間のロスです。
このロスは、カートの積み方を見直すだけで大幅に削減できます。「足りなくなったら取りに行く」という反応型の運用から、「足りなくならないように積む」という設計型の運用に変えること。それがこの記事のテーマです。
カート積載の順序設計:「使う順」に積む
清掃カートには、上段・中段・下段・側面ポケットがあります。多くのスタッフは、リネン庫から出てくる順番にカートに積んでいきます。シーツが先に出てきたら下段に、タオルが次に来たら上段に。この「入手順」の積み方は、作業中の取り出しやすさを考慮していません。
効率的な積載は、「清掃手順に沿った使用順」で設計します。
Step 1:ゴミ袋・ダストクロス(最初に使う)
部屋に入って最初にやるのはゴミ回収と初期拭き。カートの側面ポケットに入れておき、すぐに取り出せるようにする。
Step 2:使用済みリネン回収袋(ゴミ回収と同時に使う)
カート下段のランドリーバッグ。使用済みシーツ・タオルをここに回収する。下段に配置するのは、重量物を低い位置に置く安定性のため。
Step 3:シーツ・枕カバー(ベッドメイク時に使う)
カート中段。ベッドメイクはゴミ回収の次に行う工程。部屋タイプごとに必要枚数が異なるため、シングル用とツイン用を分けて積む。
Step 4:タオル類(バスルーム清掃後に使う)
カート上段。バスタオル・フェイスタオル・バスマットをセットで積む。上段に置くのは、最も頻繁に取り出すアイテムだから。
Step 5:アメニティ・消耗品(最後に補充)
カート側面ポケットまたは専用トレイ。シャンプー・コンディショナー・ボディソープ・歯ブラシセット。部屋タイプに関係なく共通のものが多い。
往復回数を減らす:「パー在庫」の考え方
パー在庫(par stock)とは、「担当する部屋数に対して、カートに積むべき適正量」のことです。ホテル業界では古くからある概念ですが、実際の現場で厳密に運用している施設は多くありません。
パー在庫の計算方法
基本的な計算は、「担当部屋数 × 1室あたりの使用量 + 予備10〜15%」です。
- シングル8室担当の場合:バスタオル8枚 + 予備1枚 = 9枚
- ツイン6室担当の場合:バスタオル12枚 + 予備2枚 = 14枚
- 混在(シングル5+ツイン3)の場合:バスタオル11枚 + 予備2枚 = 13枚
予備は、ゲストが追加リクエストした場合や、汚れがひどく交換が必要な場合に備えるものです。予備をゼロにすると、1室でも想定外があった時点でリネン庫往復が発生します。逆に予備を積みすぎると、カートが重くなり移動が遅くなります。
よくある積載ミスとその影響
ミス1:タオルは十分だがシーツが足りない
タオルは目に見えやすく、足りないとすぐに気づくため多めに積む傾向があります。一方、シーツは枚数が少ない(1室1〜2枚)ため、「あとで取りに行けばいい」と甘く見積もることがあります。しかし、シーツ不足でリネン庫に戻ると、ベッドメイクが途中で止まり、作業のリズムが崩れます。
ミス2:使用済みリネンの回収スペースが不足
新しいリネンを積むことに気を取られ、使用済みリネンを入れるランドリーバッグのスペースを確保していないケース。3〜4室清掃した時点でバッグが満杯になり、リネン庫に降ろしに行く必要が出ます。ランドリーバッグは2枚体制にして、満杯になった1枚をフロアに仮置きし、2枚目に切り替える運用が有効です。
ミス3:アメニティの「セット忘れ」
シャンプーは積んだがコンディショナーを忘れた。歯ブラシセットは積んだが髭剃りがない。部分的な補充忘れは、部屋の中で初めて気づき、カートに戻って探す→ない→リネン庫へ、という3段階のロスにつながります。アメニティは「1室分セット」にまとめてから積むことで防げます。
リネン庫の配置を見直す
カートの積み方だけでなく、リネン庫自体の配置も往復回数に影響します。リネン庫が地下1階にしかない施設と、各フロアにサテライトリネン庫がある施設では、往復にかかる時間がまったく異なります。
サテライトリネン庫の設置が難しい場合は、朝の段階で各フロアに1日分のリネンを仮置きする「プレステージ方式」が現実的です。エレベーターホール脇やバックヤードの一角に、当日分のリネンをまとめて置いておき、各スタッフはそこから補充します。
この方式の課題は、仮置きスペースの確保とリネンの衛生管理です。清潔なリネンを廊下に放置するわけにはいかないため、カバー付きのラックや、鍵付きの収納を用意する必要があります。
カートの積み方は「個人の工夫」ではなく「チームのルール」にする
多くの施設で、カートの積み方はスタッフの個人裁量に委ねられています。ベテランスタッフは自分なりの最適化ができていますが、新人スタッフは「何をどのくらい積めばいいかわからない」状態で作業を始めています。
カートの積載ルールをチームで統一することで、以下の効果が生まれます。
- 新人の立ち上がりが早くなる(考える必要がなくなる)
- 途中のリネン庫往復がチーム全体で減る
- 朝の積載時間が短縮される(ルーティン化するため)
- リネンの発注量の予測精度が上がる(使用量が標準化されるため)
ルールは、壁に貼る一覧表でもカートに貼るチェックリストでも構いません。重要なのは、「この部屋数なら、このリネン量」という対応関係を明文化することです。積み方のばらつきは、そのまま清掃効率のばらつきになります。
