広告を増やす前に、いまの直予約を点検する

来期の集客予算を組み立てるとき、まず広告費を増やす案が机に上がります。ただ施設の損益を細かく見ると、利益を直接削っているのはOTA手数料です。1泊2万円の予約が1件入るたびに、主要OTAの15〜20%が手数料で抜けていきます。年商1億円なら1,500万〜2,000万円が手数料で出ていく計算で、ここに広告費を重ねても、手数料が利益を相殺します。

支配人室で「直予約を増やす」が議題に上がるのに、結局は年初予算が広告に流れがちなのは、何をすれば直予約が伸びるかが具体に落ちていないためです。本稿では、ChatGPT・Perplexity・Google SGEから公式サイトへ流入を作る10の打ち手を、効きやすい順と3か月のすすめ方で並べます。広告・SEO・OTA運用を含む集客の入り口の全体像と並べて読みたい場合は、ホテル集客の最新トレンド2025もあわせてお読みください。本稿はその中で、広告費を直予約のしくみに振り替える打ち手にあたります。

15〜20%
主要OTAの平均手数料率
44.9%
宿泊予約のOTA経由比率
32.6%
国内旅行者のAI活用率(宿探し)

出典: 主要OTAの料金体系(公開条件)、日本旅館協会「令和6年度統計調査」、宿研「旅行者のAI活用に関する調査2025」

AI検索を経由する宿探しが、新しい流入経路になっている

宿研の2025年調査では、国内旅行者の32.6%が宿探しに生成AIを使っています。ChatGPTやGemini、Perplexityに「箱根で静かに過ごせる宿は」と尋ねて返ってきた数件を、そのまま検討対象にする層が育ってきました。同じ宿研が2026年1月に公表した別調査では、AIに宿泊先を相談した338人のうち、AIが挙げた宿に実際に行ったのは47.0%。残り半分が見送ったわけですが、その理由の上位はクチコミ・レビューへの不安(35.4%)、公式情報の少なさ(26.1%)、写真・動画の不足(17.3%)で、「AIの提案に誤りがありそう」は2.2%にとどまります。

つまり、AIは候補に挙げてくれている。最後のひと押しで選ばれないのは、施設側が出している情報の薄さが原因です。逆にここを整えれば、AIに尋ねた旅行者が公式サイトへ直接たどり着き、OTAを介さない直予約に結びつきます。下に並べる10の施策はいずれも、この「情報の厚みと一貫性」をAI検索向けに整える打ち手です。

10の施策を、効きやすい順に塊で進める

10施策を一気に並べると優先順位が見えなくなります。性質の近いものを四つの塊にまとめ、効きやすい順で動かします。

塊1. ブランド検索の引用基盤を整える

自施設のブランド名を含むクエリで、AIが最初に引用するのが公式サイトになる状態をつくります。土台がここにないと、他の打ち手はすべてOTAに食われます。

alt文の書き直し例

NG: <img src="room1.jpg" alt="">
NG: <img src="photo.jpg" alt="写真">

OK: <img src="double-room.jpg"
       alt="21平米のスタンダードダブルルーム。キングサイズベッド、
            デスク、ミニバー、バスルーム付き。窓から東京スカイツリー
            が望める角部屋。">

塊2. 公式サイトの情報密度を上げる

AI検索は具体情報のある一次情報源を優先します。OTAに載っている情報量を、公式が上回っていることが推薦の条件です。

公式とOTAの比較ページの書き方(AIが読みやすい構造)

【公式サイト直予約】
  - 料金: 基本料金の5%オフ
  - 特典: レイトチェックアウト12:00まで無料
  - キャンセル: 宿泊7日前まで無料
  - 支払い: 現地またはクレジット(事前決済割引あり)

【主要OTA経由】
  - 料金: 基本料金
  - 特典: なし
  - キャンセル: OTA各社の規定
  - 支払い: OTA各社の規定

塊3. OTAから公式への動線を差し替える

情報を整えても、入口がOTAに繋がっていれば手数料は止まりません。動線そのものを公式に差し替えます。

塊4. フォームに着いた人を取りこぼさない

AI検索から公式の予約フォームにたどり着いても、ページが重ければ離脱します。最後のひと押しで詰まらないよう、フォーム周辺を直します。

H2見出しの書き直し例

旧:「当館の温泉について」
新:「当館の温泉は源泉かけ流しですか?」

旧:「アクセス方法」
新:「東京駅から何分で到着しますか?」

10施策の効きを測るには、現状把握が出発点

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3か月の順序 ── 土台、情報、質

10施策を一気に進めると現場が回りません。土台→情報→質、の順で3か月に分けて進めます。

1か月目: 土台(施策2、6、10)

FAQPage構造化データの実装、GBPの予約ボタンを公式に差し替え、直予約特典の金額表示。導入のハードルが低く、効きが早く出る打ち手だけを置きます。直予約比率の動きが、ここで実感されることが多いです。

2か月目: 情報(施策1、3、5、7)

ブランド検索でAIが公式を引用する状態づくり、OTA比較ページ、画像alt、宿泊プランのOffer構造化。AI検索での推薦のされ方が目に見えて変わる段階です。

3か月目: 質(施策4、8、9)

Core Web Vitals、レビュー返信の書き直し、ブログのH2質問形化。ここまで進めば、直予約比率の伸びが定着しはじめます。

AI検索施策は、今日やって明日効くものではありません。早い施設で1か月、平均3か月で効きが見えはじめます。途中で成果が読みにくい時期もありますが、順序に沿って進めてください。

OTAをやめるのでなく、流入の組み合わせを変える

OTAは新規顧客の獲得経路として依然有効です。10施策の目的はOTAをやめることではなく、リピーター・ブランド検索・AI検索の3経路を公式に束ね、流入の組み合わせを変えることにあります。比率の話と考えてください。

2026年現在、AI検索はまだ黎明期で、先に手を入れた施設ほど引用源として固定されやすい段階にあります。10施策のうちまず3つ、来月までに動かしてみてください。3か月後、OTA手数料が実額でいくら下がったかを測れば、次の3つへの投資判断もはっきりします。施策の進め方や外部の相談先の見極めまで含めて検討したい場合は、ホテルコンサルタントに相談する前に確認したいこともあわせて参照してください。