ターンダウンサービスとは何か、そもそも必要なのか

ターンダウンサービスとは、夕方から夜にかけてゲストの客室を訪問し、就寝準備を整えるサービスです。具体的には、ベッドカバーを折り返す、使用済みタオルの交換、ゴミ箱の回収、カーテンを閉める、ナイトウォーターやチョコレートの設置、照明の調整などが含まれます。

フルサービスのラグジュアリーホテルでは標準的なサービスですが、中規模のシティホテルやビジネスホテルでは「やるべきかどうか」自体が判断の対象になります。コストはかかるが、口コミ評価に影響するかもしれない。やめたいけど、やめたときの影響がわからない。この記事では、コストと満足度の両面からターンダウンサービスの判断基準を整理します。

ターンダウンサービスのコスト構造

ターンダウンサービスにかかるコストは、直接人件費とリネン・アメニティの消耗品費に分けられます。

10〜15分
1室あたりの所要時間
200〜400円
1室あたりの人件費コスト
50〜150円
1室あたりの消耗品コスト

100室の施設で稼働率80%、全室にターンダウンを実施する場合、1日あたり80室 × 350円(平均)= 28,000円。月間で約84万円。年間で約1,000万円。これはフルタイムスタッフ1.5名分の人件費に相当します。

客室タイプ別の費用対効果

ターンダウンサービスのコストは一律ですが、効果は客室タイプによって大きく異なります。

スイート・エグゼクティブ(ADR 30,000円以上):1室あたり350円のコストに対し、宿泊単価の1%程度。ゲストの期待値が高く、口コミでの評価にも直結しやすい。費用対効果は高い。

スタンダードツイン(ADR 12,000〜18,000円):1室あたり350円は宿泊単価の2〜3%。レジャー客にとっては嬉しいサプライズになることもあるが、ビジネス客は「部屋に入られた」ことに抵抗を感じるケースもある。効果はゲスト属性に依存する。

シングル・エコノミー(ADR 8,000円以下):1室あたり350円は宿泊単価の4%以上。ビジネス利用が中心で、ゲストの多くは夕食後に帰室するため、ターンダウンの実施タイミングが難しい。費用対効果は低い。

省略しても影響が少ないライン

ターンダウンサービスの構成要素をひとつずつ見ていくと、「省略しても満足度に影響しない要素」と「省略すると満足度が下がる要素」に分けられます。

省略可能な要素

省略すると影響が出る要素

ターンダウン判断マトリクス

客室タイプ × ゲスト属性で判断:

スイート / VIP → フルターンダウン(省略しない)
ツイン / レジャー客 → タオル交換 + ゴミ回収のみ(簡易版)
ツイン / ビジネス客 → 希望制(チェックイン時に確認)
シングル / エコノミー → ターンダウンなし

希望制の運用:
  - チェックイン時に「夕方のお部屋の整え直しをご希望ですか?」と確認
  - 希望者のみ実施。DND表示の部屋はスキップ
  - 非希望者にはナイトウォーターのみドア前に設置(接触なし)

ターンダウンを「やめる」ときの注意点

全面廃止ではなく、段階的な縮小が現実的です。いきなり全室廃止すると、常連客や高単価客からの反発が起きるリスクがあります。

注意:ターンダウンを縮小する場合、OTAの施設説明やサービス一覧の記載を必ず更新してください。「ターンダウンサービスあり」と記載したまま実施しないと、口コミで「書いてあるのにやってくれなかった」というネガティブ評価につながります。

段階的縮小のステップ

  1. まず、シングル・エコノミー客室を希望制に変更する
  2. スタンダードツインを「タオル交換+ゴミ回収」の簡易版に切り替える
  3. スイート・エグゼクティブのみフルターンダウンを維持する
  4. 3ヶ月後に口コミスコアの変動を確認し、影響がなければ現状維持

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「ターンダウン廃止」ではなく「再定義」

ターンダウンサービスを「やるか、やらないか」の二択で考えると判断が難しくなります。重要なのは、「ゲストが就寝前に何を期待しているか」を起点に、サービス内容を再定義することです。

かつてのターンダウンは、「スタッフが客室を訪問して準備する」ことが前提でした。しかし、コロナ禍以降、「客室に入られること」に抵抗を感じるゲストは増えています。ドア前にナイトウォーターを置く、アプリ経由でタオル追加のリクエストを受け付ける、といった「非接触のターンダウン」も選択肢になりつつあります。

清掃チームの夕方シフトをターンダウン専任にしている施設では、廃止・縮小によってシフトの組み替えが必要になります。浮いた人件費をどこに再配分するか(たとえば翌朝のチェックアウト清掃の人員強化)まで含めて検討してください。