結論から言えば、約1.5〜2倍。ただし「何に時間がかかるか」を知らないと対策が打てない

ペット同伴可の客室をチェックアウト後に清掃すると、通常のスタンダードルームと比べて1.5〜2倍の時間がかかります。スタンダードルームの清掃が25〜30分だとすると、ペットルームは40〜60分。この差は、通常清掃にはない追加工程が複数発生するためです。

ペット同伴プランを導入したものの、清掃工数の見積もりが甘く、後続の客室清掃が押してしまう。あるいは、ペットルームの清掃品質にバラつきが出て、次のゲストからクレームが入る。こうした問題は、ペット同伴プランを始めた施設が最初にぶつかる壁です。

この記事では、ペットルームで発生する追加作業の内訳、専用チェックリスト、追加清掃料金の設計について整理します。

ペットルーム特有の追加作業── 通常清掃との差分

通常の客室清掃に加えて、ペットルームでは以下の作業が発生します。これが「1.5〜2倍」の正体です。

1. 抜け毛の除去(+10〜15分)

最も時間がかかる工程です。カーペット、ベッドスプレッド、ソファ、カーテンの裾に付着した毛を、粘着ローラーと掃除機で除去します。通常の掃除機がけでは取りきれないため、粘着ローラーでの仕上げが必須になります。特にカーペット敷きの部屋では、繊維の奥に入り込んだ毛を取るのに時間がかかります。

2. 臭い対策(+5〜10分)

ペット臭は通常の換気だけでは取れません。消臭スプレーの噴霧に加え、ファブリック類(カーテン、ソファカバー)への個別対応が必要です。臭いの強さによっては、オゾン発生器を使った脱臭が必要になる場合もあります。この判断を清掃スタッフが現場で行う必要があるため、マニュアル化しておかないとスキップされがちです。

3. 汚損・損傷の確認(+5分)

家具の脚の噛み傷、壁紙の引っかき傷、床の粗相跡を確認します。この確認は清掃の一環であると同時に、損傷があった場合のゲストへの請求判断にもつながるため、写真記録を残すことが重要です。

4. ペット用備品の回収・洗浄(+5分)

ケージ、食器、トイレシート、マットなどペット用備品の回収と洗浄。使い捨て備品は廃棄し、レンタル備品は洗浄して次のゲスト用に準備します。

1.5〜2倍
通常比の清掃時間
40〜60分
ペットルーム1室の目安
+4工程
通常清掃との差分

ペットルーム専用チェックリスト

通常の客室清掃チェックリストにペットルーム用の項目を追加する方法もありますが、項目数が多くなりすぎると形骸化します。ペットルーム専用のチェックリストを別途用意するほうが実用的です。

清掃スケジュールへの影響── ペットルームは「後回し」にしがち

清掃チームがペットルームを後回しにする傾向があります。理由は単純で、時間がかかるからです。限られた時間で多くの部屋を仕上げなければならない中、1室に40〜60分を割くのは心理的な負担が大きい。結果として、ペットルームが最後に回され、チェックイン時間に間に合わないケースが発生します。

対策:清掃順序にペットルームを組み込む

ペットルームを「後回し」ではなく、清掃順序の中にあらかじめ組み込みます。たとえば、1フロア10室のうちペットルームが2室ある場合、3室目と7室目にペットルームを配置する。こうすることで、通常清掃とペットルームが交互になり、清掃スタッフの負荷が分散されます。

もう一つの方法は、ペットルーム担当を固定することです。ペットルームの清掃には慣れが必要で、抜け毛の除去方法や臭い判断のスキルは経験で向上します。担当を固定することで、作業時間の安定と品質の均一化が期待できます。

ペットルームの清掃進捗、リアルタイムで把握できていますか?

部屋タイプ別の清掃時間を可視化し、スケジュールの遅れを防ぎます

資料を請求する

追加清掃料金の考え方── コストを宿泊料金に転嫁する方法

ペットルームの清掃コストは、通常客室に比べて確実に高くなります。この差分をどう回収するかは、施設の料金設計に関わる問題です。

方法1:ペット同伴料金に含める

ペット同伴料金(1泊3,000〜5,000円が一般的)の中に、追加清掃コストをあらかじめ含めて設計する。ゲストにとってはシンプルで分かりやすい方法です。ただし、ペット同伴料金が他施設と比較されるため、料金設定のバランスが必要です。

方法2:損傷時の別途請求

通常清掃の範囲を超える損傷(カーペットの粗相によるシミ、家具の噛み傷)が発生した場合に、別途請求する方式です。チェックイン時にゲストの同意を得ておく必要があります。写真記録がなければ請求の根拠を示せないため、清掃時の損傷確認と写真撮影が前提になります。

方法3:連泊時のペットルーム清掃オプション

連泊ゲストに対して、「毎日清掃(追加料金あり)」と「隔日清掃(追加料金なし)」を選択肢として提示する。ペットの種類や頭数によって臭いの蓄積速度が異なるため、ゲスト自身に選んでもらう方式です。

ペットアレルギーのゲストが次に同じ部屋を利用する可能性があります。ペットルーム使用後は、通常清掃のレベルでは不十分です。特に抜け毛とダンダー(フケ)の除去は、アレルギー反応を引き起こすレベルまで徹底する必要があります。ペットルームの後に一般客を入れる場合のルールも明確にしてください。

ペットの種類による清掃負荷の違い

犬と猫では、清掃の負荷ポイントが異なります。

犬の場合は、抜け毛の量が多い(特に長毛種)、散歩後の足裏の汚れ、臭いが強い傾向があります。一方、猫の場合は、爪とぎによる家具・壁紙の損傷、トイレ砂の飛散、高い場所への毛の付着が特徴です。

チェックイン情報にペットの種類・サイズ・頭数が含まれていれば、清掃チームは事前に必要な資材と時間を見積もることができます。しかし、この情報がフロントから清掃チームに伝わっていない施設が多いのが現状です。

情報が清掃チームに届いていないと、準備ができない

ペットルームの清掃に必要な追加資材(粘着ローラー、消臭スプレー、ペット用備品の補充分)は、事前にカートに積んでおく必要があります。しかし、「どの部屋がペットルームだったか」が清掃開始時にわからないと、通常の資材だけでフロアに上がり、途中で取りに戻ることになります。

予約情報のペット同伴フラグ、チェックイン時のペット種類・頭数、そして清掃チームへの伝達。この3つが途切れなくつながっていることが、ペットルーム清掃を効率的に回す前提条件です。清掃チームが「この部屋はペットルームだった」と知るのが、ドアを開けた瞬間では遅すぎます。