結論から:OOOは「在庫から除外」、OOSは「一時的に使えない」

OOO(Out of Order)とOOS(Out of Service)。どちらも「部屋が使えない」ことを意味しますが、ホテルの収益管理においては明確に区別すべきステータスです。OOOは販売在庫から完全に除外される状態、OOSは在庫には含まれたまま一時的に利用できない状態を指します。

この違いがなぜ重要か。RevPAR(客室あたりの収益)の計算式に直接影響するからです。RevPARは「客室売上 / 販売可能客室数」で算出します。OOOの部屋は分母の販売可能客室数から除外されるため、RevPARの数字は維持されやすくなります。一方、OOSの部屋は分母に含まれたまま売上がゼロなので、RevPARを押し下げます。

つまり、同じ「使えない部屋」でも、OOOとOOSのどちらに分類するかで、経営指標の見え方が変わるのです。

OOO:物理的に販売できない状態

OOOは、その部屋に物理的な問題があり、ゲストを泊められない状態です。具体的には以下のようなケースが該当します。

いずれも「お金を払ってくれるゲストがいても、泊めてはいけない」状態です。OOOの部屋は、予約システム上で販売対象から外れ、在庫として表示されません。

OOS:一時的に販売を止めている状態

OOSは、物理的には使えるけれど、ホテル側の判断で一時的に販売を止めている状態です。

OOSの部屋は「今は売らない」だけであって、「売れない」わけではありません。状況が変われば、同日中に販売可能に戻すことができます。

RevPARへの影響を数字で見る

100室のホテルで、5室が使えない場合を考えます。ADR(平均客室単価)は10,000円、販売可能な部屋は95%が埋まっているとします。

9,500円
5室をOOOにした場合のRevPAR
9,025円
5室をOOSにした場合のRevPAR
475円差
1室あたり/1日の見え方の違い

試算条件: 100室、ADR 10,000円、稼働率95%(販売可能客室ベース)

OOOにすると分母が95室になるため、RevPARは 95室 x 10,000円 x 95% / 95室 = 9,500円。OOSにすると分母は100室のままなので、95室 x 10,000円 x 95% / 100室 = 9,025円。同じ実態なのに、ステータスの分類だけでRevPARに475円の差が出ます。

この差が問題になる場面

RevPARは、オーナーや運営会社への月次報告、STR(業界ベンチマーク)との比較、投資家向けの説明に使われます。OOOとOOSの使い分けが曖昧だと、自施設のRevPARが実態より良く見えたり悪く見えたりします。

特に注意すべきは、「本来OOSであるべき部屋をOOOにして、RevPARの数字を維持する」という運用です。意図的かどうかにかかわらず、OOOの濫用はデータの信頼性を損ないます。

OOO / OOS 比較表

項目OOO(Out of Order)OOS(Out of Service)
定義物理的に販売不可一時的に販売停止
販売在庫除外される含まれたまま
RevPAR計算分母から除外分母に含む
復帰見込み修繕完了後(日〜週単位)当日〜翌日
判断権限施設管理/GM承認が望ましいフロント/清掃リーダーで判断可
代表的なケース設備故障、改装工事、水漏れ清掃未完了、定期点検、VIPホールド

現場で起きている判断の曖昧さ

「壊れているけど泊まれなくはない」問題

バスルームのシャワーヘッドが1つだけ動かない。テレビのリモコンが反応しない。クローゼットの扉がスムーズに開閉しない。こうした「泊まれなくはないが、快適ではない」状態の部屋を、OOOにするかOOSにするか。あるいはそのまま販売するか。現場では日常的に迷う判断です。

明確な基準がない施設では、判断がスタッフ個人の感覚に依存します。Aさんは「リモコンくらいなら販売する」と判断し、Bさんは「クレームになるからOOSにする」と判断する。結果、同じ不具合でも日によって扱いが変わります。

OOOの解除忘れ

修繕が完了したのに、PMSのステータスがOOOのまま放置されるケースも多発します。修繕業者が作業を終え、施設管理に報告し、施設管理がフロントに伝え、フロントがPMSを操作する。この4ステップのどこかで情報が止まると、すでに使える部屋が「使えない部屋」として在庫から消えたままになります。

特に繁忙期にこれが起きると、販売できる部屋を無駄にしていることになります。

OOO/OOS誤用のリスク
OOOとOOSの基準が曖昧な施設では、3つのリスクが同時に発生します。(1) RevPARが実態を反映しなくなり、経営判断の精度が下がる。(2) 販売できる部屋が在庫から消え、売上機会を逃す。(3) 本来OOOにすべき部屋がOOSのまま販売され、ゲストクレームにつながる。

客室ステータスの判断、属人化していませんか?

OOO/OOS/販売可能の切り替えを、基準とフローで仕組み化

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運用ルールの設計── 判断基準をつくる

不具合カテゴリ別の判断テーブル

すべての不具合を個別に判断するのではなく、カテゴリごとに事前に基準を決めておく方法が現実的です。

判断基準の例

不具合カテゴリOOOOOSそのまま販売
空調が完全停止該当--
水漏れ(使用に支障あり)該当--
ドア/窓の施錠不良該当--
TV映らない-該当-
リモコン不調--代替リモコンで対応
壁紙の小傷・汚れ--修繕計画に記録
清掃未完了-該当-
定期点検中-該当-

判断に迷うケースは必ず出てきます。そのときのエスカレーション先(清掃リーダー→施設管理→GM)を決めておけば、スタッフが1人で悩む時間をなくせます。

ステータス変更の承認フロー

OOOへの変更はGM(または施設管理責任者)の承認を原則とし、OOSへの変更はフロントリーダーまたは清掃リーダーが判断できるルールにするのが一般的です。OOOは在庫数に直接影響するため、変更のハードルを高くしておく合理性があります。

逆に、OOOからの復帰(販売可能への変更)は、検査完了報告と連動させます。修繕完了→検査→清掃→販売可能という復帰フローを明文化しておけば、解除忘れのリスクが下がります。

月次でOOO/OOS日数を可視化する

運用ルールを作っても、実態を把握できなければ改善は進みません。月次レポートに以下の数字を加えることを推奨します。

数字が蓄積されると、「空調故障のOOOが毎年夏に集中している」「清掃遅延によるOOSが月曜日の午前に多い」といったパターンが見えてきます。パターンがわかれば、予防的な手を打てます。

ステータスの区別は「面倒な作業」ではなく「判断の精度」

OOOとOOSの区別は、単なるPMSの操作ルールではありません。「この部屋はいつ売れるようになるのか」「本当に販売できない状態なのか」「修繕の優先度はどうか」── こうした判断の精度を上げるための分類です。

基準を決め、判断フローを整え、月次で実態を可視化する。派手な取り組みではありませんが、販売可能客室数を1室でも増やすための地道な仕組みづくりです。