稼働率95%の日、スタッフの数は変わらない

ゴールデンウィーク、お盆、年末年始。稼働率が90%を超える繁忙期。チェックアウトは80室を超え、チェックインもほぼ同数。しかし、清掃スタッフの人数は閑散期と同じ8名。派遣を手配しようにも、繁忙期は他施設も同じ状況で、人が集まらない。

増員ができないなら、同じ人数でどう回すか。この記事では、繁忙期に増員なしで清掃を回すための3つの工夫を、具体的な運用方法とともに解説します。

工夫1:優先度の動的変更

閑散期は「上の階から順番に」で回る清掃も、繁忙期は「次のゲストの到着時刻が早い部屋から」に切り替えます。これが優先度の動的変更です。

具体的な運用

朝のブリーフィングで、アーリーチェックインが入っている部屋を最優先案件として共有します。次に、当日の予約一覧から到着時刻の情報を確認し、15時前の到着が見込まれる部屋を「高優先」に設定します。

繁忙期特有のポイントは、この優先順位が1日のなかで複数回変わることです。10時の段階では8階が最優先だったのに、10時半にフロントから「3階の305号室、お客様が12時に来ることになった」と連絡が入る。この変更を、清掃チーム全体に即座に伝えられるかどうかが、繁忙期の運用の生命線です。

95%
繁忙期の稼働率
80室
1日のチェックアウト数
5〜8回
1日の優先順位変更回数

工夫2:連泊清掃の間引き

繁忙期の連泊客に対するステイ清掃を、通常の「毎日」から「1日おき」に変更する方法です。

なぜ間引きが有効か

100室の施設で稼働率95%、うち30%が連泊客だとすると、連泊客は約28室。毎日のステイ清掃を1日おきにすれば、14室分の作業を削減できます。1室15分として、14室 × 15分 = 210分 = 約3.5時間。これはスタッフ1名分の半日の稼働に相当します。

間引きの運用ルール

注意:ステイ清掃の間引きは、事前にゲストへの説明が必要です。チェックイン時に「連泊のお客様には、環境配慮の取り組みとして清掃を1日おきとさせていただいております。ご希望の場合は毎日の清掃も承ります」と案内します。「環境配慮」の文脈で説明すると、ゲストの理解を得やすくなります。

工夫3:タスク分業化

通常、1名のスタッフが1つの部屋のすべての工程(ベッドメイク・バスルーム・備品・掃除機)を担当します。繁忙期にこれを分業化し、「ベッドメイク専任」「バスルーム専任」「備品・仕上げ専任」のチームを組む方法です。

分業化のメリット

分業化のデメリット

分業化の運用パターン

パターンA:2チーム制(大きく分ける)

チーム1(4名):ベッドメイク+リネン回収。各部屋に入り、ゴミ回収→リネン回収→ベッドメイクまで完了して次の部屋へ。チーム2(4名):チーム1が完了した部屋に入り、バスルーム清掃→備品補充→掃除機→最終チェック。チーム1が先行し、チーム2が追いかける形。

パターンB:ペア制(2名1組)

2名で1室に同時に入る。1名がベッドメイク、もう1名がバスルーム。平行作業で1室あたりの所要時間を約40%短縮。ただし、部屋が狭い場合は2人で作業しにくい。ツイン以上の客室で有効。

繁忙期の清掃、仕組みで乗り切りませんか?

優先順位の動的変更をリアルタイムで清掃チームに届ける仕組み、ご紹介します

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3つの工夫の組み合わせ

これら3つの工夫は、どれか1つを選ぶのではなく、組み合わせて使うことで効果が最大化します。

優先度の動的変更で「何を先にやるか」を決め、連泊間引きで「やらなくていいこと」を減らし、タスク分業化で「1室にかかる時間」を縮める。この3つを同時に回すことで、増員なしでも繁忙期の稼働率95%に対応できる体制が組めます。

ただし、3つすべてを一度に導入するのは混乱のもとです。まずは優先度の動的変更から始めて、次のシーズンで連泊間引きを追加し、その次に分業化を試す。段階的に導入することで、現場の負荷を抑えながら体制を強化していくのが現実的です。

増員に頼らない体制は、閑散期にも効く

繁忙期のために考えた3つの工夫は、実は閑散期にもメリットがあります。優先度の動的変更は、少ないチェックアウトでも「先にやるべき部屋」を明確にします。連泊間引きのルールは、閑散期でも適用することで人件費を削減できます。分業化のスキルは、急な欠勤があったときにチームで穴を埋めるための練習になります。

増員で対処するのは、短期的には楽ですが長期的な体質改善にはなりません。「同じ人数で、もう少しだけ多くの部屋を、もう少しだけ早く回す」。この積み重ねが、年間を通じた清掃オペレーションの底上げにつながります。