直予約が増えない本当の理由
出典: 日本旅館協会「令和5年度/令和6年度 営業状況等統計調査」、Arch「ホテル直販率調査2025」
「公式サイトを最安にしている」「予約エンジンも導入した」。それでも直予約が増えないホテルは少なくありません。日本旅館協会の調査では、国内宿泊施設の直予約比率は平均14.4%にとどまり、44.9%がOTA経由です。問題は価格や予約システムではなく、そもそも公式サイトにたどり着くまでの導線にあることが多いのです。
旅行者の宿探しの行動パターンを考えてみてください。多くの場合、「エリア名 + ホテル」でGoogle検索し、上位に表示されるOTAで比較・予約します。公式サイトの存在すら知らないまま予約が完了するケースが大半です。しかし、Arch社の2025年調査では、ベストレート保証とAI検索対策を組み合わせた施設が直予約比率58%を達成した事例も報告されています。ポテンシャルは十分にあるのです。
AI検索が変える「発見」のプロセス
AI検索では、旅行者は「箱根で子連れにおすすめの温泉旅館」のような具体的な質問を投げかけます。AIは質問の文脈を理解し、最適な施設を名指しで推薦します。
ここで重要なのは、AIの推薦に「Booking.comで予約できます」ではなく「公式サイトはこちら」という情報が含まれる可能性があることです。施設の公式サイトの情報がAIに正しく認識されていれば、OTAを介さない直接的な導線が生まれます。
AI推薦から直予約への流れ
- 旅行者がAI検索で具体的な質問をする
- AIが御施設を名指しで推薦する
- 推薦文中に公式サイトや特徴が紹介される
- 旅行者が公式サイトを訪問し、直接予約する
この流れでは、OTAの比較画面を経由しません。AIが「この施設がおすすめ」と推薦した時点で、旅行者の意思決定は大きく進んでいるからです。WASIMILの調査データでも、AI検索対策を実施した施設では公式サイトへの直接流入が平均13%増加したと報告されています。
出典: WASIMIL「ホテルDX動向レポート2025」
直予約につながるAIO対策のポイント
公式サイトの情報充実度がカギ
AIが施設を推薦する際に参照する情報源は、公式サイト、OTAページ、口コミサイト、メディア記事など多岐にわたります。しかし、公式サイトの情報が最も「施設側が意図した正確な情報」であるべきです。
OTAのページは写真と基本情報が中心ですが、公式サイトでは施設のストーリー、こだわり、ゲストへの想いまで伝えることができます。AIはこうした文脈情報を理解し、推薦理由として活用します。
例: 「築100年の古民家を改装した全8室の宿。地元の山菜を使った里山料理と、渓谷を望む貸切露天風呂が自慢です」。こうした具体的な記述は、AIが「静かな大人の宿を探している」旅行者に推薦する根拠になります。
口コミの方向性をコントロールする
AIは口コミも重要な情報源として参照します。口コミの内容が施設のターゲット層と一致していることが重要です。ファミリー向けの宿なら「子供が喜んだ」という口コミ、ビジネス向けなら「Wi-Fiが快適」「駅近で便利」という口コミが、AIの推薦精度を高めます。
口コミを直接操作することはできませんが、ゲストが口コミで言及したくなるような体験を意図的に設計することは可能です。チェックイン時のウェルカムサービス、客室に置くメッセージカード、チェックアウト後のフォローメールなど、口コミに書かれやすい「記憶に残る瞬間」を意識的に作り込むことが重要です。
予約導線の最適化
AIに推薦されて公式サイトを訪問したゲストが、スムーズに予約完了できる導線が必要です。トップページから予約完了まで3クリック以内が目安。モバイルでの予約体験は特に重要です。AI検索はスマートフォンからの利用が多いため、モバイルファーストの予約導線設計は必須です。
数字で見る直予約のインパクト
OTA経由の予約を1件直予約に切り替えるだけで、手数料分がそのまま利益になります。1泊1万円の客室をOTA経由(手数料15%)で販売した場合と直予約の場合、年間1,000泊で150万円の差が生まれます。
日本旅館協会の統計では直予約比率14.4%が平均ですが、これを仮に30%に引き上げた場合、年間売上1億円の施設では追加で約230万円の利益が生まれる計算になります。直予約比率の改善は、売上を増やさなくても利益を増やせる施策です。
出典: 日本旅館協会「令和6年度 営業状況等統計調査」をもとに試算
AI検索は、この「OTA経由から直予約」への切り替えを促進する新しいチャネルです。ビジネスブレーンでは、38年間の宿泊業支援の実績をもとに、AI検索分析から直予約改善までを一貫してサポートしています。
