「おすすめ」で名前が挙がった宿は、5軒に1軒だった

競合の名前がChatGPTの回答に並んでいた。自館の名前はそこになかった。そんな場面をきっかけに、AI検索で自館がどう見えているかを気にし始めた経営者は少なくありません。実際のところ、名前を知らない旅行者の前に自館は出ているのか。当社はそれを数字で確かめました。

2026年7月22日、全国の宿泊施設195軒を統一の手法で一斉に測定しました。「〇〇(エリア)で〇〇(業態)のおすすめは?」と、施設名を伏せて尋ねる発見の検索で、候補5件のなかに名前が挙がったのは、測定できた148軒のうち28軒。割合にして18.9%です。名前を知らない旅行者の前に出ていたのは、5軒に1軒だけでした。

一方で、施設名を出して「〇〇はどんな宿か」と尋ねる指名の検索では、195軒中190軒=97.4%が、所在地と特徴まで正しく説明されました。名前という手がかりさえ渡せば、AIはほぼ答えられます。届くかどうかは、その名前を知らない人にどう見えるかで決まる。指名の97.4%と発見の18.9%、その78.5ポイントの落差が、今回いちばんはっきり出た事実です。

18.9%
「おすすめ」検索で名前が挙がった割合
97.4%
施設名で所在地・特徴を説明できた割合
195軒
2026年7月22日に一斉測定した対象

出典: ビジネスブレーン調べ 2026年7月

挙がった28軒の位置と、業態ごとの差

名前が挙がった28軒のなかにも、置かれる位置には偏りがあります。候補の先頭に来たのが16軒、2番目が5軒、3番目が7軒。挙がった施設の57%(16/28)が先頭でした。5位までを候補として数えましたが、実際に挙がった28軒はすべて3番目までに収まり、4〜5番目に置かれた施設はありませんでした。境目は「上位に食い込むか、まったく出ないか」に寄っています。

業態で見ると、差はさらにはっきりします。

業態別「おすすめ」検索での言及率 温泉旅館 34%(11/32) シティホテル 18%(2/11) ビジネスホテル 16%(5/31) 汎用ホテル 5%(1/20) リゾートホテル 0%(0/15) 0% 10% 20% 30% 40%

業態別の「エリア+おすすめ+業態」検索での言及率(かっこ内は言及軒数/測定軒数)

出典: ビジネスブレーン調べ 2026年7月。測定軒数(n)の小さい区分は幅をもって読む

温泉旅館は32軒中11軒(34%)で最も高く、リゾートホテルは15軒すべてが候補に入りませんでした(0%)。あいだにシティホテル18%(2/11)、ビジネスホテル16%(5/31)、汎用的なホテル5%(1/20)が並びます。ただしシティホテルやリゾートホテルは測定軒数が10〜15軒と小さく、1軒の増減で数字が大きく動きます。順位そのものより、温泉旅館が頭ひとつ抜けている構図として読んでください。

「名前を言えば分かる」のに「条件で探すと消える」

97.4%対18.9%。この落差が示すのは、AIが自館を知らないのではなく、思い出すきっかけを持っていないということです。名前という手がかりを渡せば説明できる。しかし「箱根で露天風呂のある旅館」のような条件だけでは、候補として名前が浮かんでこない。指名で答えられる施設が、発見では候補に入らない。多くの宿がこの状態に置かれています。

指名では正しく説明できるのに、旧名でしか候補に出てこない施設もありました。改称やリブランドのあと、Web上の情報が旧名のまま溜まっていると、AIは新しい名前と結びつけられません。名前を知る常連には届いても、新規の旅行者からは見えないままです。

なぜ発見の検索で名前が挙がらないのか

AIが条件で宿を探すとき、まずWeb検索の上位から「その条件で名前の挙がる施設」を拾い、そこに載っている施設だけを候補に組み立てます。だから公式サイトやまとめ記事に「エリア×業態×特徴」のセットで名前が出ていないと、指名では答えられても発見では候補に入りません。指名の検索が施設名という直接の手がかりで引けるのに対し、発見の検索は第三者のWeb上に名前が置かれているかどうかで決まる。測定の差はこの一点から生まれています。

温泉旅館の言及率が高いのは、「温泉地名+旅館」という強い結びつきがWeb上に数多く存在し、観光メディアやOTAの特集で名前が挙がりやすいためです。逆にビジネスホテルや汎用的なホテルが低いのは、設備や立地が横並びに見えやすく、まとめ記事で固有名として拾われにくいことが効いています。同じAIでも、周辺に置かれた情報の厚みで結果が分かれます。

さらに10軒では、公式サイトが検索の上位に見当たらない、または情報の欠落が目立ちました。公式サイトが根拠に使われないと、OTAや第三者の情報だけが材料になり、古い設備や誤った案内がそのまま説明に採用されます。事実を自分の側から差し出せていない施設ほど、AIの答えは揺れます。

自館は19%側か81%側か、今日30分で確かめる

自館がどちら側にいるかは、経営者自身の手で確かめられます。ChatGPTでもGeminiでも構いません。順にこう試してください。

  1. 指名テスト。「(自館の正式名称)はどんな宿ですか」と尋ねる。所在地・客室・特徴が正しく返れば、195軒中190軒に入る側です。旧名や誤った設備が混ざれば、その時点で直すべき情報がWeb上に残っています。
  2. 発見テスト。施設名を伏せ、「(自館のエリア)で(自館の業態)のおすすめは?」と尋ねる。候補5件に自館が入るか。入らなければ、名前を知らない旅行者からは見えていない81%側です。
  3. 出典テスト。発見の回答で、根拠に自館の公式サイトが挙がるか確かめる。OTAや口コミだけが根拠なら、事実の主導権を第三者に預けています。

ここで一つでも引っかかったら、直す順番は決まっています。まず公式サイトに「エリア×業態×特徴」を同じページで結びつけて書く。その手順はホテルのLLMO対策の進め方に、実際の診断例はLLMO対策の診断実例にまとめています。構造化データをまだ入れていなければ、無料の構造化データ作成ツールで用意できます。

自館は19%側か、81%側か

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調査の方法と、正直な限界

測定は、当社のAI検索診断と同じ方式で行いました。Web検索の上位結果だけを根拠にAIの回答を再現し、対象施設が候補に挙がるかを記録する実観測です。発見の検索では施設名を検索語に入れないブラインドの測定にして、名前を知らない旅行者の見え方に揃えました。数字を正しく受け取ってもらうために、限界もそのまま書きます。

測り方は違いますが、AI関連メディアの ai.japanstep.jp が2026年5月に紹介した調査では、宿泊施設の約5割がAI検索で引用ゼロとされています(出典)。指標も対象も異なるため単純には比べませんが、「名前を知らない旅行者に届いていない宿が相当数ある」という向きは、今回の18.9%とも重なります。

38年の宿泊業支援と1,200施設超のPMS運用で見てきたのは、良い宿ほど名前を知る人に支えられ、そのぶん発見の検索で取りこぼしている構図です。対策後にどれだけ改善したかを測る手順はLLMO対策の効果測定に、AI検索対策の基本はホテルのAI検索対策とはにまとめています。まずは自館がどちら側か、一度測ってみてください。

よくある質問

「おすすめ」で名前が挙がった宿はどれくらいでしたか

施設名を伏せた発見の検索で測ったところ、対象148軒のうち28軒=18.9%が候補5件に入りました。名前を知らない旅行者の前に出ていたのは、5軒に1軒だけです。

施設名で検索すれば正しく説明されますか

195軒中190軒=97.4%が、施設名で尋ねると所在地と特徴まで説明されました。名前という手がかりがあればAIはほぼ答えます。届くかどうかは、その名前を知らない人にどう見えるかで決まります。

業態によって差はありますか

温泉旅館が32軒中11軒(34%)で最も高く、リゾートホテルは15軒すべてが候補に入りませんでした(0%)。シティホテルは11軒中2軒(18%)、ビジネスホテルは31軒中5軒(16%)、汎用的なホテルは20軒中1軒(5%)と続きます。ただし測定軒数の小さい業態は1軒の増減で数字が動くため、幅をもって読んでください。

この数字はどうやって測りましたか

Web検索の上位結果だけを根拠にAIの回答を再現し、対象施設が候補に挙がるかを記録する実観測です。発見の検索では施設名を検索語に入れないブラインドの測定にしています。各施設1回の測定のため、個々の確定値ではなく全体の傾向として読む前提です。

自館が候補に挙がるか、どう確かめればよいですか

ChatGPTやGeminiで「(自館のエリア)で(業態)のおすすめは?」と施設名を伏せて尋ね、候補に自館が入るか確かめます。入らなければ、公式サイトにエリア・業態・特徴を同じページで結びつけて書くのが最初の一手です。3エンジンでの見え方は無料診断でも確認できます。