「AI検索からの流入が増えているらしいが、うちのサイトではどれくらい来ているのか」。この質問に即答できる施設はまだ少ない。GA4の標準レポートにはAI流入という項目がなく、ChatGPT・Gemini・Copilotからのアクセスは「参照元不明」や「direct」に紛れ込んでいる。

見えないものは対策できない。AI流入を「ツール別」「国別」「デバイス別」「ページ別」に分解して見えるようにする。GA4とGTMの設定から、Looker Studioでのダッシュボード化まで、一連の仕組みを順に組み立てる。

AI流入が標準レポートで見えない理由

GA4はトラフィックの参照元をreferrer(リファラ)で判定する。Google検索なら「google.com」、SNSなら「twitter.com」や「instagram.com」がreferrerに入る。ところがAI検索ツールからの流入は事情が違う。

ChatGPTの場合、ブラウザ版で回答内のリンクをクリックすると「chatgpt.com」がreferrerに入る。しかしアプリ版やAPI経由ではreferrerが空になることがある。GA4はreferrerが空の流入を「direct」に分類するため、AI経由のアクセスが直接流入に紛れる。

Geminiはさらに複雑。gemini.google.comからの直接リンクはreferrerが記録されるが、Google検索のAI Overview(検索結果ページ上部に出るAI回答)経由だと、referrerは通常のGoogle検索と同じ「google.com」になる。AI経由かどうか、referrerだけでは判別できない。

Perplexity、Copilot、Claudeなど、ツールごとにreferrerの出方が異なる。標準レポートの「参照元/メディア」を眺めていても、AI流入の全体像は見えてこない。

計測の仕組み──referrer+User-Agentの二段構え

AI流入を正確に捕捉するには、referrerだけでなくUser-Agent(ブラウザやアプリの識別情報)も組み合わせる。GTM(Googleタグマネージャー)でこの判定ロジックを組み、GA4のカスタムディメンションに「ai_source」として記録する。

AIツールreferrerUser-Agent(特徴)
ChatGPT(ブラウザ)chatgpt.com通常ブラウザ
ChatGPT(アプリ)空 or chatgpt.comChatGPT-User
Gemini(直接)gemini.google.com通常ブラウザ
AI Overviewgoogle.com通常ブラウザ ※URLパラメータで分離
Perplexityperplexity.ai通常ブラウザ or PerplexityBot
Copilotcopilot.microsoft.com通常ブラウザ
Claudeclaude.ai通常ブラウザ
AI Overviewの分離はreferrerだけでは不可能。Google検索からの遷移URLに含まれるパラメータ(「&udm=」など)や、Search Consoleの検索アナリティクスで「AI Overview」フィルタを使う方法がある。完全な分離は難しいため、まずはreferrerベースの主要ツール計測を固めるのが先。

GTMでの実装手順

GTMでカスタムJavaScript変数を作り、document.referrerの値からAIツールを判定する。判定結果を「ai_source」という変数に格納し、GA4イベントタグのカスタムディメンションに渡す。

  1. GTMで「カスタムJavaScript」変数を新規作成。document.referrerに「chatgpt.com」「gemini.google.com」「perplexity.ai」「copilot.microsoft.com」「claude.ai」が含まれるかを順に判定し、一致した名前を返す
  2. GA4の管理画面で「カスタムディメンション」を追加。ディメンション名を「ai_source」、スコープを「イベント」に設定
  3. GTMのGA4設定タグで、イベントパラメータに「ai_source」を追加。値は手順1で作った変数を指定
  4. GTMのプレビューモードで動作確認。ChatGPTのリンク経由でアクセスし、ai_sourceに「chatgpt」が入ることを確認する

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ダッシュボードの分解軸

AI流入を「ある」「ない」の二択で見ても施策にならない。ツール別・国別・デバイス別・ページ別に分解すれば、打ち手が具体的になる。

ダッシュボードに載せる分解軸

ツール別 ChatGPT / Gemini / Perplexity / Copilot / Claude / その他AI / AI以外。ツールごとに送客の質(直帰率、滞在時間、予約率)が異なる
国別 日本語圏と英語圏でAI利用率が大きく違う。インバウンド集客をしている施設は国別の分解が必須
デバイス別 スマートフォンからのAI流入が多ければ、モバイルページの表示速度と予約導線が最優先の改善対象になる
ページ別 どのページにAI経由で着地しているか。トップページか、プランページか、アクセスページか。着地ページが施策の起点になる

ツール別で見える施策の違い

ChatGPTからの流入が多い施設と、Perplexityからの流入が多い施設では、対策が変わる。ChatGPTは会話型で「○○駅近くのビジネスホテル」のように具体的な条件を投げるユーザーが多い。回答に自施設が含まれるかどうかは、公式サイトの情報量と構造化データに左右される。

Perplexityは検索結果に出典リンクを明示するため、引用されやすいコンテンツ(FAQ、料金表、アクセス情報)がある施設にトラフィックが集まりやすい。ツール別の流入傾向を把握することで、「どのAIツール向けに情報を整備するか」の優先順位が決まる。

国別で見えるインバウンドの動き

GA4の「地域」ディメンションとai_sourceを掛け合わせれば、「台湾からのChatGPT流入」「韓国からのGemini流入」のように国×ツールの組み合わせが見える。中国本土ではChatGPTへのアクセスが制限されているため、中華圏のインバウンド流入は台湾・香港経由が中心になる。東南アジアではGeminiの浸透が早い。こうした地域差を踏まえて多言語ページの整備順を決める。

Looker Studioでの可視化

Looker Studio(旧Googleデータポータル)はGA4と直接接続でき、無料で使える。ai_sourceカスタムディメンションを軸にしたグラフをいくつか並べれば、AI流入ダッシュボードになる。

載せるべきグラフ

更新頻度と共有方法

Looker StudioはGA4のデータを自動で引き込むため、ダッシュボード自体の更新作業は不要。URLを共有すれば、誰でもリアルタイムの数字が見える。月次の社内報告にはPDFエクスポートかスクリーンショットを使う。

稟議書に添付する場合は、グラフだけでなく「前月比○%増」「AI流入経由の予約件数○件」のように数字を文中に記載する。グラフは傾向を見せるもの、数字は意思決定の根拠になるもの。役割が違う。

はじめの一歩

GTMの設定変更からai_sourceディメンションのデータが溜まるまで、最低2週間はかかる。Looker Studioのダッシュボードは1ヶ月分のデータが溜まってから作るのが現実的。先にGTMの設定だけ済ませておけば、ダッシュボード構築は後回しでもデータは貯まり続ける。

計測を始めなければ、いつまで経っても「AI流入があるらしいが、実態がわからない」のまま。設定自体は半日で終わる作業。

よくある質問

Q. AI流入の計測にGA4以外のツールは必要ですか?

GA4とGTMの組み合わせで基本的な計測は可能です。Looker Studioを使えばダッシュボード化もできます。専用のAI流入計測ツールもありますが、まずはGA4の設定を固めるのが先です。

Q. ChatGPTからの流入はGA4でどう表示されますか?

GA4の「集客」レポートでは、ChatGPTからの流入はreferrerが「chatgpt.com」として記録されます。ただしアプリ経由の場合はreferrerが空になることがあるため、User-Agentによる補完が必要です。

Q. Geminiからの流入はどう識別しますか?

Geminiの回答内リンクからの流入はreferrerが「gemini.google.com」として記録されます。Google検索のAI Overview経由はreferrerが通常のGoogle検索と同じになるため、URLパラメータやUser-Agentで分離する必要があります。

Q. AI流入データを社内で共有するにはどうすればよいですか?

Looker Studioでダッシュボードを作り、共有リンクを配布するのが手軽です。稟議書に添付する場合はスクリーンショットよりも数値テーブルのほうが伝わります。

Q. AI流入が少なすぎて計測の意味がないのでは?

2025年時点で日本の旅行者のAI検索利用率は約29%。前年比で約3倍のペースで増えています。今のうちに計測基盤を作っておけば、増加が始まったときに即座に対応できます。